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第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】

第181話 エルとローラの不思議なダンジョン

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「怪しい物を見つけたら言ってね。」

「はい。」


 ダンジョン実習が始まった。二人一組になって五日間、攻略をする。私は当然のようにローラと一緒に入ることになった。


「割とリアルに作られてるね。世界各地にあるダンジョンと遜色なさそう。」


 五日間というのはあくまでタイムリミットなだけで、それまでに課題を制覇できれば終了になる。間に合わなければ、課題の達成率に応じて、後日補修が課せられたり、最悪、退学等の処置が下される。


「中には学院ができる前から存在しているダンジョンも存在しているそうです。古代魔法文明時代の物だとか。」

「そんな古い物まで……。」


 古代といえば……ノウザンウェルのダンジョンもそうだった。表向きは中世期ごろの物に偽装されていたけれど、蓋を開けてみれば伝説の金剛石の王のダンジョンだった。


「分かれ道が見えてきました。どうしましょう、お姉様?」

「まずは罠のチェックよ。分岐点や曲がり角には罠が仕掛けられている事が多いから、慎重にね。」


 前にゲンコツさんに教えてもらった知識を頼りに、トラップの確認をする。まずは床、次に天井、そして壁。それぞれ見た目に違和感が無いか確認する。部分的に質感が違っていたり、へこみ、傷があったら念入りにチェックをする。


「そこに怪しいへこみがあるわね。」

「わかりにくいですが、確かにありますね。」


 床を観察すると微妙にへこんでいる部分がある。これは罠のスイッチだと思う。これに連動して落とし穴が開いたり、壁から矢が飛び出て来る物が多い。ここの場合は……天井に小さな穴が何個か空いている。


「これね。天井から何かが落ちてくるようになってるみたい。」

「そんなところに……。」

「じゃあ、作動しないように封印シールを貼っておくわね。」


 事前に準備してきた物を貼り付ける。“固定化”の効果の術式を紙切れに込めて用意してきた。罠に出くわす度に魔力を消耗してたら、もたないかもしれない。こういった物を事前に用意するのも実習のうちになっているので、出来るだけの対策は十分にしておかないといけなかった。


「次は、この分かれ道、どっちを進むか決めないとね。」

「……お姉様、危ない!」


 突然、私はローラに突き飛ばされた。彼女はその場に留まり、手で何かを掴んでいる。その手にあるのは……矢だった。


「危ないところでした。とはいえ、急に突き飛ばしてしまって、申し訳ありません。」


 ローラは深々とお辞儀する。謝られているといっても、私自身が引き起こしたミスが原因だ。謝らないといけないのは、むしろ私の方。


「私が油断していたから、こんなことになったのよ。あなたが謝る必要なんて無い。」

「いいえ、私が早く罠に気付いていれば、このようなことには……。」


 お互い自責の念があるから、引き下がらない。しかも、割と頑固な所があるから、余計に。……やっぱり、私たちは似たもの同士なのかもしれない。


「見て。壁をよく見ると、石材の隙間が少し大きいところがある。反対側の壁にも似たような隙間が空いてる。」


 このダンジョンは床や天井、壁には切り出した石材を組み合わせて作られたような構造になってる。一見、違いがないように自然な形で罠を設置してある。


「これは! 動体感知の仕掛けが施されていますね。」


 罠封じのシールを貼りながらローラは罠の仕組みを調べている。隙間の中を見て感知用魔力素子……魔水晶が埋め込まれているのがわかったんだと思う。一つ目の簡単な罠で油断した相手を確実に仕留めるような罠。巧妙で高度なカムフラージュが浅い階層に設置されているなんて……。


「おかしいわ。こんな高度な罠は滅多に無いはず。知り合いの専門家の人が言ってたもの。まして、こんな教習用のダンジョンに設置されているなんてありえない……。」


 どうなんだろう? こんなことはミスで済まされるレベルじゃない。私たちでなければ命を落としていたかもしれない。どのような意図でこんなダンジョンを実習用に選んだんだろう?


「学院側の設定ミスでしょうか?」


 それともう一つ気になることがある。罠から守られた事について。ローラの咄嗟の判断で命を救われた。突き飛ばされた所までなら普通の人でも可能なレベル。

 でも……矢を手で掴むなんて出来るんだろうか? 例えば勘のいいロアなら、反射神経に頼らずに察して、同じ様なことは出来るかもしれない。それは武術を習得した人ならの話。この子はあくまで魔術師のはず。そんな常人離れした動きはどこで身に付けたのだろう? 

 この子は何者なんだろう? どういう目的で学院に入ってきたの……?
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