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2章 新しい暮らし

8、アランへの想い

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「オリビア! よく言ってくれた。
 ぜひルネに学園での居場所をつくってくれ」

 声をはったアランが、驚いて立ち上がった私の手をヒシッと力強く握る。

「このさいマリーって子をボコボコにしてやりましょう。
 その為なら、私はなんでも協力いたしますわ。
 今やルネは娘みたいなもんですからね」

「ペペ伯母様。
 なんだかちょっと怖いです」

 アランの反対側からグイと顔をよせてくる小太りしたペペの迫力は冷や汗ものだ。

「これって2人で私達の話を立ち聞きしてたってわけね。許せないわ」

 手で合図してルネと同じテーブルに座ってもらった2人を、交互に睨みつけた。

「悪かった。
 だけど毎日のように身体のどこかに傷をつけて学園から帰ってくるルネが心配でしかたなくて。
 つい……」

「私もアランと同じよ。
 ルネは私達には何も話さないけど、オリビアになら本当の事をうちわけるかもしれないと思って……。
 つい……」

 2人は同時にペコリと頭を下げる。

「ちょと怒ったフリをしてみただけよ。だから2人とも顔を上げてちょうだい。
 ルネは自分の事をこんなに心配してくる家族がいて幸せね。
 とても羨ましいわ」

「なにを言う。僕はルネと同じぐらいオリビアの事も大切に思っているんだよ。
 だから、そんな淋しそうな顔をしないで」

  優しい目をしたアランが私の肩をグイと抱きよせると耳元でソッとささやいた。

 とたんに頬が燃えるように熱くなる。

「アランの言う通りよ。
 私だってオリビアの事も娘のように思ってるんだから。
 控え目で賢い、私とは正反対の自慢の娘だわ」

「ペペ叔母様ありがとうございます」

 ぺぺの言葉にジインと胸が熱くなって、泣きそうになった時だった。

「私はオリビアを姉のように思ってるんだから」
とルネが声をはりあげる。

「皆、ありがとう。こんな可愛げのない私を家族同然に思ってくれていたなんて、すごく感動したわ」

 目尻にたまった涙を人差し指でソッとぬぐって、3人に頭を下げた。

「それは私のセリフよ。
 施設にいたひねくれ者の私が、いつのまにかこんな素晴らしい家族をもてたんだもん」

「ルネは施設にいたの?」

 私が驚いた声をあげると、ルネはコクンとうなずく。

「ええ。
 父がいない私は幼い時に母を亡くして、長い間施設にいたの。
 そんな私を異母兄になるアランがひきとってくれたの」

「異母兄?まあ、そうだったの」

 なんとなく訳ありの兄妹だと思っていたが、そういう事だったのね。

 もっと2人に関して聞きたい事はあるのだけど、こちらから聞くのは失礼でしょ。私はだまりこんだ。


「私のお母様はね。妻のいるハミルトン人のお父様を好きになって、内緒で私を生んだの。
 けどお父様の死後、私の存在を知ったお兄様が私の面倒をみてくれているの」

「まあ。それでアランの事を哀れな人をほっとけない病、だなんて呼んでたのね」

「ええ。そうよ」

 ルネは恥ずかしそうに微笑んだ。

それにしても、アランってやる事が凄すぎるわ。

 こんな豪邸を簡単に用意するなんて……。

 きっとハミルトン国の大貴族に違いないわ。だとしたら、居候の私なんかがより添える相手じゃない。

「面白い。オリビアが驚いて固まっているぞ」
 
 悪戯っぽい目をしたアランが私の鼻の頭を指でツンツンと弾く。

 その瞬間身体に電流が走り、ハッキリ自分の気持ちに気がついてしまう。

 たとえアランが夜空に輝く星のように一生手の届かない存在だとしても、私は彼をずーと見つめていたいようだ。




















 

 

 

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