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1章 可愛いは無敵

9、似た者同士?

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「ありがとうございます。
 それとさきほどのお話には驚きました。
 もしかしたら、この子は王様に飼われていたのかもしれないのね」

 お父様とマリーが去った後、貴公子に深く頭をさげると彼は顔を真っ赤にして吹きだしたのだ。

「プッ。このチビが王様の犬だって!
 ない。ない。それは絶対にない」

 片手で口元をおさえ、もう片方の手をせわしく左右にふる。

「でも、さっきあなたは……」

「すまない。
 あれは嘘なんだ」

「どうして、あんな嘘をついたの?」

 貴公子のくだけた態度にため口になってしまったけど、見たところ年も変わらないようだし、いいわよね。

「そんな事もわからないのか?
 このチビを助けるために決まってるだろう」

 貴公子は悪戯っぽい目をすると、私の耳元でささやいた。

「しっかりしてるようだけど、案外鈍感なんだな」

「まあ失礼ね、鈍感だなんて」

 プウッと頬をふくらませる。

「妹はね。
 可愛い顔をしてるけど、1度言い出したら何があろうときかない頑固者なの。
 もしあなたの嘘がなかったら、今頃この子は狼の餌になっていたわ」
 
「あの妹が可愛いって?」

「そうよ。
 現にこのパーティーに招待されている人達も、皆、マリーのトリコになってるわ」

「皆じゃない。
 僕はああいうタイプは苦手だ」

「なんて言いながら、本心はどうかしら」

 私は肩をすくめてクスリと笑った。

『マリーみたいなタイプは苦手』と言ってたくせに、結局はマリーを好きになってしまう。

 そんな男の人をたくさん知っているから。

「僕は妹の話なんかより、もっと君の話が聞きたいな。
 さっきチラッと耳にしたけど、本当に王太子と婚約してるのかい?」

「残念ながらそうなの」
と本音をポロリともらして、あわてて口に手をそえる。

「残念だなんて不敬だわよね。
 お願い。
 さっきの言葉は忘れてちょうだい」

「貴族の令嬢なら誰もが王太子妃の座を狙ってるはずだろ?
 ひょとして他に好きな人でもいるのか?」

「いません!
 私はただ……」

「ただ、何?」

 貴公子はそう言うと、真剣な目をして私の顔をのぞきこんだ。

 その瞳があまりに美しいから、私の心臓の鼓動が激しく高鳴る。

「自分らしく生きたいだけ。
 王太子妃教育をうけて気がついたの。
 王太子妃になると、いっぱい自分を殺さないといけない事に」

 顔をほてらせて早口でまくしたてると、貴公子は沈黙したままだった。

 そして、しばらくして。

「僕と全く同じ事を考えている女性がいたとは面白すぎる」
と破顔した。

「たしか名前はオリビアだったね。
 どうやら僕たちは似た者同士のようだ。
 1度ゆっくり話が」
と貴公子が言いかけた時だった。

 シロがモゾモゾともがいて、私の腕の中をすり抜けていったのは。

「またパーティーをメチャクチャにしたら、こんどこそオワリだわ」

 私は貴公子に背をむけて夢中でシロを追った。

 そして、シロを捕まえて戻ってきた時は貴公子の姿は消えていたのだ。

 あまりに残念すぎて、一筋の涙がツーと頬をつたった。

 さっき会ったばかりなのに。

 一体なぜ?

 その答えはわからないけれど、私はそれからあの貴公子を「プラチナ王子」と呼んでまだ忘れられないでいる。
















































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