上 下
54 / 443

金貨と謎の地図

しおりを挟む
 拠点いえへ戻り、リビングへ。
 赤いスライムのクッションへアルフレッドを寝かせた。

「ここまでありがとうございました、ぼっちゃん」
「何って言っているんだ。当たり前だろう」

「……これで安心して私はいける。我が主の成長がおそばで見れた、それだけで幸せだった」


 弱々しい声でアルフレッドは、そんな遺言めいた事を言った。


「お、おい! アルフレッド、嘘だろ!」
「…………ぼっちゃん」


 ぱたっと脱力するアルフレッド。

 ……そんな深い傷を負っていたのか。

 スコルのヒールでは治らなかったのか。


「アルフレッド!!!」



「ぐごー…………」



「……は?」


 イビキをかくアルフレッドは、安眠していた。


「あの、ラスティさん。アルフレッドさん……寝てるみたいです」
「死んだんじゃないんかいッ!! 紛らわしい事しやがって!!」


 でも良かった。
 アルフレッドに死なれたら俺もみんなも困る。……あぁ、良かった。なんて心配していたら、お腹が減った。


「兄上、兄上。余もお腹が空いたのだ」


 涙目のハヴァマールが俺の袖を引っ張る。たまに、あざといなコイツ。


「そうだな。スコル、料理を頼めるか。ストレルカから貰った木箱の中に、シャーフ肉×10、パン×10、リンゴ×10、バナナ×10、赤ワイン×10、塩×10、胡椒こしょう×10があるはずだ」

「……あの方の」

「ん? どうした、スコル」
「い、いえ……なんでもありません! では、何か作ってきますね」


 一瞬、怖い顔をしていたような。う~ん、最近のスコルはどこかおかしいような気がする。とにかく、夕食は任せよう。


 ◆


 食事の前に、俺はひとりで温泉へ向かった。
 この前吹き飛ばされた“仕切り”も修理し、男湯と女湯で分けた。

「完璧じゃないか。さっそく掛け湯をして……入るか」

 ゆっくり肩まで浸かっていく。
 おぉ、今日の疲れが癒えていくようだ。
 肌もツヤツヤになる効果があるようで、スコルとハヴァマールには大好評。有料温泉にしたら、儲かりそうな気がする。


 ――儲かる。

 そうだ、今日は不思議な事があった。


 バーニングスライムから、ベルリオーズ金貨と謎の地図をドロップした。どちらも、無人島にあるとは思えない代物だ。どうして、あのスライムが?

 金貨一枚を摘まんで夜空にかざす。


 ベルリオーズ金貨。
 世界で流通する貨幣であり、ほぼ使えない所はない。他にも『ヴォルムゼル銀貨』と『アリアーガ銅貨』がある。これも同じく何処でも使用可能。

 だけど、この金貨は価値も高くて、こんな場所にあるとは思えなかった。ドヴォルザーク帝国から近いから? いやいや、無人島だったんだぞ、ここは。

 それとも何か。
 あのヨハネスの落とし物だったか。

 じゃあ、地図はいったい?


「兄上、その黄金に輝くコインはベルリオーズ金貨か」
「そうなんだよ、あのバーニングスライムが落とした――って、ハヴァマール!?」


 いつの間にか俺の隣には裸のハヴァマールがいた。いつの間に浸かっていたんだァ!? てか丸裸じゃないかー! 温泉だから当然だけど!!


「顔を赤くしてどうした、兄上」
「お、お、お前……ここは男湯だぞ!」
「兄妹の仲だ。問題はない」

「そうかもしれないけど……」
「なんだ、何か問題が?」

「ハヴァマール、お前は美人すぎるんだよ……」
「…………び、美人。兄上、妹をそういう対象で見てくれるのか。ヘンタイだな!」

「う、うっさいわ! てか、兄妹って言っても一週間そこそこの付き合いもないじゃないか。意識するなって方が無理だ」

「それは嬉しいかもしれんな。……フフフ」

 フフフ、って……。
 そもそも、義理の妹・・・・だ。
 意識するなって方が無理だ。
 あぁ、もうソワソワするし、ドキドキするなぁ……。どこを見ればいいんだ。ええい、誤魔化すぞ。


「ハヴァマール、どうして金貨がこの島にある」
「うーん、あの聖騎士共が落としていったか、過去に上陸した者がいるかだな」
「過去に?」

「あくまで仮説だが、ドヴォルザーク帝国の位置する『ルサルカ大陸』の海域は、海賊が多発すると聞く。恐らくだが、伝説の海賊・アルノルトがこの島に来ていたのかもしれない」

「海賊ぅ? そんなのがいたのか」
「おる。ただ、兄上も知っての通り、グリンブルスティやバーニングスライムなどボスモンスターが発生する島だ。仮にだが、海賊たちが宝を埋めに島へ来たとするなら、そんなモンスターに遭遇し、恐れて逃げ出したのだろうな」

「ま、まさか……この“謎の地図”は……」
「海賊の地図だな」


 俺以前に上陸していたヤツがいたとはな。それが海賊だったとは! お宝が眠っている可能性があるというわけか。こりゃ、ワクワクしてきたな。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...