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第428話 将軍ルキウス

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【スターバトマーテル城】

 駐屯地ちゅうとんちを抜けると、その先には大きな城があった。なんだ、こりゃ……やたら大きいというか。荘厳そうごんというか。
 古城だな、これは。

 なんだか歴史を感じさせる外観だなぁ。

 妙に古びているが、そんなことはいい。
 ルキウスがこの中にいるはずだ。


「よし、行くぞ!」


 メサイアたちを引き連れ、俺は城の中へ入っていく。
 特に兵や罠の動きはない。

 なんだ、もっと守りがかたいのかと思っていたんだがな。少し、拍子ひょうしけである。

 けど、どのみち俺の敵ではないがな。

 雑魚は俺の【超覚醒オートスキル】によって自動的に排除はいじょされる運命なのだから。


 城内はこれまた古びていた。
 相当昔からあるお城っぽいな。――じゃなくて、ルキウスを探さねば。


 馬鹿みたいに広い通路を歩く。
 静かすぎて逆に不気味だ。兵はどうした……?

 それをメサイアも感じ取ったようで、人差し指をあごに当てて難しそうな表情を作っていた。


「……なんか怪しいわ」
「ああ、俺たちが侵入したというのにな」

「特にこの部屋よ」


 扉を勝手に開け、フラフラっと中へ入ってしまうメサイア。おい、まて……ここって。

「兄様! ここはキッチンです!」


 ――って、うぉい!
 まさかメサイアのヤツ!?

 その嫌な予感は的中した。メサイアは、たなに置かれているフルーツに手を伸ばして赤い果実リンゴをそのままかじっていた。
 健康的で頑丈な歯に驚く反面、まだ食べたりなかったのかと俺は呆れるばかりだった。

「あ~…、メサイアさん食べちゃいましたね。……もぐもぐ」


 さすがのリースも苦笑い。――ん? もぐもぐ?

 視線を落とすとリースの手にもオレンジ色の果実が。
 いつの間にか食っとるー!!

 フォルもベルもつまみ食いしていた。

 何食わぬ顔で、なに食ってんだよ!


「お前たちな……! 俺も食う!」


 太っちょ貴族の家でかなり食った気がするが、なぜか腹が減った。たいして動いてないはずなのにな。
 ベルはさっき戦闘したけどさ。


 ◆


 ――なにか“重大”なことを忘れている気がする。


 俺たちはキッチンに入ってから、まったり過ごしていた。
 う~ん、なんでここにるんだっけ……?

 あれから、メサイアはテーブルの上で眠ってしまっていた。ベルは疲れていたのか体育座りのような姿勢で伏せているし、リースは完全に横になっていた。

 唯一、フォルだけは俺のひざの上に。
 コイツだけ特等席だな、オイ。


「えへへ~、兄様ぁん♪」
「フォルよ。ドサクサに紛れて俺の服の中に手を突っ込むな」
「バレましたか。このまま悠久ゆうきゅうの時を過ごそうと思いましたのに~」

 頬を朱色に染め、からかうように笑うフォル。いやいや、フォルを膝枕できるだけで十分すぎるほどに幸せだけどな。

 そろそろ『フォーチュン』からクレームが来てもおかしくない頃だ。

 というか、こんなにのんびりしていいのか俺たち。
 本来の目的を思い出しつついると、扉が開いてズカズカと入ってくる人物がいた。


「貴様らああああああああああ!!」


 ソイツはキッチンに入ってくるや、叫んだ。

 ん、なんだこのやたら派手な格好をした男。指輪にピアス、ネックレス、宝石類ばかり。……まさか。


「将軍ルキウスか?」
「そうだ。貴様たちをずっと待っていたのだぞッ!!」

「へえ? そうだったのかー」


 つーか、忘れていた。キッチンでぼうっとしすぎたぜ。まさか将軍自ら乗り込んでくるとはな。こりゃ手間が省けた助かったぜ。


「だがな、貴様に用はない。興味があるのはハーデンベルギア……彼女だけだ!」


 婚約の件か。まだ諦めていないということだな。
 しかし、こんな成金みたいなヤツに目を付けられるとはね。あんまり将軍っぽくないのは形だけだからだろうか。
 強そうには見えないな。


「ベルは俺の仲間だし、従妹なんだ。渡すワケにはいかない」
「……貴様」


 睨んでくるルキウスだが、なんだか引いているようにも見えた。なんだ?


「兄様ぁん~♪」


 フォルのせいだった。俺の体にベタベタに抱きついているせいで、ルキウスは困惑していたのだ。……そのせいね。


「フォル、将軍がいるんだぞ。離れろって」
「嫌です! わたくし、兄様と離れるなんて出来ません!」


 めちゃくちゃ嬉しいけどさ!
 しかし、ルキウスがめちゃくちゃ困ってるな。


「大事な話の最中でイチャイチャしおって……!」
「すまんな。ウチの聖女はヘンタイなんだ」

「なにぃ……!?」


 残念ながらフォルを止めるなんてできない。この聖女は時と場所をわきまえないからなぁ。今さらだけど。


「というわけだ。ルキウス、山ダンジョンの解放をしろ」
「ケントゥリアは誰にも入らせるわけにはいかん」

「なら、お前をぶっ飛ばす。このギンヌンガガプに住むしいたげられている人たちの為にな」

「ほう、面白い。いいだろう……! 場所を変えて戦おうではないか!」


 地面に魔法陣が展開するや、俺たちはいきなり飛ばされた。

 この男、転移魔法を――!
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