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1章 可愛いは無敵

15、喜んで退学します

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「実はな。
 シロの為に最新のギロチン台をつくらせたんだ。
 考案した博士によると、それは瞬時に首をはねるらしい。
 なのでシロは少しの痛みも感じる間もないだろう。
 どうだ。
 バカ犬さえ思いやる私の優しさに感動したか」

 ヒョイ様がグイと胸をはる。

 けどこの状況だ。

 バカ王子のご機嫌をとる気分になれるわけない。

「シロの首を切るだなんて。
 そんな恐ろしい事をよくもまあ考えられたわね」

 ヒョイ様を無視してマリーに詰め寄る。

「私がマリーの課題をすれば、シロの事をヒョイ様にお願いしてくれるはずだったでしょ!」

 「そーよ。
 けどマリーの言う事なんかヒョイ様は全く聞いてくれなかったのよ。
 そうとうお姉様はヒョイ様に嫌われていたのね。
 だからさ。
 しかたなかったのよ!」

 マリーは私に負けないぐらいの大声で叫んだ。

「どうせ最初からシロを救う気なんかなかったくせに」

「違うってばあ。
 どうしたらマリーを信じてくれるのかしら。
 あのねー」
とマリーが言葉を続けようとするのをヒョイ様がさえぎった。

「ちょっと待ってくれ。
 私には2人の話がよくみえない。
 そもそも、私はマリーにシロの事を頼まれた覚えは1度もないぞ」

「キャアア。
 不思議がるヒョイ様って超かっわいい」

 マリーは黄色い声をあげると、不思議そうに首を傾げるヒョイ様の胸に勢いよくとびこんでゆく。

「ヒョイ様。お願いだからだまされないでください。
 マリーは女を使って、話をすり替えようとしてるだけなんですから」

「うん? オリビア。それはどういう意味なんだ」

 ヒョイ様は子供のように目をパチクリさせながら、私とマリーの顔を交互に見る。

 もううー。言葉通りでしょ。

 これだから、脳味噌まで筋肉でできているような体育会男子は嫌いなのよ。

 イライラして唇をかんだ時だった。

「オリビア。どうしてそんなキツイ顔をするんだ」

 ヒョイ様がげんなりした表情にかわったのは。

「気にしないで。ヒョイ様。
 お姉様は私に嫉妬して、わけのわからないケチをつけているだけだから。
 それより、マリーからヒョイ様にお願いがあるんですけれど」

「なんだ。なんでも言ってみろ」

「シロの事なんですけれど。
 やっぱりギロチン刑は可哀そうかなって思うの。
 だから止めにしましょうよー」

「まー。マリーがいいなら私はそれでいいが。
 もともとはマリーが言いだした事だしな」

「よかったあ。
 でも、ただ許すだけじゃ、ヒョイ様のメンツがたたないでしょ。
 それでねー。
 マリー、考えたんだけどさ。
 シロを許すかわりにお姉様には学園を退学してもらう。
 なーんてどーかしら。
 ウフ」

「なーるほどな。
 よし、それにしよう」

 見苦しいほどマリーとイチャイチャしていたヒョイ様が、突然キリッとした顔を私に向けて言う。

「オリビア。
 シロの処刑をやめて欲しかったら学園をやめろ」
と。

「わかりました。
 シロの命が助かるなら喜んで退学するわ」

 私はなぜか偉そうに両足を開き、胸の前で腕をくんで顎をしゃくりあげた。

 我ながら、可愛げがない態度だったと後で猛烈に反省したけど。

 
 



 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 





 
 
 
 













 


 
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