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第274話 名前の由来 - 女神の永遠の愛 -

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 力を使いすぎた俺は、意識をうしなった。


 ……ん。ここは、どこだろう。


 ――――なつかしい、甘いにおい。


「……サトル、どうしたの」
「え? メサイア……なのか?」
「なに言ってるの。私に決まってるでしょ。あなただけの女神よ~」

 手をヒラヒラさせ、微笑むメサイア。
 黒い髪、赤い瞳。透き通るようなはだ
 そして、この独特な甘い匂いは、間違いない。

「ウソ、だろ……でも、嬉しいよ、また会えて!」
「? なによ、いきなり抱きついて。仕方ないわねぇ」
「あぁ、やっぱりメサイアだ。胸あんまりないし!」

「なんですって!?」

「わ、悪い。冗談だ。でも、どうして……ん、ここは何処どこだ? 空中庭園でもなさそうだし、花の都でもないよな……」

「ここ? ここはね、あなたの全て・・・・・・よ」
「――へ? どういうことだよ」

「忘れないで、サトル。私はいつだってココ・・で……あなたの帰りを待ってる」


 俺の胸を指さすメサイア。


「え……メサイア、何処どこへ行くんだよ。こっちに戻ってこいよ」

『……ごめんなさい。もう時間なの。でも、きっとまた会える……だから、あの娘を頼むわね。みんなとあなたの世界一可愛いネメシアを』


 ★ ★ ★


『――――――』


 身体からだを起こすと、顔面がくしゃくしゃだった。
 俺はどうやら涙腺るいせん崩壊していたようだ。しかも、ここは俺の部屋か。


 なぜこんなに泣いていたのか。


 ――ああ、分かっているよ。


 願いを叶えられる奇跡の【スターダスト】はあとひとつ・・・
 それできっと……。


「――――って、あれ、俺、ハダカ!? なにも着けてないっ!」


『バリィィィィィィィィ~~~~~~~~~~~ン!!!!!』


「うわ、ビックリした!! しかも、窓ガラス突き破って、トーチカ出現!? 突然、なにぃ~~~!?」


「ヘデラ、おはよ」
「お…………おはよ。トーチカ、なんちゅー登場の仕方をするんだ」
「うん、ヘデラを元気づけようと思って」
「これ以上、俺の部屋に穴を開けてくれるな。もう二度とするなよ」

「ごめんなしゃい……」

 ショボンとなるトーチカは、猫耳を垂れさせていた。
 ……ま、でも俺を元気付ける為だったんだよな。嬉しいな。


「――ん。トーチカ、お前、手になにを持ってる? 草?」
「あ……これ? これね~。ネメシアがんできたの。『アイビー』だって」

「あいびー?」

 聞いた事ないな。ていうか、なんでそんな草を。

「これは花だよ」
「えぇ? それが花? 草にしか見えないけどな」

 もしかしたら、この世界では花扱いなのかな。

「これ、成葉になると心臓のような形になる」
「し、心臓!? なんか怖いな」

 ちょっとビビっていると、今度はネメシア本人が部屋に入って来た。
 しかもルンルン気分、鼻歌交じりのご機嫌きげんで。


「入るわね~…って、ヘデラ!! 目を覚ましていたのね!」


「よ、ネメシア。無事だったか」
「ヘデラ!!」

 手に例の草を持ちながら、ネメシアは飛び込んできた。
 ……おぉ、この甘い匂いが好きなんだよ。とても落ち着くし、癒される。

「なんだ~、やっぱりネメシアは俺が恋しいんだな」
「うん」
「ハッキリ言うね! それ、若干反応に困るぞ……。ところで、トーチカにもあげたらしい、その『草』なんだよ」


「……ああ、これね。これは、アイビーよ。学名は『ヘデラ・・・』で――花言葉は、『永遠の愛』、『結婚』……そして、『不滅』よ」


「――――へ」


 そ、それって、つまり――今の俺の、名前の由来だったのか。


 うん??


 もしかして……。
 ――ああ、ネメシアがあの時・・・に付けてくれたんだよな、俺の名前を。
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