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27 博覧会場にて

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 爽やかな風が若葉を揺らす。日の高さと眩しさが、夏の暑さの訪れが近いことを予感させる。
 お嬢様は、白桔梗の繊細な刺繍が施された青緑色のドレスに身を包み、若葉にも負けない瑞々しい輝きを放っておられる。
 初夏の草花の女神のようなお嬢様と、その腕に抱かれた私は、現在王都で開かれている国内博覧会の会場に来ている。
 隣には、濃紺の服と白いマントを身につけたルーファスが立っている。そう、視察である。今回もデートではなく、視察である。
 重要な決議がある王太子王太子妃両殿下に代わり、折角学園が休みの日だというのに、お嬢様はルーファスにつき合って、こんな所にまで視察に来ておられるのだ。
 博覧会場には、国内から様々な物が集められ、バリエーションに富んだ展示物があちこちに飾られている。
 曲芸師や楽団なども呼ばれ、会場は賑わってはいるが、それほど混雑はしていない。今日は開催初日で、貴族など上流階級にだけ入場が許され、一般市民の入場は制限されている為、人の出入りは緩やかだ。明日からは、一般にも開放されるようだが、そうなれば人で溢れて、前に進むことも大変になるであろう。
 お嬢様とルーファスは、護衛を引き連れて会場内を見て回る。
 やがて、ハーツシェル公爵領から出品された展示物の前に来ると、お嬢様はその展示物について、ルーファスに説明を始めた。
 私は、お嬢様の要点を押さえた端的で素晴らしいご説明を聞きながら、鬱々とした気持ちでプラプラと尻尾を横に揺らす。
 本当は、今日お嬢様をここへ来させたくはなかった。
 なぜならば、この博覧会場ではおそらくゲームのイベントが起こるからだ。
 私は、お腹を壊したフリなどして、お嬢様をここへ来させないように、試行錯誤してみたのだが上手くいかなかった。前日に夕食をバカ食いし、なおかつ執事のマーティンに詰め寄り脅して、おやつをたくさん貰い、腹痛を呼び起そうとしてみたのだが、若干胃もたれして体重が増えただけだった。
 お嬢様は、私に苦い胃もたれの薬を飲ましてくださり、私におやつを与えすぎないように、マーティンに厳しく注意してから、侍女達の手を借りて素早く着飾って、ルーファスとの約束の時間に無事間に合ってしまわれた。
 お嬢様の薬のおかげで、胃は快調に戻ったはずなのだが、これから起こるであろうことを考えると、ストレスでまたムカムカしてきた気がする。
 私が、体を強張らせていると、お嬢様が気遣うようにゆっくりと背中を撫でてくださる。
 お嬢様は、自領の展示物についての説明をつつがなく終え、ルーファスと次の展示物の場所へと移動し始めた。
 すると、
「ルーファス殿下!」
 と、警備の騎士達の壁の向こうから、嬉しそうに手を振り、不躾に声をかけてくる人物がいた。
 やはり来おったな、ヒロイン……!
「ああ、君は……」
 ルーファスが、フィオナに気がつき立ち止まる。
「こんな所で会えるなんて……嬉しいです!」
 キャピキャピとはしゃいでいるが、ヒロインよ。こちとら真剣に視察中なのである。会場にいる他の貴族達が、気安く声をかけて来ない理由を、少しは考えて欲しいものである。
 視察中だと判断して遠慮しているのか、婚約者とデート中だと判断して遠慮しているのか、どちらかはわからないが……。どちらにせよ、周りの貴族達はきちんと場の空気とマナーを心得ているというのに、なぜヒロインはそれに倣うことが出来ないのか。
 平民出ゆえに、貴族社会の礼儀を知らないのは仕方がないにしても、もうちょっと周りを見て、空気を読むことを覚えなさいよ。
 空気も読まず、まともな挨拶すらしないフィオナを注意することもなく、ルーファスは柔らかく微笑んだ。
「君は一人で来たの?」
「いえ、家族と来たんですけど……はぐれてしまって」
 フィオナは嬉しそうな顔から一転、不安そうに辺りを見回す。
「そうなのか、それは大変だね……。良ければ、君の家族が見つかるまで、私達と一緒に会場を見て回るかい?」
「えっ!いいんですか?」
 良くない。
 良くないに決まっているだろう。仮にも、婚約者と一緒にいるというのに、なにを他の女を誘っているのだ、このウスラトンカチは。そして、なにをその言葉に甘えようとしておるのだ、このスットコドッコイは。
 お嬢様は、無言でルーファスの後ろに控えておられたが、私を撫でるペースが若干速くなっている。
 苛立つお気持ちはよくわかります!わかりますが、ここはなんとか抑えて頂きたく……!このヌケサク共には、私がいずれ正義の鉄槌を食らわせますので、お嬢様が直接手を下す必要はございません。
 ゲームでは、お嬢様は当然お怒りになり、ルーファスの目が離れた所で、ヒロインに厳しく注意をしていた。しかし、そこをルーファスに見られてしまい、ルーファスはお嬢様からヒロインを庇うのだ。
 くっ……許せぬ!なぜ、常識を注意したお嬢様が、悪者のような扱いをされねばならぬのだ。この浮かれポンチのトントンチキ共め!
