上 下
11 / 331
第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第11話 処刑部隊

しおりを挟む
「あのようなクルセイダーズの汚れ物、無慈悲な処刑部隊を用いるとは、私は賛同できかねます。」


 クルセイダーズにそんなヤツらがいるのか? 今まで聞いたことがない。そもそも、そこまで非道な部隊があの組織に存在しているとは思わなかった。


「貴方がわたくしの指示に従えばいいのですよ。彼らの手を煩わせずとも“忌み子”を処分すれば良いのです。……そもそも彼らは以前、この女を始末し損ねました。わたくしとて彼らに絶対の信頼を置いているわけではありませんわよ。」


 エルを殺害しようとした連中の正体が、例の処刑隊ということか。いずれ相対することになってしまうんだろうか? できることなら避けたいが……。


「貴方に猶予を与えましょう。期限は本日より三日間。それまでにこの女を処断なさい。その間、この女はこの場で拘束しておきます。処断する決意が出来たら、わたくしの元へおいでなさい。もし、期限を過ぎれば……わかっていますね?」

「さすが、お母様。名案ですわ!」

「ムウウッ!?」


 今まで平静を保っていたラヴァンも苦悩の表情を浮かべている。自分でエルを殺すか、他人に自分ごと殺されるかという、地獄のような二択を迫られているんだ。誰だってそうなるだろう。


「ラヴァンさん、私を殺して下さい! そうすれば少なくともあなたは助かります!」

「いけない! 貴女自身がそのようなことを言ってはダメだ!」


 悲痛な声でエルは自分を殺せと訴えかける。会ったばかりの人でさえ助けようとするとは、彼女らしい。俺が口出しできれば何とか言ってやれるのに、声が出てこない。


「あなたに発言権があるとお思い?」


 扇子をエルに向けると、ミヤコの時のように姿がかき消えた。再び為す術なく、囚われる結果となってしまった。命を取られたというわけじゃないだろうが、人質に取られたようなものだ。


「では貴方方も別の場所で頭を十分冷やしてらっしゃい!」


 オバサンは俺たちにも扇子を向けた。すると急に体が軽くなり宙に浮いたような錯覚を感じた。そして、一瞬のうちに目の前の景色が変わる。一瞬にして屋敷の風景が殺風景な場所に切り替わった。


「お、おうわああ! ヘンなところにワープさせられたでヤンスぅ!」


 俺とラヴァン、タニシは一緒の場所に転移させられたようだ。俺らもまとめて捕らえられたようなもんだ。……これは大変なことになってきたぞ!


「も、もがっ!?」


 声を出そうとしてなんとか踏ん張ってみたが、これくらいのうめき声が限界のようだ。くやしい。俺は完全に発言権を奪われてしまった。


「君はナドラ様にギアスをかけられてしまったのだ。これは一種の呪いだ。彼女が解除しない限りは自らしゃべることは出来ない。」

「も!? もがぁぁぁ!?」

「とはいえ、声その物は出せないはず。ありえない! 君は一体何者なんだ?」

「アニキは勇者でヤンスよ!」

「ああ……そういえばそうだったな。」


 そうだったな、ってオイ! 俺が勇者な事を忘れやがるとは! ……とはいえ、この町に来てからは何かおかしい。俺が勇者と認識されていないような気がする。その条件は一つ。ある程度の実力や魔法に耐性があることで額冠の効果が及ばなくなる、ってものがあったはず。この町の人々はある程度、強いということだろう。魔術師の町なのかもしれない。エルの実家があるぐらいだし。


「そういえば、ゲイリーがいないでヤンスね? 別のとこに飛ばされたでヤンスかね?」

「おかしい。そんなことはありえない。一度の転移の魔術発動で二カ所に送ること等、理論上ありえない。例え実力のあるナドラ様でもだ。あの大男は転移の対照から外れていたのでは? いや、それもおかしい。近くにいれば巻き込まれたはず……?」


 ラヴァンはブツブツ言いながら考え込んでしまった。現にタマネギ野郎はいない。転送されなかった? 空気の読めなさがこんなところにまで影響するなんて。ヤツは色々不可解なところが多すぎる。何者なんだろうか?


「ああ~っ!? あんなのはどうでもいいヤンス! エルしゃんとミャーコちゃんを助ける事の方が大事でヤンスぅ!」

「確かに。君の言うことに一理ある。合わせて脱出方法も考えなくては。」


 途方もなく殺風景でまわりには建物の残骸がある。しかも、なにか薄暗くどんよりしている。不気味な場所だ。早く脱出しないと、エルの命が危ない。何か手はないのか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが 別に気にも留めていなかった。 元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。 リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。 最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。 確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。 タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...