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ビアンカの秘密

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「おい」

「ひっ!」

 突然聞こえてきた声に驚いて、ビアンカはちいさな叫び声を上げた。目の前にやってきて自分の顔を覗き込んでいるのは先程自分を目撃した青年ではないか。

  慌てて逃げようとするも、もうここは家の中のため、あっと言う間に壁際に追い詰められてしまう。ビアンカは男の手に腕を掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。

「お前の名前は?」
「ビ……ビアンカ」

 家名は、と聞かれビアンカはぐっと言葉を飲み込んだ。名前を教えることはできない。家名を言えば、実家に連れ戻されてしまう。そうなれば、ビアンカの身は間違いなく破滅だ。

「あ、あなたこそ……だ、誰ですか!」

「アルバートだ。アルバート・ウォルデン。まさかこの辺りに住んでいて知らないわけないよな?」

 アルバートははだけた襟元からウォルデン家の家紋のついたペンダントを引っ張り出す。意匠の細かさやずっしりとした金の重みは、それがまがい物ではない事を示している。

「りょ……領主さまでしたか。すみません、わたしはこの通り流れ者で」

 ビアンカはアルバートの腕の中でくるりと体を回転させ、目を背けた。

 人狼よけのゼーラ草の匂いをものともせず追跡されたのは誤算だったけれど、きっと彼はこの辺を見回りに来ていて、私があまりにも不審だから追いかけてきたのだわ──とビアンカは思った。

 不思議な事に、今まで感じてきた男性への恐怖と言うものを、ビアンカは目の前の青年──アルバートには感じていなかった。

「そうか。生活は大変そうだが……薬草の知識があるならもっとちゃんとした所に紹介をしてやるぞ」
「いえ……私、あのとおりの性質を持っておりますので、普通の生活は送れないかと……」

 やっぱり、彼は領主をしての使命感に駆られているのだわ。

 そう頭では理解しているものの、捕まれた手首ごしに伝わる熱や、服の上からでも分かるほどの引き締まった肉体に、一旦は収まったはずのビアンカの中の衝動が目を覚まし、暴れ始める。

 ビアンカは平静を装うために、アルバートから視線を逸らした。しかし、彼はずっと自分を見つめている。

 ──はやく、帰ってほしい。

 ビアンカはかつてない程の焦りを感じていた。このままでは、自分は今まで守ってきたものを失ってしまうかもしれないのだ。

「そうか。……人の少ない所の方がいいんだな」
「はい。あの……ところで……体を、離していただけませんか」

 素っ気なく聞こえたビアンカの言葉に、アルバートは唇をとがらせた。自分は番が見つかった喜びに打ち震えているというのに、相手の態度はつれない。そのくせ──そのくせとんでもなくいやらしい匂いを放っている。

 ──一刻も早く、この女を自分の番にしたい。 

「それはできない」
「え……」

「お前は俺の番だ。城に連れ帰る」
「何言って……んっ!」

 ビアンカの抗議の声は、強引に重ねられた口づけによって遮られる。アルバートの舌先が歯列をむりやりこじ開け、ビアンカのそれを絡めとり、優しく撫で、時には強く刺激する。

「ふぅ……ん……んん……っ」

 息継ぎを挟んで何度も何度も繰り返される、それこそ獣のような口づけにビアンカの決意はゆらぎ、このまま与えられるであろう快楽に身を任せたくなってしまう。

「いい匂いだ」
「ひゃん!」

 アルバートはビアンカの白い首筋に顔を埋めた。

「ひやっ!ダメですっ!」

 アルバートはローブに手を差し入れ、ビアンカの胸の膨らみを揉みしだく。すでにビアンカ自身によってはだけていた服は、いとも簡単にアルバートの手を受け入れ、指の形に合わせて柔肉がたわんだ。

「……でかいな」
「ああっ……だめぇ……」

 乱暴ではあるものの、痛くない程度の愛撫にビアンカの喉から甘い声がにじみ出る。

「何がダメなんだ?」

 アルバートが指先でつついた胸の先端はすでに固く勃起している。

「……んんっ……だって……んんんっ……」

 ビアンカは身体を震わせながら悶えた。胸を刺激されただけで、足がガクガクとする。ぷっくりと色づいた乳輪をちゅっと吸われ、もう片方を指で飴玉のように転がされると体に白い稲妻が落ちたような鋭い刺激が襲ってくる。

「ああっ……ひゃうっ……」
「気持ちよくなってきただろ?」

「やあっ……それは、違うの……っ、あっ、やあっ……」

「自分じゃイケないんだろ?」

 ビアンカの目からは羞恥の涙がにじんだ。アルバートの囁きにビアンカは顔を真っ赤にして、無言でこくりと肯定する。

「素直なのはいいことだ」

 アルバートはビアンカの太股に手を滑らせる。むわりと雌の匂いを漂わせる隙間の奥にはすでにぐっしょりと濡れている秘裂があり、指で軽く撫でるだけでビアンカの体が震えた。

「んっ……」

「ほら、どんどん濡れてくるぞ」

 アルバートが手を動かすたびに、ビアンカの蜜壺からは愛液があふれ出てくる。

「ひゃん、ああっ!!」

 ぷちゅりと肉芽をいじられて、ビアンカの体が鋭く跳ね、体が崩れおちる。

「はあっ……あ、あっ、はあーっ……」

 ビアンカは大きな瞳に涙をため、獣のように荒い呼吸を繰り返している。まだ絶頂の余韻が残る体を床に押し倒し、アルバートはビアンカの肩口に噛みつき、すでにはだけていた彼女の服に手をかける。

「もう……我慢、できないっ……」

「あっ、だめっつ、もう、もう、イった、イったからあっ」

 ビアンカの力のこもっていない懇願は、興奮状態のアルバートにさらなる喜びを与えただけだった。太股に手をかけ、大きく足を開かせる。


 その瞬間、目に入った「もの」にアルバートの瞳は驚愕の色に変わった。

 ビアンカの下腹部、ちょうど子宮のあたりに赤紫の紋章が刻まれているのだ。

「……なんだ、これは?」

 魔術に詳しくないアルバートにもその異様さを──明確な悪意を肌で感じる事ができるほどだ。

「淫、紋……」

 アルバートの疑問に答えるかたちで、熱に浮かされたような表情のビアンカが苦しげに呟いた。
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