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第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】

第111話 史上最悪の敵!?

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「倒したってことは技も使える、と?」


 わかりきったことだが、念のため聞いておく。コイツら猿の魔王一派の特殊能力、技のコピー能力を持ってすれば流派梁山泊の技も習得可能なはず。しかも流派の達人を倒したと言っている。だとしたら……俺にとっては史上最悪の敵ということになる。


「試してみるか?」


 直接の返答ではなく、使おうか、という形で返してきた。コイツは間違いなく使えると見て間違いなさそうだ。


「驚門……打破!!」


 急激に詰められる間合い! 気付いたときには腹部への激痛と共に後方へ大きく吹き飛ばされていた!


「……がはっ!?」


 思わず意識が遠のきそうになる。それをギリギリこらえて、体勢を立て直して構え直す。その間にも相手の追撃が迫ってきていた。さっきと同じで、拳覇の“八掌”の中の技なのは間違いない!


「生門勒骼!!」


 相手の足元に潜り込んだ所からの突き上げの一撃……!


 ……と思ったら地面に叩きつけられる衝撃で我に返った。今の一撃で一瞬意識を失っていたようだ。この魔王は間違いなく流派梁山泊、拳覇の技を使いこなしている。宗家の技に匹敵する精度だ!


「どうかな? ちょっと絶望感を煽ってしまったか? これで戦意喪失しないでおくれよ!」


 へへ、参ったな。敵にそんな心配をされてしまうとは……。確かに絶望感は半端ない。あの日の事を思い出してしまった。とはいえ、一気に覚悟が引き締まった感じもする。あの日以来の強敵ではあっても、あれを乗り越えたからこそ、今があるからだ。


「お? 何だ、何だ? さっきより強くなったような気配がするぞ! そう来なくっちゃ、面白くねえからな!」


 気を取り直し、改めて魔王と対峙する。次はどう来る? いやこっちから攻めるか? そもそも戦いの中で迷うのは御法度だが、迷うのが俺流だから問題ない。でも、妙な殺気が魔王に近付きつつあることに気付いた。


「爆! 竹撃!!!」

(ドゴァァァァァン!!!!!!)


 響く爆音、筋肉質な声! アイツだ! 片目のヤツを倒して加勢に来たのか? 爆風の粉塵が治まり、ゲイリーの姿が見えてきた。でも、魔王の姿がない!


「峨龍穿頭!!」

(ズンッッッッッッッ!!!!!)


 魔王がゲイリーの頭上に落ちてきた。地面に響くような音! 頭頂部を両足をそろえて踏みつけるような形で落下し、ゲイリーの体を半ばまで地面にめり込ませてしまった! 何だこの技は! 聞いたことがない!


「あっぶねえな! ビックリしたぜ! 危うく喰らうところだったわ! そんでもって、この技で潰れずに地面に刺さるなんて、すげえ頑丈だな、お前?」


 言われてみればそうである! 普通、あんなことをされたら首が折れたり、足が折れるなりするはずなんだが……。本人は気絶すらせず、怒りの表情で食いしばり耐えきったようだ。技をかけた方もかけられた方も、どちらもバケモノだ。


「ロア!」

「おっ、エルも来たか。」


 ゲイリーのお守りを頼んでいたエルもやってきた。その後ろにはロッヒェンもいた。どうやら完全に他のヤツは倒されたみたいだ。残すは魔王だけとなった。


「ヴァボーサ、ネグロスもやられちまったようだな。そろいもそろって、トンデモない奴ばっかだな。せっかく一対一に持ち込んだのに、もう終わりか!」


 言葉とは裏腹に、魔王は心底楽しそうに見えた。さらに不利な状況になったというのにこの余裕っぷりは信じられなかった。


「勇者ロア、僕はヴァボーサから重大な秘密を聞きました。彼らは全員まとめて倒さない限り、一人でも残っていれば何度でも蘇るんです。」

「なんだと!?」


 エドが倒したはずのヤツが復活してきた理由はそれか! 戦いが長引けば今の状況はひっくり返るかもしれない。逆に俺たちは消耗する一方になってしまう。ただでさえ怪我人を抱えているというのに!


「俺たちゃ一蓮托生! いっつも同じだ。丁度いい機会だ。奥の手のアレを使うか! それなら一緒に戦える!」


 この後に及んで奥の手だと? 仲間が全滅して開き直ったように繰り出す奥の手。さて、何が飛び出すのやら……。
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