25 / 43
第25話 アークトゥルス帝国の者
しおりを挟む
宮廷錬金術師へ弟子入りか。
驚くべき提案だった。
とても魅力的だし、将来を考えればアリだ。
でも。
諦めるわけではないけれど……今は弟子入りしている場合ではない。俺にはやるべきことがある。
「どうしたの、カイリ。悩んでいるなら後日でも構わないけれど」
「……悪い。弟子に誘ってくれたのは嬉しい。けど……俺は商売が好きなんだ。今はお客さんとの取引を大切にしたい」
「そ、そう……残念ね。まさか、このわたしを振るとは」
――む?
フォーマルハウトのヤツ、ちょっと涙目……?
「そ、その……すまない」
「いえ。今日のところは帰りなさい……ていうか、帰れ!!」
急に怒られ、部屋を追い出された。
あちゃー…怒らせちゃったかな。
「カイリさん、そろそろ帰りますか……?」
スピカが恐る恐る手を挙げた。
「そ、そうだな。テレポートを頼むよ、スピカ」
「分かりました。では、みなさん! 私に掴まってください」
スピカのテレポートで城から脱出した。
* * *
――エレクトラ教会の前に到着。
「ありがとう、スピカ」
「いえいえ。では、私は教会へ戻りますね」
もう深夜だし、俺も眠い。
いったん家に帰って寝よう。
「父さん、家に帰ろう」
「そうだな。我が家に帰り、母さんの無事も確認しないと……慌てて家を出てしまったからな」
「それなら大丈夫だ。俺が見ておいた」
「さすがカイリ。なら安心だな」
家へ向かって歩いて行く。
教会から噴水公園、露店街を通り過ぎていけば――家だ。
あと少しのところで異変は起きた。
「カイリ、下がれ!」
「父さん、どうした……」
暗闇の無効から“気配”を感じた。
これは人間の気配なのか……いや、違う。
魔物だ。
禍々しい魔力を感じた。
父さんは闇を睨み、酷く警戒した。
「何者だ」
「……我が気配に気づくとは、お主も只者ではないな。まあいい、用があるのは……そこの“闇の錬金術師”だけだ」
「なんだと」
姿を現す赤いローブの……分からない。素顔が見えないし、でも人型か。
「カイリ、お前の改造ポーションの噂は聞いている。その技術は素晴らしい……ぜひ、我が国の為に力を尽くして欲しい」
「その前にあんた何者だ」
「我が名はベガ。アークトゥルス帝国の者――といえば分かるかな」
「アークトゥルス帝国! アシャの関係者か」
「ああ、彼女か。アシャは優秀ではあったけど、冷静さに欠けてね。今回の敗北もそのせいだろう」
「悪いけど、さっきアルデバラン王国の宮廷錬金術師の誘いですら断ったんだ。俺は自由にやる。邪魔しないでくれ」
「ほう? あのフォーマルハウトの誘いを受けなかったとは……それは素晴らしい。拒否なんて普通はありえない。けど、君はどうやら普通ではないらしいな」
「もういいだろ、帰ってくれ」
「そうはいかない。カイリ、君がどれほど貴重な人材か理解していないようだね」
スッと小瓶を取り出すベガとかいう人物。
「まさか催眠ポーションか!」
「そう、しかもこれは超強力なヤツさ。君を眠らせてでも連れていくよ」
突然瓶を投げつけてくるが、父さんが庇ってくれた。
「父さん!」
「大丈夫だ。父さんには状態異常は効かん」
大量の液体をかぶる父さんだが、ピンピンしていた。……良かった。
ホッとしているとヴァルハラが耳打ちしてきた
「カイリさん、ご命令くだされば反撃しますが」
「反撃? ヴァルハラにそんな力――あ、あるか」
「はい、わたしには一日に一回使える最強の技がありますからね!」
ここはヴァルハラの力を借りよう。
驚くべき提案だった。
とても魅力的だし、将来を考えればアリだ。
でも。
諦めるわけではないけれど……今は弟子入りしている場合ではない。俺にはやるべきことがある。
「どうしたの、カイリ。悩んでいるなら後日でも構わないけれど」
「……悪い。弟子に誘ってくれたのは嬉しい。けど……俺は商売が好きなんだ。今はお客さんとの取引を大切にしたい」
「そ、そう……残念ね。まさか、このわたしを振るとは」
――む?
フォーマルハウトのヤツ、ちょっと涙目……?
「そ、その……すまない」
「いえ。今日のところは帰りなさい……ていうか、帰れ!!」
急に怒られ、部屋を追い出された。
あちゃー…怒らせちゃったかな。
「カイリさん、そろそろ帰りますか……?」
スピカが恐る恐る手を挙げた。
「そ、そうだな。テレポートを頼むよ、スピカ」
「分かりました。では、みなさん! 私に掴まってください」
スピカのテレポートで城から脱出した。
* * *
――エレクトラ教会の前に到着。
「ありがとう、スピカ」
「いえいえ。では、私は教会へ戻りますね」
もう深夜だし、俺も眠い。
いったん家に帰って寝よう。
「父さん、家に帰ろう」
「そうだな。我が家に帰り、母さんの無事も確認しないと……慌てて家を出てしまったからな」
「それなら大丈夫だ。俺が見ておいた」
「さすがカイリ。なら安心だな」
家へ向かって歩いて行く。
教会から噴水公園、露店街を通り過ぎていけば――家だ。
あと少しのところで異変は起きた。
「カイリ、下がれ!」
「父さん、どうした……」
暗闇の無効から“気配”を感じた。
これは人間の気配なのか……いや、違う。
魔物だ。
禍々しい魔力を感じた。
父さんは闇を睨み、酷く警戒した。
「何者だ」
「……我が気配に気づくとは、お主も只者ではないな。まあいい、用があるのは……そこの“闇の錬金術師”だけだ」
「なんだと」
姿を現す赤いローブの……分からない。素顔が見えないし、でも人型か。
「カイリ、お前の改造ポーションの噂は聞いている。その技術は素晴らしい……ぜひ、我が国の為に力を尽くして欲しい」
「その前にあんた何者だ」
「我が名はベガ。アークトゥルス帝国の者――といえば分かるかな」
「アークトゥルス帝国! アシャの関係者か」
「ああ、彼女か。アシャは優秀ではあったけど、冷静さに欠けてね。今回の敗北もそのせいだろう」
「悪いけど、さっきアルデバラン王国の宮廷錬金術師の誘いですら断ったんだ。俺は自由にやる。邪魔しないでくれ」
「ほう? あのフォーマルハウトの誘いを受けなかったとは……それは素晴らしい。拒否なんて普通はありえない。けど、君はどうやら普通ではないらしいな」
「もういいだろ、帰ってくれ」
「そうはいかない。カイリ、君がどれほど貴重な人材か理解していないようだね」
スッと小瓶を取り出すベガとかいう人物。
「まさか催眠ポーションか!」
「そう、しかもこれは超強力なヤツさ。君を眠らせてでも連れていくよ」
突然瓶を投げつけてくるが、父さんが庇ってくれた。
「父さん!」
「大丈夫だ。父さんには状態異常は効かん」
大量の液体をかぶる父さんだが、ピンピンしていた。……良かった。
ホッとしているとヴァルハラが耳打ちしてきた
「カイリさん、ご命令くだされば反撃しますが」
「反撃? ヴァルハラにそんな力――あ、あるか」
「はい、わたしには一日に一回使える最強の技がありますからね!」
ここはヴァルハラの力を借りよう。
10
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる