44 / 61
44、真夜中のデート
しおりを挟む
翌日から教会の一室で聖女教育が始まったが、初日はさすがに挙動不審になった。
なにしろ、ここで私は殺されたのだから。
「ポポ様、さっきからソワソワなされているようですが、どうかされましたか」
机をはさんで真向かいに座るサー教皇が、心配そうに私の顔をのぞきこんだ。
「なかなか気持ちがついていかなくて」
私は「ハアー」と深いため息をつく。
「そりゃそうでしょう。
昨日まで市場でお菓子を焼いていたのに、今日からは国の聖女扱いですからな」
教皇は自分の言った言葉に「うん、うん、そりゃそーだ」とコクコクと首を縦にふる。
その仕草は1度目の人生でも、何度も目にしたっけ。
「というかね。
以前私はここで死んだのよ。
ここにいると、ついその時の事を思い出してしまって落ち着かないの」
「ここで死んだ? ポポ様が?」
教皇は目を丸くして、素っとん狂な声をあげる。
そりゃそうよね。
ポロリと本当の事を言ってしまった私がバカだったわ。
「環境が激変したせいで、だいぶお疲れのようですね。
おいたわしいことだ。
私にできる事なら、遠慮なくなんでもおっしゃってください」
教皇は私の手をとり、目にうっすら涙をうかべた。
誰よりも聖女として生きる事の過酷さを知っている教皇は、胸を痛めてくれているのだろう。
「なら1つだけお願いがあります。
私の護衛騎士は一緒に市場からきたレオンにして欲しいのです。
私はレオンがいなければ、気持ちが不安定になって、うまく魔力が発揮できないのです」
「市場にいたとはいえ、彼は元々は王様の護衛騎士。
身元もしっかりと保証されております。
なんの問題もないでしょう。
私におまかせください」
とサー教皇はポンと自分の胸をたたいて、満面の笑みをうかべた。
あれから数か月が流れる。
私は皆が目をむくほど優秀な成績で聖女教育をおえ(さすかに2度目だからね)、無事に聖女認定された。
でレオンは約束どおり、聖女専属護衛騎士となる。
そこまではいいんだけどね。
なぜか1度目より仕事がハードで、すぐに体力を消耗する。
疲労困憊には回復魔法!
なんだけど、レオンのとろけるキスにはかなわない。
けど聖女は王様の物だ。
なかなかイチャイチャできないので、日々欲求不満はたまってゆく。
だから、「魔法に必要な、花びらに浮かぶ夜露の採取をする」と周囲に嘘をついて、2人で真夜中の庭園にでてきた。
「見て!
1つだけ、ものすごく輝いている星があるわ。
あんなにキラキラ光る星を見たのは初めてよ。
とっても奇麗ね」
見上げた夜空を人差し指で指さす。
「オレにはあの星よりポポの方がずーと奇麗に見えるがな」
「もう。レオンたら。
柄にもない事、言っちゃって…」
隣に立つレオンに頬をゆるめたと同時に、唇にキスをされる。
「ちょっとまって、レオン。
いくら夜中だといっても、ここは王宮の中よ。
誰かに見られたらまずいでしょ」
「その時はその時だ。
オレはもう限界にきている」
一瞬、レオンは私から顔を遠ざけた。
「限界って何に?」
「リオンの態度にだ。
アイツはオレの前で、わざとポポになれなれしい態度をとっている。
ポポの肩や腰に手を回したりするのはしょっちゅうだし、昨日はポポの唇にキスしようとした」
「あれは気持ち悪かったわ。
私が大きなクシャミをしたので、まぬがれたけど」
「なあ。ポポ。
このまま2人で王宮をでないか」
レオンはさっきよりも荒々しいキスを、角度をかえて何度もおとしてくる。
「このままだとリオンが無理やりポポを自分の物にしそうで、心配でしかたないんだ」
「大丈夫よ。アイツは私の事は女と思ってないもの。
ただ、ああやってレオンを挑発して楽しんでるだけよ。
私は王宮にちゃんとしたレオンの居場所をつくってあげたいの。
その為なら、リオンのおさわりぐらいへっちゃらよ」
「これは驚いた。オレの事をそんなに考えていてくれたとは」
レオンが「チュッ」と音をたてて、私の額にキスをした時だ。
「バカもん。久々に家へ帰ってきたと思ったら、王都で革命でもおこすつもりなのか!」
すぐそばの茂みの方から、男のどなり声があがる。
「あの声はマッチン宰相?」
「たぶんな」
とっさに身体を離した私達は顔を見合わせた。
なにしろ、ここで私は殺されたのだから。
「ポポ様、さっきからソワソワなされているようですが、どうかされましたか」
机をはさんで真向かいに座るサー教皇が、心配そうに私の顔をのぞきこんだ。
「なかなか気持ちがついていかなくて」
私は「ハアー」と深いため息をつく。
「そりゃそうでしょう。
昨日まで市場でお菓子を焼いていたのに、今日からは国の聖女扱いですからな」
教皇は自分の言った言葉に「うん、うん、そりゃそーだ」とコクコクと首を縦にふる。
その仕草は1度目の人生でも、何度も目にしたっけ。
「というかね。
以前私はここで死んだのよ。
ここにいると、ついその時の事を思い出してしまって落ち着かないの」
「ここで死んだ? ポポ様が?」
教皇は目を丸くして、素っとん狂な声をあげる。
そりゃそうよね。
ポロリと本当の事を言ってしまった私がバカだったわ。
「環境が激変したせいで、だいぶお疲れのようですね。
おいたわしいことだ。
私にできる事なら、遠慮なくなんでもおっしゃってください」
教皇は私の手をとり、目にうっすら涙をうかべた。
誰よりも聖女として生きる事の過酷さを知っている教皇は、胸を痛めてくれているのだろう。
「なら1つだけお願いがあります。
私の護衛騎士は一緒に市場からきたレオンにして欲しいのです。
私はレオンがいなければ、気持ちが不安定になって、うまく魔力が発揮できないのです」
「市場にいたとはいえ、彼は元々は王様の護衛騎士。
身元もしっかりと保証されております。
なんの問題もないでしょう。
私におまかせください」
とサー教皇はポンと自分の胸をたたいて、満面の笑みをうかべた。
あれから数か月が流れる。
私は皆が目をむくほど優秀な成績で聖女教育をおえ(さすかに2度目だからね)、無事に聖女認定された。
でレオンは約束どおり、聖女専属護衛騎士となる。
そこまではいいんだけどね。
なぜか1度目より仕事がハードで、すぐに体力を消耗する。
疲労困憊には回復魔法!
