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第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】

第218話 “しちゅうひきまわし”?

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「で? どうしてこうなった?」


 実習から戻ってきた翌日、俺は奇妙な光景を目にすることになった。それが何かって? いや、俺にもわからんから混乱してるんだ。


「いらっしゃいまへ~! おいしい、おいしい、特別メニューですよぅ~!」


 気の抜けた声でタニシとタガメおじさんが客引きをしている。客引きと言う意味ではあまり良い接客とはいえない。でも、そうなってしまう理由が他にあるからだ。客以外に引いている物がある。


「声が小さい!」


 横で見ているミヤコがタニシとおじさんに指示を出している。鬼の形相で。地獄の獄卒と刑務官はきっとこんな顔をしているに違いない!


「いらっっさいまっせ~!」

「なんかイラッとくる! もう一丁!」

「オイ~~~ッス!」

「それ違う!」


 ダメダコリャ! しかし、なんでこうなった?タニシ食堂の新企画と称して、学内の移動販売を始めたのだ。実はこれにはタガメ・タニシ両名への刑の執行も兼ねていた。なので馬車馬のように働かされている。まさしく馬車のように新メニューの入った特大のズンドウ鍋を引っ張らされているのだ!


「ちょっといいか? お前、なんか勘違いしてない?」

「お前って言うな! 何よ、ウチのやることにイチャモンでも付ける気?」

「違う。この前、あの二人を『市中引き回しの上、打ち首獄門に処す』とか言ってなかったっけ? それがなんで、こんなおもしろ罰ゲームみたいな内容になってんの?」

「有言実行してるじゃん! ちゃんと処してるじゃん! これは“しちゅうひきまわし”の刑じゃんか!」

「……は?」


 コレのどこが“市中引き回し”? だいたいあれは、罪人を縛って馬に乗せて、刑場までの道中、町中を歩いて見せしめにする刑罰だったはず? それが鍋を引き回させるなんて、おかしい。ん? 待てよ? 鍋の中身って……?


「そういえばコレの中身、新メニューの正体って何?」

「コレ? “じっくりトロトロ煮込んだ、惚けそうなシチュー”だけど?」

「シチュー!?」


 シチューだと? シチューって言えば、根菜やキノコと肉を煮込んで作る、とろみのあるスープの事だったよな? それよりもこれで謎が解けたので良かった。“市中引き回し”ならぬ“シチュー引き回し”だったとは……。どおりでおかしいと思ったんだ。そんな難しいマニアックな用語を知ってるわけないって。やはり変な勘違いをしていただけだったのだ。


「お前、コレ、本気でやってんの? 俺の知っている“しちゅうひきまわし”と違うんだが?」

「お前って言うなって、言ってるでしょうが!は? 何言ってんの? 意味分かんないんだけど!」

「ああ、そう。じゃあいいわ。」


 ダメダ。これ以上突っ込むのは止めとこう。逆ギレされかねんし、俺も処されてしまう。ヒドい勘違いだがこの方が平和だし、客も割と来てるのでそのままにしておこう。


「勇者さん、どうですか? 僕とヴォルフさんの合作、新メニューは?」

「ん? ああ、来たばっかりだから、まだ食べてないんだ。」


 ロッヒェンとリキシがやってきた。一応、店の売りもんだから適当に作ったわけではないと思っていたが、二大巨頭の合作だったようだ。俺らがいない間の穴を埋めてもらっていたのだ。なんか店の方針もミヤコの独断で改変されたらしい。その話はエルから聞いた。


「ダンジョンでは僕ら以上に大変な事があったらしいですね?」


 ロッヒェンは実習の話題を振りながら、シチューをよそって渡してきた。どうやら試食させてもらえるらしい。遠慮なくもらうことにした。


「おお、すまんな。頂くとするよ。……うまいな。これでダンジョンでの嫌なことも吹っ飛びそうなくらいうまいぞ。」

「ありがとうございます!」


 合作なだけあって、大したうまさだった。肉の下ごしらえも見事で柔らかく且つ、食べ応えがある。野菜にも良く味がしみこんでるし、汁自体もじっくり煮込んで、灰汁も丁寧に取ってあるので雑味がなく、極上のうまさだった。


「銀仮面に遭遇するわ、タガメおじさんに邪魔されるわでまともにダンジョン攻略出来なかったぜ。」

「銀仮面はともかく、おじさんが何故ダンジョンにいたんですか? 学生ではない部外者がいるのはおかしいですよ。」

「おかしいよな? でも理由は……タニシの持ち物が欲しかったかららしいぞ。」

「え……?」


 おっと危ない! 本当のことを言うところだった。タニシ自作のエロ人形が目当てだったって口が裂けても言えない! ミヤコのあられもない姿の人形だなんて言えない! 言ったら、目の前が鼻血の海が広がってしまう! ロッヒェンはこんな話を聞いただけでもそうなってしまうだろう。人形を直接見せたら、命に関わりかねないからな!


「理由はどうでもいいんだよ。ダンジョン内でのやらかしの方がもっと問題だったからな。罠を発動させたり、助けると見せかけてラスボス部屋に送り込んだり。しまいにはタニシ達を見捨てて、一人だけ逃げ帰ったりしたからな。」

「エェ……。ヒドいですね、それは。」


 散々クソムーブをかました挙げ句、オガワ流処世術とかいう謎の技を使ってたらしいな。俺は当事者じゃないので話の上でしか知らない。俺は銀仮面とたわむれてたからな。


「そんなこんなで攻略が不完全だったもんで条件付きで達成扱いだ。あとはどうなるかわからん。」

「もしかしたら、代替の実習とか補習が課せられるかもしれませんね。」

「オイ! こんな所にいたのか? 俺らへの処遇が決まったぞ!」


 話していたら、トニヤとジムが血相を変えてやってきた。ちょうど、その話をしてた所へ、速報が入ってきたらしい。雰囲気からすると難儀な問題を課されたのかもしれないな……。
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