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第260話 女神と聖女

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 黄金の槍は、カオスデーモンの胴体を貫き――穿うがった。
 なんと瞬殺・・だった。


 【Congratuコングラチュlationsレーションズ!!】


 なんか知らんけど、宙にド派手な拍手大喝采だいかっさい演出が現れた。

「お~、お祭りみたいで賑やかだなぁ!」
「かなり上位のブラスターボスを倒したから、特別仕様のリザルトね」
「なるほどな。てか、詳しいんだなネメシア」
「あ、うん。実はお母さんたちとよくボス狩りしてたから」
「へえ、変わった家族旅行だな」
「そんなわけないでしょ! ただの遠足よ」

 いや、それでもおかしいけどな!

 なんにしても、カオスデーモンはぶっ倒した。
 ドロップアイテムも大量に落とし、しかも今回は【MVPドロップアイテム】も手に入った。なんと……【レッドスター】×1000個である! ガチャが回せる!

 やったぜー!!!

 喜ぶと同時に、俺は二粒のレッドスターをつまみ、

「ほれ、ネメシア。これ髪飾りに使えよ」
「え……貴重なレッドスターよ? いいの?」
「ああ、1000個もあるしケチケチせんよ。俺からのプレゼントだ。大切にしてくれ」
「……うん。大切にする。嬉しいなぁ。ヘデラからのプレゼントなんて初めてかも。うん、本当に嬉しいっ♡」

「…………」

 ネメシアの笑顔がすっごく可愛かった。

 あれ、俺、れちゃったかも。


 ――なんとやっとると。


『な、なんだこれは!! レメディオスが滅んでおらんと様子を見に来れば……滅びるどころか、まったくの無傷! カオスデーモンは何をしておったのだ!?』


 空から声が聞こえた。
 誰かが浮ているらしい。

「なんだ?」

 なんだか見覚えのある様相というか……あ! あの宙に浮いているヤツ、この前、ロドスと会話していた『ゴータマ』とかいうヤツ!!


「にゃー!!!」


 そいつを見たエコが警戒心をむき出しにした。

「どうした、エコ。毛が逆立っているぞ」
「危険な臭いがしますよ、ヘデラ様。ヤツは明らかに人間ではありません」
「なんだと!?」

 人間ではない・・・・・・

 いや、確かに人間っぽい肌色ではないけどな。灰色だし。でも、ローブのせいで姿はほとんど分からない。声は男だけど。


『……おのれ、そこ愚民共!! 貴様たちの仕業か!!』

「それがどうした!」

 俺がそう返すと、ゴータマはいつの間にか目の前に瞬間移動してきた。

「なっ……!!!」

『それならお前を処分せねばならん。脅威はこの世界に不要である。それは、あのお方・・・・のご意思であり、世界の理・・・・なのである』

 猛スピードで腕を伸ばしてくる。
 マズ……なんちゅー速度だ!!!

 俺は、ネメシア、トーチカ、エコを抱えて飛んだ。

「――――っぶねええええええ!!!」

「わああああ、ヘデラ!!!」「ヘデラ、えっち」「ニャアアアアアアアア!!」


 叫ぶネメシア、ぼそっとつぶやくトーチカ、振り落とされそうになるエコ。ちゃんと掴まってろよ!!! って、内なる声で言っても意味ねーな。


「掴まってろよおおおおおおお!! っるあああああああああっしゃああああああああ、どりゃあああああああああ……!!!」


 を三段ジャンプした。

 しかし、背後からあのゴータマが何かを攻撃してきた。


 んじゃありゃあ!?



『――――――カオススクリーム!!!!!!!!!!』


「いっ!?」


『ボギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~~!!!!!!!!』


 叫び・・があらゆる状態異常を引き起こし、それと同時に音波が衝撃波となり、襲い掛かってきた。なんてスキルだよ。んなのアリかよ!!!


