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1章 可愛いは無敵
5、バカはそっちでしょ
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「キャイーン」
後ろ足に弾をうけたシロが、床に転がって悲しそうな声をあげる。
「シロは私の為に怒ってくれているのね」
半泣き状態でその場にペタリと座りこむ私の前で、お父様はシロを何度も蹴りまわす。
「ノラ犬の分際でフザケやがって」
「クーン。キャイン」
「お父様、やめて!」
「ふん。いい気味だわ。
もとはと言えば、薄汚いノラ犬を飼いたがったお姉様がいけないのよ。
シロもね。
こんな場違いな公爵家にいるより、貧民街でゴミをあさっていた方が幸せだったはずよ」
嘲るような表情をしたマリーが私を見下ろす。
「マリーの言う通りだ。
未来の王太子妃のワガママだから、しかたなく邸でシロを飼っていたがな」
「けどもうお姉様は王太子の婚約者じゃないんだもん。
こんな無礼な犬、サッサッと処分しちゃいましょうよー」
マリーはそう言うと、「ウフ」と身体をくねらせた。
「お父様にまで女を使うなんて、本当にイヤらしい子ね」
マリーをにらみスクッと立ち上がった時だ。
「まああああ。ビックリしたわ。
マリーにむかってそんな口をたたくなんて。
あなたはもう、この邸になんの利益ももたらさないムダ飯食いよ。
それでも、邸にいたいのならその高慢な態度を改めなさい」
背後から継母ネーネの声が聞こえてくる。
透けるような肌をしたネーネは、舞踏会にいくようなパックリと胸元の開いたドレスを身に着けていた。
(装いにもTPOがあるのよ。
相変わらず常識知らずね)
マリーと同じ色の髪と瞳をもつネーネは、結婚前は王都の人気娼婦だった。
ネーネに夢中になったお父様は、ネーネを知人の貴族の養女にして妻にしたのだ。
最初だけ私を大切にする振りをしていたネーネだけど、マリーが生まれてからはそんな猿芝居もピタリとやめる。
超絶可愛いマリーにメロメロになったお父様の眼中に、私の存在がなくなってしまったからだ。
そして、目障りな私は「未来の王太子妃」という唯一の存在価値まで失った。
ネーネは言いたい放題だ。
「ムダ飯食いか。たしかにそうかもしれん。
マリーが嫁いだら、玉の輿にのれそうな娘を養女にした方が邸の為になりそうだな」
お父様が足をとめ胸の前で両手をくんで首を傾げた瞬間、シロが脱兎のように逃げていく。
「アナタ。それはとてもいいアイデアね。
それなら、うんと可愛い子を娼館からみつくろってくるわ」
「お母様がマリーより可愛い子を見つけてきたら、マリースネちゃうからね」
「心配するな。
マリーより可愛い子がこの世にいるはずないだろ」
「もうー。ヒョイ様ったらあ」
マリーの甘えた声に、
「ムシズが走るわね」
と本音をこぼすと、すぐにヒョイ様が声を荒げた。
「その口の利き方はなんだ!
オマエの犬は私に不敬を働いたのだぞ。
このまま無事におわるとは思うなよ。
さてと。
そろそろ城へもどるとするか。
バカ犬の処遇はおって通達する」
言っときますけど、バカはシロじゃなくてそっちでしょ。
後ろ足に弾をうけたシロが、床に転がって悲しそうな声をあげる。
「シロは私の為に怒ってくれているのね」
半泣き状態でその場にペタリと座りこむ私の前で、お父様はシロを何度も蹴りまわす。
「ノラ犬の分際でフザケやがって」
「クーン。キャイン」
「お父様、やめて!」
「ふん。いい気味だわ。
もとはと言えば、薄汚いノラ犬を飼いたがったお姉様がいけないのよ。
シロもね。
こんな場違いな公爵家にいるより、貧民街でゴミをあさっていた方が幸せだったはずよ」
嘲るような表情をしたマリーが私を見下ろす。
「マリーの言う通りだ。
未来の王太子妃のワガママだから、しかたなく邸でシロを飼っていたがな」
「けどもうお姉様は王太子の婚約者じゃないんだもん。
こんな無礼な犬、サッサッと処分しちゃいましょうよー」
マリーはそう言うと、「ウフ」と身体をくねらせた。
「お父様にまで女を使うなんて、本当にイヤらしい子ね」
マリーをにらみスクッと立ち上がった時だ。
「まああああ。ビックリしたわ。
マリーにむかってそんな口をたたくなんて。
あなたはもう、この邸になんの利益ももたらさないムダ飯食いよ。
それでも、邸にいたいのならその高慢な態度を改めなさい」
背後から継母ネーネの声が聞こえてくる。
透けるような肌をしたネーネは、舞踏会にいくようなパックリと胸元の開いたドレスを身に着けていた。
(装いにもTPOがあるのよ。
相変わらず常識知らずね)
マリーと同じ色の髪と瞳をもつネーネは、結婚前は王都の人気娼婦だった。
ネーネに夢中になったお父様は、ネーネを知人の貴族の養女にして妻にしたのだ。
最初だけ私を大切にする振りをしていたネーネだけど、マリーが生まれてからはそんな猿芝居もピタリとやめる。
超絶可愛いマリーにメロメロになったお父様の眼中に、私の存在がなくなってしまったからだ。
そして、目障りな私は「未来の王太子妃」という唯一の存在価値まで失った。
ネーネは言いたい放題だ。
「ムダ飯食いか。たしかにそうかもしれん。
マリーが嫁いだら、玉の輿にのれそうな娘を養女にした方が邸の為になりそうだな」
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「アナタ。それはとてもいいアイデアね。
それなら、うんと可愛い子を娼館からみつくろってくるわ」
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「心配するな。
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