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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第161話 数の暴力を押し返せ!

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「少女よ、拙者はもう全快した。礼を言う。」

「もう少し、治療したほうが……、」

「多少の傷等、問題にはならぬよ。気遣いには感謝致す。」


 侍は傷の全快を待たずに、戦線に復帰した。そんな状態で大丈夫か?


「貴様が一人戻ったところで状況は大して変わりはせん!」


 ダイヤ野郎も負けじと奮戦している。でも、明らかに侍と一対一で戦っていたときより、弱くなっているような気がする。


「愚か者どもめ!数の上で勝っているということは、こんな戦い方も出来る!」


 俺たちが直接戦っている個体とは別に後ろの方で出番待ちしているヤツらが急に構え始めた。まさか……、魔法を使おうとしているのか?


「こうやって一斉に放てばどういうことになるかはわかっておるのだろうな?」

「ヤバイ!なんとかしないと!」


 この状況で広範囲に放出されたら大変な事になる。


《皆の者、よく聞け!妾に良い考えがある。今から言うことを実行に移すのじゃ!それは……、》


 サヨちゃんは人間の姿に戻りながら、みんなに思念波を送っていた。


「パゴア!食らえ!ダイヤモンド・フレア・ブラスト!」


 ダイヤ野郎は知らずに放とうとしている。俺たちはサヨちゃんの策をそれぞれ実行に移した。


(ドギュァァァッ!!!!)


 周囲から一斉に魔法が放たれた。ダイヤモンドの雨あられが放たれ、周囲の建造物がボロボロに破壊されていった。もう、なりふり構わずといった感じだ。作った本人が一番破壊している。


「どうだ!全員ボロ雑巾に変えてやったぞ!パゴア!パゴ……ア!?」


 ダイヤ野郎は変な笑いを途中でやめた。やっと気付いたか、お間抜けさん!


「いやあ、助かったぜ!そこら中に盾があるんだもんなあ!便利なモンは有効利用しないとね!」


 サヨちゃんの秘策とは……ヤツらの体自身を盾にすることだった。ヤツらの体は魔法に耐性がある。数もたくさんいるし、身を隠すにはもってこいだった。下手に防御しても食らってしまうのでこうする方が得策だった。サヨちゃんが直前に人間に戻ったのはこれを実行するためだった。


「おのれ!小癪な真似を!」

「数の暴力がかえって仇になったねえ!」


 あいつ自身のゴリ押し戦法を使って接近戦で各個撃破というところまでは良かったんだろうけど、あとからの思いつきで魔法ブッパしたのはアホとしか言い様がない。魔法を極めたようだが、戦闘に関しては素人同然だったのだ。ホントに残念なヤツだ。


「かくなる上は……。」


 何か言おうとして途中で黙ってしまった。あまりのショックに思考停止したか?


「今のうちに数を減らすぞ!頭脳がフリーズしているうちに倒しきるぞ!」

「おおっ!!」


 力強い返事が方々から返ってくる!みんなやる気だ。この調子で全滅させてやる!


「なりふり構ってなどおれぬ。私に勝つことは出来ぬのだ。」


 ぶつぶつ負け惜しみを言っている。まだ、そんなたわごとを……、


「私に不可能などない。魔術を極めるとはどういうことか、思い知らせてやろう!」

(ズゥン!…ズゥン!…ズゥン!…ズゥン!)


 重々しい音が建物の奥から響いてくる。今さら何が出来るっていうんだ?こけおどしもたいがいにしろ!


「ゴバアアア!」


 建物の奥から何か咆哮が聞こえてきた。何を出してくるんだ?


(ドゴアアアアァン!!)


 建物を破壊しながら、何か巨大な物が飛び出てきた。交戦中だった俺は避けきれずに近場のダイヤ野郎を盾にした。


「ぐわああっ!!」


 その衝撃は凄まじく、俺だけじゃなくダイヤ野郎数体もまとめて吹き飛ばされた。


「邪道だが即興で思いついた。下手に竜の姿を見せぬ方が良かったのではないか?」


 建物の中から姿を現したのは……、なんとダイヤモンドのドラゴンだった!大きさは竜形態のサヨちゃんと同じくらいはあった。


「名付けてダイヤモンド・ドレイク!私が竜如きの姿を借りねばならぬとは、屈辱だ!不本意だ!キッチリその責任は取ってもらうぞ!」
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