 だが、


 背後を取られているにも関わらず【オートスキル】が炸裂した。



『オーディール』



 閃光が更なる閃光を呼び、それはあの『ほーりー☆くろす』を上回る十字クロスを数万規模で生成。神の裁きとも言える神々しい光が渦巻銀河となり、敵だけ・・・を狙い撃ちした。

 すげぇ、そこまでターゲットを絞ることも出来るのかよ。


『なにィ!!!!!! 我らスターゲイザーに反旗を翻すというのか――愚かな人間如きがあああああああ!!! 愚か愚か愚か愚か愚か愚か愚か愚か!!! なんたる愚か!!! 家畜は家畜らしく生きていれば良いのだァ!!! 貴様たちに人権は不要である!!! それがあの方のお考えであり、ルールなのだ!! 従え!! 従うのだゴミ共!!』


「愚かなのはあんたよ、ゴータマ!」

 ネメシアが叫んだ。
 そして、俺から離れて飛び出すと――



「女神専用の最強スキルをお見舞いしてあげるわッ!!」


 ……え?


『――――シャイニング・ブレイズ・ゴッドフィンガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!』


「えええええええええええええええええええええ!?」


 ネメシアが何か放った――――――!!


『ぶぁカな!?!?!? 女神・・だとォ!? とっくに滅んだはずの女神!? 馬鹿なありえん、ふざけるなあああああああ!!!! 小娘風情があああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――』


 ゴータマもネメシアのスキルに対抗しようとしたが……


『魔弾・エターナルスパイラルショット』


 トーチカが例のナックルダスターを撃った。
 なんつう弾だよ。てかほぼビームやんけ!!!


「では、私も爪で」


 いや、爪は無理だろ。


『愛のホーリーグレイル!!!!!!!!!』


 やっぱり十八番じゃねーか!!!



 やれやれ。今ならネメシアの正体が分かった気がした。
 いや、分かったのさ。

 なにが無職だよ。うそっぱちじゃねーか。けどいいや、面白かったし。
 でも、なんとなくネメシアは只者じゃないと分かっていた。なんだよ、【ホワイト】って。なんだよ、【ウルチャ】って。普通の人間にそんなことできるかってーの!


 彼女は俺のなんだ?

 あの時、偶然会った?

 ありえんだろ。


 偶然なんてない。


 ネメシアは、自らの意思で俺に会いに来たんだ。


 この物語は運命だったんだよ。


 ああ、分かっていたさ。


 あの時、あの瞬間から――最初から。


 七回・・も俺に付き合ってくれていたんだよな。



 本当にありがとう。俺はこの世界が好きだ。だからこそ、全力で戦う。この国を守る。なにより、ネメシア、トーチカ、エコお前たちを守る。

 そうだよ、俺はみんな大好きだ。

 みんながいないと寂しくてもう寝られねえよ。

 そんな聖女になっちまった。


 そして何よりも。


 俺は少し・・思い出した。


 大切なものを奪われていることに。


 スターゲイザーこそが俺の最大の敵だ。壊滅させねばいけない組織だ。


 だ・か・ら!!!


「うぉおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、ゴータマ!!! てめえええたちを許さねえええええええええええええええ!!!!!! 俺の世界を壊すんじゃねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」


 怒り・・を、思い出せ。


 果てしない怒りを。ふつふつと煮え滾るような怒り。


 怒れ、怒れ、怒れ、怒れ、怒れ、怒れ、怒れ…………!!!!!


 爆発させろ、己の怒りを。そうだ、今こそ七回分の怒りを!!!



『――――――エンデュランス!!!!!!!!!!!!!!!!』



「…………な、なぜだああああ!!!
 なぜ消えたはずの【理】があああああああああああああッぶあぶあぶあぶあぶあばうぶあばぶえべべべっばばあああああああああああああああああんぎゃええっげげげえええ、ヤメヤメヤメロッメオロエウエエオオオオオオゲロゲロゲロゲロゲロッパブブブエエエエ、ぬおおぇおおおおおおくそくそくそががああああ!!! スターゲイザーはふふふ不滅なり!!! スターゲイザーに栄光あれええええええええええええええええええええええ!!! ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ・
 ・
 ・


 ゴータマは完全消滅した。


 世界は少しだけあるべき姿を取り戻した。


「俺は……奪われた全ての世界を取り戻す」


 みんな待ってろ……。

 メサイア、ベル、リース……!

 ああ、あと久しぶりだったな、フォル。



 過去、現在、未来――――全て取り返してやる。



 【未来編・完】
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