 怒りのあまり、ギリギリと歯噛みしていたら、お嬢様がそれに気づき、私を撫でる手を止めて心配してくださった。
「クイン、どうしたの?具合でも悪いの?」
 どうやらお嬢様は、私の胃もたれがまだ治っていないのではと、危惧されたようだ。
「ルーファス殿下、申し訳ございません。クインに、薬を与えて来てもよろしいでしょうか」
「クインは具合が悪いの?大丈夫?」
「どうも、胃の調子が悪いようで……。薬を与えれば大丈夫だと思います。与え次第、すぐに追いつきますので、どうぞお先にお進みくださいませ」
 お嬢様は、ルーファスとフィオナを先に行かせて、近くのベンチに座り、会場の職員に水を用意して貰い、持参していた粉末状の胃薬を私に飲ませてくださる。
 うむ……苦い。この薬が、イライラからくる胃のムカつきにも効けば良いのだが。
 私は、ゆっくりとまばたきをして、気分が落ち着いたことをお嬢様にお知らせする。
「もう大丈夫かしら?」
 お嬢様は、私の頭を優しく撫でてくださりながら、立ち上がる。
 お嬢様について来た護衛の二人の騎士達と共に、ルーファス達が向かったであろう場所へ歩き出そうとした時、
「姉上」
 と、後ろから聞き覚えのある声がかかった。
 振り向くと、サディアスが人波の中から遠慮がちに進み出て来た。
「あら、サディアス。貴方も来ていたの?」
「はい、祖父上から、姉上を見守るように命じられまして」
「まあ、お祖父様ったら……」
 会場にサディアスがいたとは、全然気がつかなかった。
 魔力制御の腕輪をしているせいで、その魔力は感知しづらいのだとしても、なかなか目立つ風貌をしているのに、今までお嬢様にも私にも見つけられることなく、隠れてついて来ていたとは……。こやつ、意外と隠密スキルが高いのか?魔王のくせに、やりおるな……。
 サディアスは、お嬢様達が進もうとしていた方とは、別の道を指差した。
「ルーファス殿下は、ご予定を変えて、あちらの曲芸師の見世物興行の見物へ向かわれたようです」
 むっ……ルーファスの奴め、お嬢様が後から追ってくるとわかっていながら、予定にはない別の道へ進むとはっ。
 ゲームのイベントの流れを思い出すに、どうせヒロインが、真面目な展示物を見ることに退屈して、曲芸師を見に行きましょうよ!とか、言い出したのであろうが。王子がそれに流されてどうする。
 お嬢様は、サディアスに案内されながら、曲芸師のステージの方向へと向かう。その途中で、私はある物を見つけて、ピンと尻尾を逆立てた。
「クイン?どうしたの」
 お嬢様は、私が一点を凝視していることに気がつき、足を止めて私の視線の先を追う。
「古代竜の爪の化石ですね」
 サディアスが、その展示物の前の説明文を見て、そう言う。
 そう……そこには、巨大な竜の爪が飾られていた。
 ううむ……現代の竜は、結構小型化してしまっているが、昔の竜はこれほど大きかったのか。一本の爪でも、今の私よりもずっと大きい。
 小型化も、小回りが利くし、素早く動けて良いと思うのだが、やはりここまで巨大だと迫力が違うし、竜の力強さや威厳が感じられて良いな……。
「クインは、この展示物が気に入ったのかしら。じっと見ているわ」
「食べ物以外に興味を持つのは珍しいですね」
「そういえば……以前、画廊に行った時も、竜が描かれた絵画をまじまじと見ていたような……。竜が好きなのかしら」
 ギクリ。
「さあ……どうでしょうね」
 サディアスは、そう言いつつ、じいっと私を見てくる。
 こら、余計なことは言うでないぞ。
 いけない、いけない。これからは、お嬢様の前で竜族関連の物に関心を持つのはやめておこう。そろりと、古代竜の化石から目を離して、反対の方向を向く。
「あら、もう興味をなくしたみたい」
「やはり、食べ物ではないから、興味を失うのも早いのでしょうね」
 サディアスめ、どんだけ私を食いしん坊だと思っているのだ。失礼な奴だ。
 お嬢様とサディアスが、古代竜の化石の前から離れようとした時、進もうとしていた道の方から、ルーファスが護衛を引き連れて戻って来た。
「おや、サディアス。君も来ていたのか」
「はい、国内の文化を学び、見識を広めようと思いまして、色々と見て回っております。では、私はお邪魔でしょうから、これで失礼いたします」
