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第124話 待ち望む聖剣

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 エルフの郷・アヴァロンを去った。

 去っただけで、俺は『家』をアヴァロンの付近に建てた。


「サトルさん……。あの、旅立つのでは……」


 リースが死んだ魚のような目をしていた。


「アヴァロンからは出ているぞ。
 近くに住む予定なだけだ。……だってよ、アヴァロンって、バインバインのもちもち美人エルフが多いんだぞ!! もっと楽しまないと損だろ!?」


「……サトルさん! むぅ~~~!!」


 顔を赤くして、ふくれっつらになるリース。
 あれ……珍しいな。


「エルフならここにいるでしょ! あたしで十分ではないですか!」


「すまんリース……」
「え……!?」


「確かに君は、金髪で、背も低くて可愛げがあって……出てるところ出てるし、かわいいけど……」


「けど?」


「好き」
「……はい♡」


 ――なんてやっとると、空から――


「うおっ!? 盾!?」


 盾が猛スピードで降ってきていた。超デカイやつ。


「な、なんだベルか。そや、すっかり忘れていたわ。おかえり」
「ごめん。遅くなった」

「遅くなったってお前……今までどこで何をしていたんだよ。ほんの少しだけ心配したぞ」
「ほんの少しか~。ひどいなぁ。こっちは大変だったんだよ。最高指導者プロビデンスマスターとかの相手でさ」


「――――? なんだって?」


 今とんでもないことを聞いた気がする。


「いや、だから、最高指導者プロビデンスマスターって、オールバックの似合わないヘンな奴が襲ってきたの。余裕で倒したけどね」


 ど……どういうことだ!?

 ベルのところにも最高指導者プロビデンスマスターが!?

 バカな。生きていたのか……いやしかし、ベルは倒したと。


「その最高指導者プロビデンスマスターだが、俺も倒したぞ」

「へ? 理くんも!?」

 驚くベル。顔ちかっ!!

「近いって。そう、俺らはお前と別れてからみんなと一緒に『グラストンベリィ』へ行った。そこヤツが現れて、魔剣を――」


 かくかくしかじかっと説明すると、ベルは、


「ふぅん……そっちにもか」

 要警戒だね。と、ベルは俺の肩に手を置く。


「ベル。お前、神王様に聞いてみてくれないか。最高指導者プロビデンスマスターのこと」

「……そんなコトもあろうかと、シアを通じて聞いておいたよ」

 あ、そか。
 メサイアのスキルで聞けばよかったんだ。

「さすが、ベル。で、何かわかったか?」
「うん。最高指導者プロビデンスマスターはね……双子の兄弟のようね。だから、私の方には『弟』が現れたみたい」

「双子の兄弟だったのか! ……でもどっちも倒したし、もう大丈夫か」

「警戒はしておくべきだね」

 ――と、ベルは俺の方へ倒れこんだ。

 ぐぅ~~~、とベルの腹から音が鳴った。

 なんだ、腹減っていたのか。

「動きすぎてお腹へっちゃった……」


 新スキルを試しまくっていたところ、最高指導者プロビデンスマスターの弟に遭遇、かなりヤバめな激戦になって帰ってきたようだ。

 だから、ハラペコなのだか。

 よし、美味しいもん食わせてやるか。


 ◆


 【 聖地・コンスタンティン - 王の間 】


 王のもとにドクトリンが裏切り、暴走した末に倒されたと情報が入っていた。

「愚か者が。奴は所詮、金の亡者……それだけのつまらぬ男だった」

 だが、王は首をひねった。

 あのアヴァロンに『聖剣』がなかったのだ。
 信頼できる情報屋によれば、あそこには確かに『聖剣・エクスカリバー』が眠っていたという。しかし、あったのはニセモノの『魔剣』だった。


 だとすれば……


「そうか。すでに持ち出されていた――ということか。聖剣があるかのように見せかけ……『魔剣・エクスカイザー』とすり替えた……と。
 そんな珍妙なスキルを行使できる者はただひとり……『マーリン』め……くだらぬ」


 そして、王は怒りのままその少年の名も叫ぶ。


「アーサー!! 貴様に聖剣は渡さぬ!!!」


 ・
 ・
 ・


 ◆


 【 聖地・トリスタン 】


 少年アーサーは――笑っていた。

 この上なく上機嫌に。

 とある、面倒臭がりのおっさんと同じように。


 少年には、この先に何が起こるか分かっていた。


 彼とまた会える、と。


 待望を胸に、夕陽を望む。
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