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第3章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派【愛と勇気と学園モノ!!】
第153話 “1” = “∞”
しおりを挟む「通常、魔術を防御もしくは無効化するには、魔力の防御壁を作る、魔術の文字列そのものを無効化する、という手段が使えます。」
防御壁、バリア的なのは見たことあるな。ファルやサヨちゃんが使ってたと思う。防ぐ方法はそういうのしかないと思っていたのだが、文字列を無効にする方法なんて想像できなかった。秘策はそっちの防ぎ方ということなんだろう。
「防御壁を張るタイプはある意味万能というか、とっさの発動に適しています。相手の攻撃エネルギーを遮断するだけですから。でも、魔力の使用効率は悪いのです。無駄にエネルギーを消費してしまうので、いずれは息切れしてしまう。魔力が膨大な人は半永久的に張り続けられたり出来るんですけどね。」
「先生も出来るのではないですか?」
「私、じつはその方法論が好きではありません。あくまでこれは能力ある者、強者だから出来る方法ですからね。それに、この考えは私のとても古い友人が陥っていた傾向なので好きではないです。」
「それって……。」
古い友人というのはもしや……? 迷宮に引きこもっていた、あのダイヤモンドなアレのことだったりするんだろうか? 確かにアイツは大魔力ゴリ押しばっかりだった。あれが特に悪い例なのだろう。
「こんなことを言っているから、彼に嫌われ、このような姿になってしまったのですが……いけない、いけない。この話は長くなりますし、脱線してしまうのでこれぐらいにしておきます。」
聞けないのは残念だがしょうがない。とはいえ、やっぱアイツは最悪だな。友達を石から出られないようにするなんて。どんな呪いをかけたのだろう? こんなスゴい人が永久に解除できないのだからよっぽど質の悪いものかもしれない。霽月八刃でも解除できないんだろうか?
今度、提案してみよう。
「それでは話を元に戻して、無効化術の説明をします。無効化に関しては秘策を教える前にお伝えした、魔術の文字列を妨害する方法です。」
文字列に一字、割り込ませる形で魔術を成り立たなくさせる技、それが先生の秘策の原理だ。先生の言葉を使うなら、ビットをねじ込む様な感じか。体得したからコレの方がわかりやすいな。
「通常の方法では相手の魔術を否定する意味合いの文字列を割り込ませる形で発動する物です。単純な文字列なので魔力の消費は最低限で済みますが、相手の魔術に応じて適宜判断し変化させる必要があります。なのでとっさに発動させるのには向いていません。」
「でも秘策はたった一文字を使うだけでいいんでしょ?」
「ええ。この原理はある有名な逸話を思い出して、秘策の原理を考えついたのです。とある巨大な魔道器、伝説の上では天まで届く塔と伝わっている、あの伝説です。」
大昔に天まで届く塔を建設していたという話。その塔が完成すれば世界を統一出来るとも言われていたそうだが、その事実を知った神様が人間の傲慢さに怒り、崩壊させてしまったとかいうオチの伝説。コレに関しても先生は実物を見たことがあるのかもしれない。
「あの計画、実は設計ミスが原因で失敗に終わったのです。先程、魔道器と言いましたが、当然魔術の術式、文字列が何万字と組み込まれていたのです。ですがとある些細なミスが原因で崩壊しました。それは……たった一文字の誤字だったのです。」
「そんなアホな……!?」
「信じられない!?」
そんなのが原因で失敗? 一文字違っただけで? もしかして、そんな恥ずかしいミスを隠蔽するために、神様のせいにしたのだろうか?伝説の真実ってのは結構アホらしいもんなんだな。例のダイヤモンドの王も情けないヤツだったしなあ……。
「この話から着想を得た私は秘策をシミュレーションしてみました。何度も試行錯誤する内に理論上は可能という結論に落ち着きました。」
「あの伝説から素敵な秘策を編みだしたんですね! 凄いです!」
エルは完全に心酔しきったような顔になっている。気持ちはわかるが、トレ坊先生に嫉妬の感情が芽生えてしまうではないか!
「秘策を使うには魔力の最小単位“1”ビットを再現しなければ実行不可能でした。私のような膨大に魔力を持つ者には絶対不可能なのです。例えると指先で霧の粒子一粒のみを掴む様なものです。それは他の一般的な人々でさえ無理なのです。」
「先生、もしかして魔力“1”の人を探すためにあの運の強さ判定器を使ったのでは……?」
「その通りです。実際には魔力10以下では白紙として出るようにしてあったのです。後の改良版にて精度を上げ、“1”なら“∞”と表示されるようにね。その結果、巡り会えたのが勇者ロア、あなただったのです!」
あの試験にそんな思いを込めていたのか。自身の理論を体現できる人間と巡り会うために。その秘策を極めた先には無限大の可能性があると信じて……。
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