家族

葉月さん

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ルナ

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「私は、咲夜ではありません」
「…え?」

「私は、咲夜ではない。咲良…双子の、妹なんです」
みんな、驚きを隠せなかった。
「咲…良?」
「はい」
レミが、目を見開いた。

「お嬢様、生きてください。芹那さんの分まで」
咲良さんが優しくいった。しかし、レミから出た声はそれとは正反対だった。

「ふざけないで!!」
怒鳴り声があたりに響く。レミがフェンスに手をかけた。
「あんたの姉のせいで、芹那は死んだのよ!!」
ポロポロとこぼれ落ちる涙。そこに。

「いい加減にして!」
叫んだのは、ルナちゃんだった。
「やめてよ。咲夜さんのせいにするの。お姉ちゃんは今、芹那お姉ちゃんと同じことをしようとしてるんだよ。大好きな人を追いかけようとしてる。それでお姉ちゃんが自殺したら悪いのは芹那お姉ちゃんなの?」
ルナちゃんが問いかけた。
「違う」
「なら、昨夜さんは悪くない。自殺はいいこととは言えないかもしれないけど」
レミが黙った。

「生きて」
ルナちゃんが歩み寄り、レミの手を取った。レミはその手を、
「やめて」
振り払った。

「私は死ぬ。今ここで」
冷たい言葉を放つレミ。
「レミ」
私はレミにそっと声をかけた。
「たいせつな人を失ったのは、貴方だけじゃない。由奈さんも、咲良さんも、ルナちゃんも、私も。みんな、誰かを失った。だから、私たちは、レミのそばにいるから。ずっと寄り添うから」
レミは私から目線を外し、そっぽを向いた。
「私は貴方たちみたいに強くない」
その言葉に、ルナちゃんが。
「私は…」
涙声だった。ルナちゃんは、涙をこぼしていた。

「私だって、強くなんてない。お母さんとお父さんを失った時も、芹那お姉ちゃんを失った時も、すごく苦しかった。平気なわけ、ないよ。何度も泣いた。そして、ようやくなんとか笑えるようになった。なのに、なんでお姉ちゃんまで私の前から消えようとするの?なんでみんな私から離れていくの?私が何をしたっていうの?」
みんなの前ではずっと笑っているルナちゃんの本音だった。大粒の涙が彼女の頬を伝う。きっと、ずっと1人で耐えてきたのだろう。誰にも何もいえず、心配をかけられず。
「…」
レミは、無言でルナに近寄った。そして。
「ごめんね」
ルナちゃんのほおを伝う涙をレミが手で掬った。
「もう、泣かなくていいよ。お姉ちゃんが、一緒だからね」
ルナちゃんが、レミを抱きしめた。2人とも、泣いていた。
 わたしは咲良さんと顔を見合わせ、小さく笑って涙を拭った。
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