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1章 可愛いは無敵

17、マリーへの一撃

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 約束どおり、今日で私の学園生活はおわるのだ。

「今からコレを学園長に叩きつけてやるからね。
 その後、シロは正式に無罪放免になるのよ」

 昨夜書いた退学届けを大事に胸にだいたまま、荘厳な校門を見上げる。

 私は王太子の婚約者という理由だけで選ばれたお飾り生徒会長だったど、学園内に身分差を持ち込む事を、少しでも阻止しようと務めた。

 どんな人物かよりも、どこで生まれたかの方が重要だなんていう考えに、ずーと違和感を抱いていたからだ。

 結果、すべての生徒に制服を着用させる事はできたし。
(それまでは貴族は私服で平民は制服だったの)

 2つあった校門(貴族用と平民用に分けられていた)も、1つにした。

 けど、明日から生徒会長はあのマリー……。

「ごめん。
 学園はまた元通りになるわ」

 平民生徒達の顔を思いうかべると、深くて長いため息をついた。

 彼らと十分に話せなかったのが、今でもとても残念に思う。

 なぜかしら。

 とても大きな損をしたような気分なの。

 それは私、個人の問題だけに限らないはずだわ。

 身分にばかりこだわり過ぎるのは、この国にとっても残念な事なのよ。

「今さら、私が心配する事もないけどね。
 さあ。シロ。
 学園長の所へ行くわよ」

 足元の小さな親友に声をかけて校門をくぐった時だった。

「ちょっと、そこの平民達。
 アンタ達は明日からこの門は使えないのよ。
 明日からは裏門から登校しなさい!」

 マリーが声をはりあげていたのだ。

 そして、よせばいいのに気がついた時はマリーをとがめていた。

「アンタ達って言葉はひどすぎるでしょ。
 ちゃんと王太子妃教育を受けていたら、その位わかるでしょ」

「王太子の元婚約者のお姉様、ご忠告ありがとうございまーす。
 けどマリーはね。
 古い王太子妃像には縛られたくないのよ」

 マリーがフンと顎をしゃくり上げたと同時に、取り巻き連が野卑な笑い声をたてる。

 皆がまるで舞踏会にでも参加するような装いなのは、とても見苦しい。

「けど、マリー。
 そんなワッカで膨らませたドレスは学園生活には不用でしょ」

「いちいちうるさいわね。
 お姉様には関係ないでしょ」
とマリーが髪の毛を逆立てた時だった。

 私達の前をハッとするような美少女が通りすぎてゆく。

「あれが噂のルネ嬢か。
 たしかにすっげえな」

 私の退学を見届ける為に学園に来ていたヒョイ様が、ゴクリとツバを飲みこんだ。

 とたんにマリーが額に何本もの青筋をたてて、黄色い声で叫びだした。

 「もうー。
 ヒョイ様ったらあ!
 ルネなんかより、マリーが可愛いに決まってるでしょ!」

 超音波級の甲高い声が耳にささって気持ち悪い。

 両耳で耳をふさごうとした時、ルネがポツリと告げた。

「マリー様の未来は破滅する」
と。
 
「なんですってえ!!!
 平民の分際でマリーを侮辱するなんて、正気じゃないわね。
 皆、ルネをいためつけてやりなさい!」

「まちなさい、マリー。
 腹がたったなら、自分でやるべきでしょ。
 こんな風にね」

 取り巻き連中がルネの方へ向かうよりも早く、私はマリーの頬を力まかせにぶった。

 パシーン、という音が周囲に響きわがってゆく。

 あーあ。すっきりしたわ。


 

 
 

 


 
 
 
 
 

 
 
 



 




 

 

 



 
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