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全て出し尽くして、心地良い疲労感にまどろむ。二人でごろんと床に転がって触れたり離れたりのキスを繰り返した。
金烏の指がオレの後ろの穴をくちゅくちゅと抜き差しして、自分で出したものをかき出している。
「出しても出しても出てくる」
「ん、もういいよ。もうちょっと中で金烏を感じたい」
「エロいこと言うなあ、ちんこ勃ってたらブチ犯してる」
「じゃあ元気になったら犯して」
今シたばかりなのにもう次を考えている。なんだか楽しくて仕方なかった。
「なあ、そう言えば金烏は死んだって聞いたんだけど?」
「イブシからだろ? 何て言ってた」
「兄貴は死んだって……あっ」
「そう。紅谷金烏は死んだ。お前の兄貴は死んだんだよ。今は、八多(ヤタ)金烏」
したり顔で言う金烏に、騙されたという怒りは湧かなかった。それよりも、その名前の意味に気付いて嬉しくなる。
「それ、オレの前の名字」
「そうそう。あと、灯もうちの親から離縁されたから八多灯に戻ったぞ」
「えっ、うそ、やばい、結婚じゃん」
「まあ俺のは勝手に名乗ってるだけだけどな」
オレは紅谷家に養子として引き取られたが、少年院に入ったり刑務所に入ったりしたから縁組を解除されたんだろう。
「……この先灯とどうしようか、考えてた。どっかで綻んで、互いに荒れて、でも手放せなかった」
金烏は起き上がり、壁を背もたれに座る。オレはそんな金烏の膝に跨り肩に頭を乗せた。今は少しでも金烏の体温を感じていたい。
優しい喋り声に、まどろみは増していくから、半分夢うつつになりながら聴いた。
「お前気付いたらヤク中になってるんだもの。どうやって薬やめさせるかとか、俺も上の人らと縁切るかとか考えて。結局国家権力に頼ることにして、刑務所送りにしたんだけど」
「うん」
「刑務所で自殺したって聞いて、ほんと冷や汗出たよ。しかも知らない男と一緒に……あの時は本当に後悔した」
「ねえ、オレが死んでたら金烏、どうしてた?」
「あと追ってたよ。つか、首吊ろうとしてた時にイブシがバーン! て扉蹴破ってさ、"あのクソガキ生きてるよ。今死んだら無駄死にも良いところだよ"って教えてくれて、ほんと危機一髪」
「もう二度と、オレの知らないとこで死なないでよ」
「灯もな」
ふふ、とお互い笑い合って、この瞬間が愛おしくてキスをする。
「灯が刑務所から出る時はちゃんと出迎えてやろうと思って。足洗うにはもう死んだ事にするしかないってなって、事故を偽装したんだよ」
「オレ、ちょっと信じたよ」
「つーかまあ、一回マジでイブシに車で轢いてもらったんだけどな」
「ちょいちょい出てくるイブシさんがアグレッシブ過ぎて話に集中出来ないんだけど」
あの人なら意外と平気な顔してマジで轢きそうだし、オレが仮に頼んだら割りと本気で轢かれそう。なんて想像した。
でも今は緑島とどこかで幸せにしてるんだろう。
「助手席に緑島乗っけてたから、あいつマジで死んだと思ってて。アレは爆笑したな。イブシがバラしてないなら、今でも死んだと思ってるぞ」
「あー、確かに緑島はガチなトーンだった」
「だろ? 今度会って驚かしてやりたい」
ケラケラと腹を抱えて笑う様子は子供みたいだった。一頻り笑うと、はあ、と息を吐いてようやく落ち着く。
「笑ったら腹減った。風呂入ったらどっか飯食いに行くか」
「風呂一緒に入ろう」
「クッソ狭いぞ」
「良いじゃん、せっかくだし」
「そうな。あ、ちんこ元気になった」
「あれだけしたのに?」
「しゃーねえ、一発やるか」
「五年分……違うな、出会ってずっと分、溜まってたから大歓迎」
「可愛いこと言うじゃん」
パタン、風呂の扉が閉まる。
