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第245話 レッドスター暴走 - ごつごつのごっついミノタウロス -

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 今日はちょっと寒々さむざむしい朝だった。朝風呂、朝食を済ませてレメディオスの『カーニバル』とやらに参加してみることにした。

 最終日の『聖女コンテスト』は、もちろん出場する。いったい、どんな内容なんだか皆目見当もつかない。まあ、容姿だけを争うのなら、俺はぶっちぎりの一位だろうな(自信タップリ)。

「しっかし、トーチカ。なぜ俺がお前をおぶらなきゃならん。重いんだよ」
「ぶー。重いはダメ。あたしこれでも『99.2080179832lbs』だよ」
「よく言えるな!? つまり、何キロだよ!? そんな風に乙女の秘密をカミングアウトされてもな……。まあ確かに軽いけどさ、俺が男だったのならまだしも女の細腕じゃキツイって……」

 まさに俺の腕はプルプル震えていた。
 くそ……昔ならきっと余裕だったと思うけどな。
 俺も今はすっかりか弱い乙女ってことかぁ。

「はぁ……すまん、もう降りてくれ」
「分かった。今度はあたしがヘデラをおんぶしてあげるね」
「あん? 無理だろ、トーチカじゃ……あ、でも俺も体重はほぼ同じだわ」
「余裕余裕」

 とトーチカは腰を下ろす。乗れってことらしい。うーん。俺の予想じゃ、そのままぶっ倒れる気がするけどね。まあ、モノは試しってことで。

「じゃ、いくぞ~。無理すんなよ」
「うん」

 おそるおそる俺はトーチカの背中に乗った。
 すると余裕で持ち上がり、普通に歩きだしやがった。

 おお、すげえ! 力持ちか。

「ふふー。これでもきたえているから。そうじゃないと、銃器の扱いにも困るから」
「あ、そっか。じゃあなんだ、腕立てとか腹筋とかしてんのか」
「そ。目指せマッチョメイド」

 マッチョメイド……いや、トーチカはそのままでいいだろ。その方が可愛いし。つーか、そんなトーチカは俺は見たくない。ので、

「昨日の風呂に現れたあんなのにはなるなよ」
「うん? 昨日?」

 だめだ、すっかり記憶から消去されているようだ。


 トーチカにおぶんされながら『カーニバル』会場へ向かう。
 そうそう、ちなみにネメシアは別行動中。このお祭りを『配信』したいんだとか。あいつはやっぱり根っからの配信者なんだなあ。原理はよく分からんけど。
 あとエコだが――『猫の集会』があるらしく今日は珍しく不在。

 ということで、俺とトーチカの二人きり。

「お、あのスイーツ美味そうだなぁ」
「うん。買う?」
「そうだな。トーチカの分も買ってやるよ」
「わーい。嬉しい♡」

 俺はおんぶされたまま、出店のおっちゃんに注文した。

「らっしゃ~い。って、おぉ!? ……ね、猫耳メイドさんが聖女さまをおんぶ? これは珍妙なサブクエストだねぇ~?」

「いやいや、サブクエストなんかじゃないですよ。ただの運命の悪戯ってやつです。あ、おっちゃん。そこの『ぶるぶるスライム』みたいなやつ二つくれ」

「はぁ、ま、まあ分かりました。『テンフ』ふたつで【600セル】だよー」

 俺は金を払い、スイーツ『テンフ』を受け取った。
 変わった見た目だが、味はどうだろうか。……っと、その前に降りるか。

「っしょっと。トーチカ、ありがとな。さっそく向こうで食べようぜ」
「はーい」

 近くの例の噴水でスイーツを楽しんだ。

「うまー!! なんだこのまろやかな味わい。しつこくないし、サッパリしている」
瑞々みずみずしい~」


 とまぁ、ここまで普通だった。

 だが、それは唐突とうとつに起きたのだ。


『ドボォォオ~~~~~~~~~~~~~~~ン!!!』


 噴水に何か落ちた。
 ……なんだ、ここは何か落ちないと気が済まないのか!?

 前は王子のラナンが落ちたけど、今回は……!?

「ぶぶぶぶぶぶっばばばば!」

 頭から突っ込み溺れてる。
 いかん! 溺れているのは、どうやら女の子のようでパンツが丸見えだ! って、そりゃええわ! 救出だ……! って、あれ。

 どこかで見たことあるようなパンツだ。

「って、ネメシア!!!」

 俺はネメシアを引っ張り上げた。

「ぷああああああああ!! 死ぬところだった!!」

「なにしてんだよお前……」

「いや~…夢中になって配信してたらさ、足引っ掛けて落ちちゃって…………あ、髪飾りの【レッドスター】が……!」

「え。まさか、衝撃で噴水に入っちゃったのか……ってことはガチャが?」
「ううん。大丈夫。『2個・・』しか落ちてないから、回すには『10個』欲しいから――」

 だが、なぜか噴水は反応しはじめた…………


「「「――――え?」」」


 みんな顔を合わせ、噴水を見た。まさか、そんな!?


『『『『『ズシ――――――――――ン!!!!!』』』』』


 街全体が揺れた。

「うわっ!! なんだこの突き上げるような地震は……!」
「ヘデラ、あれ!」

 ば、バカな……!
 噴水からモンスターが!?

 そういえば、トーチカが以前言っていた。


『【レッドスター】は武器とか防具が出るよ。あと、たまにヒトとかモンスター、爆弾とかゴミとかハズレも出るよ』


 ――と。


 まさにモンスターが召喚されてしまったようだ。
 つーか、『2個・・』だったはず……どうして!?

 焦っていれば、巨大なモンスターは目をカッと見開き……口から、


『!!!!!!!!!!!!!!!!!』


 エコのビームを軽く上回るとんでもないレーザーを放ち、街を一気に焦がした。


「……おいおいッ!」


『緊急事態発生! 緊急事態発生!! 王国に未知の大型モンスターが出現しました!! 大至急、住民は避難された――どぎゃあああああああああああああああああああああ!!』

「あああああああ!! アナウンスの人が死んだ!!! 多分!!」

 てか、アナウンスの人、毎度ボコボコにやられてるのに復活してるよな。いったいどんな人なんだか。って、そんな悠長に考えてい場合ではない。

「ネメシア……これは」
「……ええ。あれは【ブラスターボス】の『ごつごつのごっついミノタウロス』ってヤツみたい!」

「――は?」

「だから、『ごつごつのごっついミノタウロス』よ!」
「ご……ごつごつの」

 思わず吹きそうになった。


 どんだけごっついんだよ!?


「――――って、うわぁ!!」

 スーパーレーザーをまた放たれ、家がどんどん吹き飛んでいっていた。まずい……このままでは、この国は滅ぶ!!


 ===== !!!DANGER!!! =====

 【国の存亡を懸けた討伐】

 【ブラスターボス『ごつごつのごっついミノタウロス』 1体 を 討伐せよ!】

 【報酬期待度:☆☆☆☆☆】

 ===== !!!DANGER!!! =====


 なっ……『デンジャー』だって!?
 そんな表記は今までなかった……つまり、ヤツは超危険な存在ということ。こりゃヤバいぞ……。

 だけど、それでも!


 俺はこの国を――


 【レメディオス】を守る!!
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