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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第169話 ……目ノ前ノ 敵スベテヲ…斬ル!!

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「虚心坦懐……、絶空八刃!!」

(ズボアッ!!!)


 空間を斬る。我ながら大それた技だと思う。不死身の相手、実体のない悪のエネルギーとか色んな物を斬ってきたが、斬るという概念が通用しなさそうな相手まで斬ることになるとは……。


「やった……か?」


 何かを斬った感覚はある。でも、倒した、という実感はまだない。


「私を斬るだと?そんな馬鹿なことが……、」

(ミシッ!!)


 何かがきしむような変な音がした。その音がすると同時にダイヤ竜たちが一斉に動きを止めた。


「ウゲッ!」


 ダイヤ野郎は妙な奇声を発した。効いたんだろうか?実体が見えないので、わかりにくい。


「ロア!今一度、あの技を使うのだ!まだ、浅い!渾身の一撃を決めろ!」


 狐面が叫ぶ。アイツがそう言うんなら大丈夫なんだろう。俺は二撃目の姿勢を取った。


「痛みだと、馬鹿な!私は痛みなど、とうの昔に克服したはずだ!ありえぬ!一体何をしたというのだ?」


 痛みを克服した?感覚がなくなっていたんだろうか。もうそんなものは生き物ですらない。死んでいるも同然じゃないか。


「決して許さぬぞ、野蛮人どもめ!全力でひねり潰してくれるわ!」


 ダイヤ竜たちが他を無視して、俺目掛けてい一斉に突進してきた。脇目を振らず猛然と。何千年ぶりに感じた痛みにヒステリーを起こしているみたいだ。


「もう一度だ!次で決めてみせる!」


 再び集中を始める。……さっきと違って、相手がこっちに意識を向けているせいか、気配がハッキリわかる。敵の手が迫っているとはいえ、かえってチャンスになった。


「虚心坦懐……、絶空八刃!!!!!!」

(ズボアッ!!!)

(ミ…シッ。)


 斬った。今度はハッキリと手応えがあった。下手をすると、自分の腕が折れてしまいそうなくらいの圧を感じた。でも、斬った。途中からは剣の刃を滑らせるような感じでスッ、と斬れた。


「私は…ふ…じ…み……だ。」


 斬った瞬間からダイヤ野郎の様子がおかしくなった。おかしくなる自分をおさえようとしているようにも感じる。


「私は…完全なのだ。負ける、死ぬ等ということはありえない。」


 とうとう現実逃避を始めた。魔法を極めた伝説の王が情けないことになっている。


「私は…そうだ、死さえも極めたのだ。私は更に完全になったのだ。そうだろう、ロバート?」


 おかしなことを言い始めた。ところで、ロバートって誰?


「死を極めた!死を極め…死をきわ…死をき…死を…死……、」


 止まった。ついに死んだか。


「ロバアァーーーートぉぉぉぉ!!!!!!」 


 だから誰なんだよ、ロバートって!最後にモヤモヤさせんじゃねーよ!未完で終わるなよ!


(ビキ……ビキビキッ!…バキッ!!)


 何かが壊れるような音がし始めた。……そうか!アイツが死んだから空間が壊れ始めてるんだ。


「空間が崩壊するぞ!」


 今まで存在していた地面、景色、建物が消えていった。同時にダイヤ竜たちも消えていく。全てが音を立てながら壊れた。
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