上 下
263 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第263話 タルカスの切り札

しおりを挟む

爆熱火炎弾プロミネンス・バーストを完全消滅させただと! ありえん! たかが剣技一つで?」


 なんか、そのリアクションには飽きたな。しかもコイツら俺の情報を仕入れて散々警戒して、手術中を狙ったりしてくるクセにね。事前情報、信じてなかったのかな?


「しかも、手刀でな! 俺はそれだけパワーアップしたってことよ! ところで、アンタ、タルカスなのか?」

「その通りだ。私の本体は今、トープスの教員棟前でお前の仲間と戦っている。この女は義手を通して利用しているだけの私の駒にすぎん。」


 ローレッタに片腕を切り落とされたはずのヘイゼル。義手を付けてもらったのか。でもそれが操られるきっかけになったみたいだな。まさか、ゴーレムそのものだけじゃなく、義手の使用者まで操れるとは。俺やトープス先生達が操られていないのは、先生が何らかの対策をしていたのだろう。


「手術終わったのね。でも、あんまり無理しちゃダメよ。」

「ああ、今は慣らしのつもりで戦わせてもらうさ!」


 エルが腕のことを気遣う。治り立てだから、あまり無理は出来ないのは事実だ。また、怪我をしてしまったら、再び危機に陥ってしまう。


「慣らしのつもりだと! 舐められたものよ! 私を相手に手を抜くなどありえんわ!」

「いや、今はアンタを相手にしてるヒマはないんだわ。他にやることがある。」


 タルカスに乗っ取られたヘイゼル?に向かって突進する。言葉とは裏腹に向かっていくので相手は迎撃する気満々だ。そうだ、いい子だ。そのまま。来い!


「粉砕してくれるわぁ!」

(ブンッ!!)

「……とうっ!」


 大きく振りかぶった攻撃を避けつつ、馬跳びの要領でヘイゼルを飛び越え、争い合ってる集団の元へ向かった。そして、そのまま……、


「天破、陽烈八刃斬!!」


 一団を全てなぎ払う様に放つ! もちろん、人々には傷一つ付けていない。あくまで、タルカスの制御能力を断ち切るための攻撃だ。


「……!? 一体、私は何を?」

「暴れていた人が一瞬でおとなしくなった!」

「一体、何が起きたの?」


 一瞬の出来事だったため、あちこちから驚きの声が上がっている。こちらの集団は大丈夫そうだな。あとは身内のDIY寮の方に行かなくては!


「魔王の娘に続いて、不可解な技を使いおって! このままうまくいくと思うなよ!」


 こちらの異変に気が付いたタルカス。再び俺に攻撃を仕掛けてこようとしているが、その背後から俊敏に近付こうとしている人影がいた。


「これ以上、あなたの好きにはさせません!」

「何!? ジム・ワーロック! 貴様、私に刃向かうというのか!」


 ジムはタルカスを後ろから羽交い締めにしている。ここはジムに任せて寮に向かうとしよう。


「行ってください、勇者さん! ここは僕が……。」

「ああ、任せたぜ!」

「……ジム・ロック・スペシャル!!」

「ぐ、ぐぎぁ!?」


 ジムはなんと……俺の、というかジェイのコピー技を再現してタルカスを極めて動けなくしている。たった一回見た技を完コピするとは、やるじゃないか。それを見て安心した俺は寮に向かう。


「霽月八閃!!」

「わひーっ! みんな、落ち着くでヤンス!」


 エルとタニシが時間稼ぎをしてくれていたようだ。割とこの中にもゴーレムだったメンバーがいたようだ。見た目では全然わからなかったのに……。


「天破、陽烈八刃斬!!」


 全体を一閃し、タルカスからの呪縛を解き放つ。これでこの辺り一帯の混乱は収まったはずだ。あとは、タルカスに支配されたヘイゼルを解き放つだけだ。


「ぐぬーっ!? たった一人、勇者が現れただけで、覆されてしまうとは! かくなる上は、切り札を出し惜しみしている訳にもいかんな!」


 タルカスは苦し紛れに何かをした。ジムの技に極められているので、身動きできないのはそのままだが、義手が奇妙な光を発したのがわかった。


(ヴォン!!)


 不気味に低い音を立て、空間に裂け目が出来、その中から黒光りした鎧を纏った人影が数体現れた。人の気配を全く感じない、冷たい殺気を纏った不気味な連中だった。


「クク、これが我々の切り札、ウォリアー・ワンだ! これをそこらのゴーレムと一緒にしない方がいいぞ!」


 新型のゴーレムなのか? 威圧感が半端ないだけで、さほど特別にも感じられないが……。連中の中の一体がジムとタルカスのもとへ向かっていく!


「……!」

「くっ、やる気なのか!」


 ジムはタルカスを解放し、黒戦士に向き合った。アイツもアレが脅威であることを悟ったのだろう。


「……破壊デストラクション!!」

(ボンッ!!)


 黒戦士はジムに手の平を向ける。手の平には謎の穴が空いていた。それをジムの胸に向けた途端、大穴が空いてジムは後ろに吹き飛ばされた! しかも、“破壊デストラクション”だと!


「究極の術式とやらも我々にかかればこの通り! ウォリアー・ワンは使いこなせるのだ! 人間にはここまでの力は行使できまい!」


 あの黒光りゴーレム全てがあの“破壊デストラクション”を使いこなすというのか! やべぇ! 俺はあの魔法を相殺出来るが、みんな出来るわけじゃない。これは大変なことになってきたぞ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

処理中です...