 サディアスは、淀みなくそう言って、一礼して去って行った。もしかしたら、またその辺に潜んで、お嬢様を見守っているのかもしれないが。
 ルーファスは、ヒロインを誘ったように、サディアスを共に見て回ろうと誘うことはしなかった。
 そういえば、ルーファスと護衛しかおらず、フィオナの姿が見当たらないがどうしたのだろう。
 そう思い、辺りを見回していると、お嬢様が私の疑問を口にしてくださった。
「ラセンディア様は、どうされたのですか?」
「私が、曲芸の興行主から話を聞いている間、彼女は曲芸を見物していたはずなのだが、気がついたら姿が見えなくなっていてね……。もしかしたら、家族を見つけて合流することが出来たのかもしれない」
 そうだとしても、ルーファスに別れの挨拶もせずにいなくなるようなことは、さすがにヒロインでもしないと思うが……。
 ゲームのイベントでは、ルーファスの目が離れた隙に、お嬢様がヒロインを連れ出して注意を与えていたが、今回はお嬢様自体がその場にはおられなかった訳であるし……。ヒロインが、ルーファスのそばを離れる理由はなかったはずだが……。またドジっ娘っぷりを発揮して、迷子にでもなっているのだろうか。
 お嬢様とルーファスは、また予定のルートに沿って、会場の視察を再開された。
 私は、その内ヒロインがのこのこと戻って来るのではないかと警戒していたが、そういうこともなかった。
 無事に視察を終えて、帰りの馬車の中へ腰を下ろすと、広い博覧会場を歩き回られて、さすがにお疲れになられたのか、お嬢様はルーファスに気づかれない程度に小さく息をこぼされた。
 私が、精一杯愛らしい表情を浮かべて、そのお疲れを少しでも癒そうと頑張っていると、ルーファスがお嬢様にポツリと話しかけてきた。
「君は、サディアスと仲が良いのだね」
「はい、姉弟ですから」
 麗しく微笑み、そう答えたお嬢様を見て、ルーファスは少し目を伏せる。
「そうか……そうだよね」
 どことなく哀愁が漂う表情をしているが、なんだというのだ。と、イラッとした所で、ルーファスの兄弟事情を思い出した。
 ルーファスには、ウィルバートという弟がいるが、母親が違う為、その仲は微妙である。王位継承を争う関係でもある為、色々と複雑な胸中があるのだろう。
 義理の姉弟なのに仲が良さそうなお嬢様とサディアスが、羨ましいのだろうか……。
 だが、あれは魔王だぞ。
 羨ましいのなら、どうぞサディアスを王家で引き取って貰って、貴様の義弟にでもなんにでもして良いぞ。その代わり、お嬢様は公爵家に返して貰う。
 ナイスアイデアである。そうすれば公爵家は安泰だし、平和になる。
 私が、本当にそうならないかと期待を込めて、ルーファスを見つめていると、お嬢様は、ルーファスとウィルバートの関係に思い至ったのか、ご自分の口元を少し抑えた。
「ルーファス殿下……」
「いや……すまない、なんでもないんだ。気にしないで」
 お嬢様の気遣うような視線を受けて、ルーファスは憂いを帯びた表情を消して、明るく笑った。
 お嬢様は、少し考えてから顔を上げて、凛々しいお顔でルーファスを真っ直ぐに見つめる。
「私が、殿下のおそばにおります。ずっとお守りいたします」
 その言葉に、ルーファスはわずかに目を見開き、ふっと息を吐いて微笑んだ。
「ありがとう」
「いいえ、婚約者ですから」
 お、お嬢様……!いけません……いけませんぞ!その婚約、いずれ破棄されますから!お嬢様がこやつを守る必要は、一ミリもありません!
 ルーファスは勝手にウィルバートとギスギスして、勝手に孤独を感じて、勝手にヒロイン辺りにでもそのことをグチグチと愚痴っていれば良いのだ。貴様ら兄弟の確執に、お嬢様を巻き込むのではない!
 うぬぬぬぬっ……。お嬢様の、優しいお心につけ込もうとしおって……。許せぬ。
 ゲームで起こったルーファスの暗殺イベントを、現実では絶対に成功に導いてやることを、私は心に決めた。
 お嬢様の守りは強固だろうが、フッフッフッ……油断しているが良い、ルーファス。お嬢様の腕に抱かれた私こそが、貴様の死神なのである。最大の敵は、常に身の内にいるものなのだ……フハハハハ!
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