気持ち良くて楽しくて、その上こんなに幸せだなんて。嗚呼、なんて最高な人生。
終わり
金烏の指がオレの後ろの穴をくちゅくちゅと抜き差しして、自分で出したものをかき出している。
「出しても出しても出てくる」
「ん、もういいよ。もうちょっと中で金烏を感じたい」
「エロいこと言うなあ、ちんこ勃ってたらブチ犯してる」
「じゃあ元気になったら犯して」
今シたばかりなのにもう次を考えている。なんだか楽しくて仕方なかった。
「なあ、そう言えば金烏は死んだって聞いたんだけど?」
「イブシからだろ? 何て言ってた」
「兄貴は死んだって……あっ」
「そう。紅谷金烏は死んだ。お前の兄貴は死んだんだよ。今は、八多(ヤタ)金烏」
したり顔で言う金烏に、騙されたという怒りは湧かなかった。それよりも、その名前の意味に気付いて嬉しくなる。
「それ、オレの前の名字」
「そうそう。あと、灯もうちの親から離縁されたから八多灯に戻ったぞ」
「えっ、うそ、やばい、結婚じゃん」
「まあ俺のは勝手に名乗ってるだけだけどな」
オレは紅谷家に養子として引き取られたが、少年院に入ったり刑務所に入ったりしたから縁組を解除されたんだろう。
「……この先灯とどうしようか、考えてた。どっかで綻んで、互いに荒れて、でも手放せなかった」
金烏は起き上がり、壁を背もたれに座る。オレはそんな金烏の膝に跨り肩に頭を乗せた。今は少しでも金烏の体温を感じていたい。
優しい喋り声に、まどろみは増していくから、半分夢うつつになりながら聴いた。
「お前気付いたらヤク中になってるんだもの。どうやって薬やめさせるかとか、俺も上の人らと縁切るかとか考えて。結局国家権力に頼ることにして、刑務所送りにしたんだけど」
「うん」
「刑務所で自殺したって聞いて、ほんと冷や汗出たよ。しかも知らない男と一緒に……あの時は本当に後悔した」
「ねえ、オレが死んでたら金烏、どうしてた?」
「あと追ってたよ。つか、首吊ろうとしてた時にイブシがバーン! て扉蹴破ってさ、"あのクソガキ生きてるよ。今死んだら無駄死にも良いところだよ"って教えてくれて、ほんと危機一髪」
「もう二度と、オレの知らないとこで死なないでよ」
「灯もな」
ふふ、とお互い笑い合って、この瞬間が愛おしくてキスをする。
「灯が刑務所から出る時はちゃんと出迎えてやろうと思って。足洗うにはもう死んだ事にするしかないってなって、事故を偽装したんだよ」
「オレ、ちょっと信じたよ」
「つーかまあ、一回マジでイブシに車で轢いてもらったんだけどな」
「ちょいちょい出てくるイブシさんがアグレッシブ過ぎて話に集中出来ないんだけど」
あの人なら意外と平気な顔してマジで轢きそうだし、オレが仮に頼んだら割りと本気で轢かれそう。なんて想像した。
でも今は緑島とどこかで幸せにしてるんだろう。
「助手席に緑島乗っけてたから、あいつマジで死んだと思ってて。アレは爆笑したな。イブシがバラしてないなら、今でも死んだと思ってるぞ」
「あー、確かに緑島はガチなトーンだった」
「だろ? 今度会って驚かしてやりたい」
ケラケラと腹を抱えて笑う様子は子供みたいだった。一頻り笑うと、はあ、と息を吐いてようやく落ち着く。
「笑ったら腹減った。風呂入ったらどっか飯食いに行くか」
「風呂一緒に入ろう」
「クッソ狭いぞ」
「良いじゃん、せっかくだし」
「そうな。あ、ちんこ元気になった」
「あれだけしたのに?」
「しゃーねえ、一発やるか」
「五年分……違うな、出会ってずっと分、溜まってたから大歓迎」
「可愛いこと言うじゃん」
パタン、風呂の扉が閉まる。
気持ち良くて楽しくて、その上こんなに幸せだなんて。嗚呼、なんて最高な人生。
終わり
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