家族

葉月さん

文字の大きさ
上 下
23 / 25

由奈さん

しおりを挟む
私は手に取ったアルバムをまじまじと見つめた。
「どうしてここに…」
どうしても気になってしまい、私はアルバムを開いた。
やっぱり、写真たちは由奈さんや芹那さんのものではなく、私のものだった。私と、家族の。おばあちゃんにもらったのなら説明がつく。でも、どうしてこんなところに隠してあったのだろう。どういうこと?

「お母さん…お姉ちゃん…お父さん…」
すでに他界している家族。写真に映る彼女らを見つめる。ぎゅっとアルバムを抱きしめる。由奈さんに聞きに行こう。どうしてこのアルバムを持っていたのか。
私は図書室を後にした。本の代わりにアルバムを手にして。

「由奈さんを探さなくちゃ」
由奈さんの部屋へ向かう。でも、ノックしても返事がなかった。まだリビングにいるのだろうか。いや。確か私たちと一緒にリビングを出たはずだ。なんだか悪い予感がして、無意識に足早になった。
リビングまでの廊下で、人影を見つけた。その人影は、私の気配を感じて素早く振り返った。

「咲良さん?」
「すみれさん!!」
咲良さんの様子は普通ではなかった。明らかにおかしかった。

「どうしたんですか?」
咲良さんの視線を辿る。すると、そこには。

「…由奈さん!!」
彼女は、意識を失っていた。ぐったりとした様子で倒れ込んでいた。
「急に倒れたんです。今、レミお嬢様が救急車を呼んでいます。でも私どうすればいいかわからなくて」
信じられない。あんなに明るくて元気だった由奈さんが。

「お母さん…!!」
その姿はお母さんと重なった。もう、誰にも死んでほしくない。なのに、私は無力だ。こうして目の前で人が倒れていても、何もできっこない。私には、誰も救えない。私は思わず拳を握りしめた。爪が肉に食い込んだ。血が滲むような感覚がした。その手に、誰かの手が重なった。

「由奈さんは死なないわよ。死なせない。信じて」
レミだった。その姿は、もうあの頃の彼女ではないようだった。私も、信じなきゃ。由奈さんを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ある神父の恋

真守 輪
ライト文芸
大人の俺だが、イマジナリーフレンド(架空の友人)がいる。 そんな俺に、彼らはある予言をする。 それは「神父になること」と「恋をすること」 神父になりたいと思った時から、俺は、生涯独身でいるつもりだった。だからこそ、神学校に入る前に恋人とは別れたのだ。 そんな俺のところへ、人見知りの美しい少女が現れた。 何気なく俺が言ったことで、彼女は過敏に反応して、耳まで赤く染まる。 なんてことだ。 これでは、俺が小さな女の子に手出しする悪いおじさんみたいじゃないか。

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

三度目の庄司

西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。 小学校に入学する前、両親が離婚した。 中学校に入学する前、両親が再婚した。 両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。 名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。 有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。 健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。

雪町フォトグラフ

涼雨 零音(すずさめ れいん)
ライト文芸
北海道上川郡東川町で暮らす高校生の深雪(みゆき)が写真甲子園の本戦出場を目指して奮闘する物語。 メンバーを集めるのに奔走し、写真の腕を磨くのに精進し、数々の問題に直面し、そのたびに沸き上がる名前のわからない感情に翻弄されながら成長していく姿を瑞々しく描いた青春小説。 ※表紙の絵は画家の勅使河原 優さん(@M4Teshigawara)に描いていただきました。

タイムトラベル同好会

小松広和
ライト文芸
とある有名私立高校にあるタイムトラベル同好会。その名の通りタイムマシンを制作して過去に行くのが目的のクラブだ。だが、なぜか誰も俺のこの壮大なる夢を理解する者がいない。あえて言えば幼なじみの胡桃が付き合ってくれるくらいか。あっ、いやこれは彼女として付き合うという意味では決してない。胡桃はただの幼なじみだ。誤解をしないようにしてくれ。俺と胡桃の平凡な日常のはずが突然・・・・。 気になる方はぜひ読んでみてください。SFっぽい恋愛っぽいストーリーです。よろしくお願いします。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

差し伸べられなかった手で空を覆った

楠富 つかさ
ライト文芸
 地方都市、空の宮市の公立高校で主人公・猪俣愛弥は、美人だが少々ナルシストで物言いが哲学的なクラスメイト・卯花彩瑛と出逢う。コミュ障で馴染めない愛弥と、周囲を寄せ付けない彩瑛は次第に惹かれていくが……。  生きることを見つめ直す少女たちが過ごす青春の十二ヵ月。

40歳を過ぎても女性の手を繋いだことのない男性を私が守るのですか!?

鈴木トモヒロ
ライト文芸
実際にTVに出た人を見て、小説を書こうと思いました。 60代の男性。 愛した人は、若く病で亡くなったそうだ。 それ以降、その1人の女性だけを愛して時を過ごす。 その姿に少し感動し、光を当てたかった。 純粋に1人の女性を愛し続ける男性を少なからず私は知っています。 また、結婚したくても出来なかった男性の話も聞いたことがあります。 フィクションとして 「40歳を過ぎても女性の手を繋いだことのない男性を私が守るのですか!?」を書いてみたいと思いました。 若い女性を主人公に、男性とは違う視点を想像しながら文章を書いてみたいと思います。 どんなストーリーになるかは... わたしも楽しみなところです。

処理中です...