なんだけど、レオンのとろけるキスにはかなわない。
けど聖女は王様の物だ。
なかなかイチャイチャできないので、日々欲求不満はたまってゆく。
だから、「魔法に必要な、花びらに浮かぶ夜露の採取をする」と周囲に嘘をついて、2人で真夜中の庭園にでてきた。
「見て!
1つだけ、ものすごく輝いている星があるわ。
あんなにキラキラ光る星を見たのは初めてよ。
とっても奇麗ね」
見上げた夜空を人差し指で指さす。
「オレにはあの星よりポポの方がずーと奇麗に見えるがな」
「もう。レオンたら。
柄にもない事、言っちゃって…」
隣に立つレオンに頬をゆるめたと同時に、唇にキスをされる。
「ちょっとまって、レオン。
いくら夜中だといっても、ここは王宮の中よ。
誰かに見られたらまずいでしょ」
「その時はその時だ。
オレはもう限界にきている」
一瞬、レオンは私から顔を遠ざけた。
「限界って何に?」
「リオンの態度にだ。
アイツはオレの前で、わざとポポになれなれしい態度をとっている。
ポポの肩や腰に手を回したりするのはしょっちゅうだし、昨日はポポの唇にキスしようとした」
「あれは気持ち悪かったわ。
私が大きなクシャミをしたので、まぬがれたけど」
「なあ。ポポ。
このまま2人で王宮をでないか」
レオンはさっきよりも荒々しいキスを、角度をかえて何度もおとしてくる。
「このままだとリオンが無理やりポポを自分の物にしそうで、心配でしかたないんだ」
「大丈夫よ。アイツは私の事は女と思ってないもの。
ただ、ああやってレオンを挑発して楽しんでるだけよ。
私は王宮にちゃんとしたレオンの居場所をつくってあげたいの。
その為なら、リオンのおさわりぐらいへっちゃらよ」
「これは驚いた。オレの事をそんなに考えていてくれたとは」
レオンが「チュッ」と音をたてて、私の額にキスをした時だ。
「バカもん。久々に家へ帰ってきたと思ったら、王都で革命でもおこすつもりなのか!」
すぐそばの茂みの方から、男のどなり声があがる。
「あの声はマッチン宰相?」
「たぶんな」
とっさに身体を離した私達は顔を見合わせた。
0
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」
5度目の求婚は心の赴くままに
しゃーりん
恋愛
侯爵令息パトリックは過去4回、公爵令嬢ミルフィーナに求婚して断られた。しかも『また来年、求婚してね』と言われ続けて。
そして5度目。18歳になる彼女は求婚を受けるだろう。彼女の中ではそういう筋書きで今まで断ってきたのだから。
しかし、パトリックは年々疑問に感じていた。どうして断られるのに求婚させられるのか、と。
彼女のことを知ろうと毎月誘っても、半分以上は彼女の妹とお茶を飲んで過ごしていた。
悩んだパトリックは5度目の求婚当日、彼女の顔を見て決意をする、というお話です。
異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
【完結】似て非なる双子の結婚
野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。
隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。
そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。
ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。
追放されましたが、私は幸せなのでご心配なく。
cyaru
恋愛
マルスグレット王国には3人の側妃がいる。
ただし、妃と言っても世継ぎを望まれてではなく国政が滞ることがないように執務や政務をするために召し上げられた職業妃。
その側妃の1人だったウェルシェスは追放の刑に処された。
理由は隣国レブレス王国の怒りを買ってしまった事。
しかし、レブレス王国の使者を怒らせたのはカーティスの愛人ライラ。
ライラは平民でただ寵愛を受けるだけ。王妃は追い出すことが出来たけれど側妃にカーティスを取られるのでは?と疑心暗鬼になり3人の側妃を敵視していた。
ライラの失態の責任は、その場にいたウェルシェスが責任を取らされてしまった。
「あの人にも幸せになる権利はあるわ」
ライラの一言でライラに傾倒しているカーティスから王都追放を命じられてしまった。
レブレス王国とは逆にある隣国ハネース王国の伯爵家に嫁いだ叔母の元に身を寄せようと馬車に揺られていたウェルシェスだったが、辺鄙な田舎の村で馬車の車軸が折れてしまった。
直すにも技師もおらず途方に暮れていると声を掛けてくれた男性がいた。
タビュレン子爵家の当主で、丁度唯一の農産物が収穫時期で出向いて来ていたベールジアン・タビュレンだった。
馬車を修理してもらう間、領地の屋敷に招かれたウェルシェスはベールジアンから相談を受ける。
「収穫量が思ったように伸びなくて」
もしかしたら力になれるかも知れないと恩返しのつもりで領地の収穫量倍増計画を立てるのだが、気が付けばベールジアンからの熱い視線が…。
★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。
★11月9日投稿開始、完結は11月11日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる