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26、虹色のバルーン ブランチ視点

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「どうして邸を出たことがわかったの?
 どうして私をハリス君じゃなくてアイリーンって呼ぶの?
 どうしてそんなに優しくしてくれるの?
 どうしてブランチさんがここにいるの?」

 アイリーンは、弱々しい声で矢継ぎばやに質問をしてくる。

 そして、私の返事を待たずにポロポロと涙をこぼしたのだ。

「どうしてかと言うと、私の前世はアイリーンのご先祖様だからさ」

 そう言って、不思議そうに目をパチクリさせるアイリーンの頭をゆっくりとなでる。

「初めてハリス君に出会った時、雷にうたれたような衝撃が身体中をはしった。
 と、同時に前世での記憶と魔力が私によみがえったんだよ。
 世の中には不思議な事があるもんだ。
 一体ハリス君って何者なのか。
 ひょっとしたら、希代の魔法使いか何かなんだろうか。
 ハリス君の事が気になった私は、探偵にたのんで色々と調べてもらった。
 結果、わかったんだよ。
 実はハリス君はアイリーンというリーフ伯爵家の長女だってことが。
 探偵の報告書に書かれたアイリーンは、とても評判の悪い子だった。
 けど、私はどうしてもそれを信じられなっくて、本当の事が知りたくなったんだ。
 なぜって、アイリーンは大切な子孫だからね」 

 バルーンの中に備えられた椅子に2人で腰かけて、すぐには信じがたい真実をアイリーンにうちわけたのだ。

「私の事が大切って本当なの」

 はにかんだ顔をしたアイリーンはコクンと首を傾けた。

「え? 確認したいのはソコなんだ。
 前世の記憶が戻った事じゃなくて。
 なるほど。
 アイリーンには、そっちの方が不思議に聞こえるってことなのか」

 ちょっと驚いたが、はっきりとアイリーンに伝える。

「本当だよ」

 このままいくとリーフ伯爵家はマリーンが継ぐことになりそうだ。 

 けど、それはリーフ家の終わりの始まりだ。 

 魔法の鏡を通じて観察したマリーンには当主としての品格、魔力、すべての物が欠けていたから。

 逆に、アイリーンには当主として必要な物がすべてそろっているようだ。

 リーフ伯爵家の末永い繁栄のために、どうしてもアイリーンに家を継がせたい。

 その強い想いが誰かに伝わったのだろうか。

 また不思議な事が私におこった。

 リトルドリームで本を読んでいると、空から1枚の栞がハラハラと舞い落ちてきたのだ。

 開いたページに落ちた栞を手にして、顔をひきつらせた。

ー邸を出たアイリーンが、行き場を失って空を漂っているー
と栞に書かれていたからだ。

 私は目を閉じ、胸の前で両手をあわせると呪文を唱えた。

 虹色のバルーンを用意するために。




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