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2章 新しい暮らし

10、意地悪なアラン

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「オリビア。
 今日のお昼は大きなソーセージとジャガイモの入ったポトフにしない?」

 玄関で学園に向かうルネを見送ったあと、邸の最奥にある図書室へ向かっていたら向こうからペペがやってきた。

「いーわね」

「よかった。
 なぜか急にポトフが食べたくなっちゃてね。
 じゃあ、今から市場へ買い出しに行ってくるわ」

 ペペは手に下げた買い物カゴをブラブラさせて、喜しそうな顔をする。

 その姿はどこから見ても、気のいい平民のお母さんだ。

 自国では公爵夫人だというペペだけど、こんな風に護衛なしで町をぶらついたり、毎日料理をつくったりする生活に憧れていたという。

 ー邸には料理人も侍女おかないー

 これがルネの世話係になるためにアランにだした、たった1つの条件だったそうだ。

 だからこの邸には最低人数の使用人しかいない。

 それは居候の私にとっても、息苦しくなくて有難かった。

「ジャガイモむきは私にやらせてね」

「それは助かるわ。
 さあシロ。出かけるわよ」

「ワン!」

 ペペの後をチョコマカと走るシロもすっかりここの生活になじんだようで、もうオリビアのシロじゃなくてこの邸全員のシロになっている。

「ゆっくりしてきてね」

 ぺぺを見送ると、また図書室へ歩き始めた。

「こないだのテスト、ルネの歴史の点数は赤点だったわね。
 あれじゃあ、ミスキャンパスも遠のくわ。
 なんとかしなくっちゃあ」

 顎に手を添え独り言を吐きながら歩いていると、背中からアランの声がする。

「おはよう、オリビア。
 どうやら朝からルネの事で頭がいっぱいのようだな」

「ええ。ミスキャンパスに選ばれるには成績も重要なのにルネときたら」

 眉をよせてアランの顔を見上げた。

 私とアランの身長差はかなりあるので、こんな風に立ち話をすると首がつかれるわ。

「けど去年のミスキャンパスはマリーだろ。
 あのマリーが優秀だとはとても思えないけれどな」

「あの子はね。
 色々なコネを使って、成績を底上げしてもらっているの」

「なーるほど。
 オリビアならそんな汚い手を使う必要もないだろうに」

「私は顔でダメよ。
 毎年1票もはいらないんだから、もう笑うしかないわ。
 でね。
 『ほんと惨めね』って、マリーにバカにされるのが恒例行事になってるのよ」

「それは信じられないな。
 僕なら絶対アナタに投票するのに」

 アランが気の毒そうな声をだして私を見下げた時、バチンと目があう。

「ほーらほーら、またでたわ。
 哀れな人をほっとけない病が」

 高鳴る胸の鼓動を聞かれないように大げさな笑い声をたてると、いきなりアランに手首を強くつかまれて黙り込んだ。

「よく聞いてくれ。
 僕はアナタを哀れに思った事は1度もない」

「なら、どうして私なんかにこんなに優しくしてくれるの」

「それはだな」

「それは」

 アランの言葉を繰り返しながら、心のどこかで何かを期待していた。

「アナタが僕と同じだからだ」

「え?
 意味がわからないわ」

 がっかりしてプイと横をむいてアランの手をふりほどくと、スタスタと足早に図書館へむかう。

「おい。待ってくれよ。
 ひょっとしてオリビア嬢はスネているのか?」

 後ろからクスクス笑いながらアランが追ってくるけど、ここはとことん無視してやる。

 まさかアランがこんな意地悪な男だとわ思わなかったわよ。

 
 

 
 



 
 



 
 
 

 
 
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