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暗闇
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柔らかいベッドに寝転び、私は芹那さんのことについて考えていた。芹那さんは、明るくて話しやすい方だった。いじめられそうには見えないタイプだ。でも、そういうタイプこそいじめられやすいのかもしれないけど。もしくは、他のこと?自殺した理由は何?レミさんとの繋がりは?レミさんが引きこもった理由は芹那さんの自殺?そう言えば、レミさんはゲームが好きだと言っていたな。誘ってみる価値はありそうだ。
私は早速ルナちゃんにゲームを借り、レミさんの部屋へ向かっていった。
レミさんの部屋の扉をノックすると、相変わらずなレミさんが出てきた。
「何のよう?」
「ゲームしない?好きなんだよね?」
「誰に聞いたの?」
本当は、芹那さんだけど。いうわけにはいかないので私は適当に誤魔化す。
「ルナちゃん。」
「そう。」
そこで沈黙が訪れた。会話が続かない。
「やろうよ。」
「嫌よ。」
「いいじゃない。」
「暇じゃないの。」
埒が開かない。仕方がない、と思った私はあの人の名前を口にする。
「芹那さんと、よくやっていたんでしょう。」
レミさんの目つきが変わった。やはり。芹那さんの名前を出すと、レミさんの反応は変わる。
「あなたは、芹那を知らないでしょう?軽々しく名前を出さないで。」
怒っていた。でも、それではいけない。
「あったこと、あるよ。」
猫だけどね。それを知らないレミさんは本気で驚く。
「なんで。」
「いい加減、乗り越えて。」
強く、訴えかける。芹那さんが望んでいることだ。芹那さんの代わりに、私が叶えなくちゃ。
「あなたは、部外者でしょう?放って置いて。」
「私はもう、部外者じゃないよ。家族なの。たとえ、血が繋がっていなくてもね。放って置けると思う?」
レミさんは叫ぶ。
「放っておいて。大体、あなたはここにきたばかりじゃない。」
「それでも、だよ。それでも。それにね、私だけじゃない。由奈さんも、ルナちゃんも、乗り越えてほしいって願ってる。由奈さんに頼まれたの。レミをお願い、ってね。」
そう。私は託されたのだ。
「五月蝿い!私の気持ちも知らないくせに!」
「そうだね。わかるわけないよ。」
「それなら...!」
関わらないで、と言いたいのだろう。でも、そう言うわけにはいかない。芹那さんの想いを無視するわけにはいかないのだ。だから。
「私が言いたいのはね、教えて欲しいってことなの。レミさんは、私が何も知らないことを責めた。無知は罪。そうね。でも、あなたは私に伝えようとはしなかった。私は、あなたのことが知りたいの...!だって、私はあなたの家族なんだから。」
レミさんは、何も言わなかった。しばらくの間、私たちの間には沈黙が流れた。
「ねえ。」
最初に沈黙を破ったのはレミさんの方だった。
「私も、あなたのことが知りたい。私のことが知りたいのなら、先にはなして。どうしてあなたは、この家にきたの?」
意外な質問だった。レミさんが私に興味を持ってくれた。嬉しくて、意気揚々と口を開いた。
「私、は...。」
話始めようとした。でも、何故かうまく先が続けられない。どうして。言葉が詰まる。喉に引っかかったまま出てこない。辛いんだ、話すのが。そう気付くには少し時間を要した。
「すみれさん。」
レミさんが私の名を呼んだ。
「私は、あなたの事情を知っている。由奈さんから、全て聞いている。辛い思いをしていることも。ねえ、話すのは辛いでしょう?あなたが私に求めたことは、そういうことなんだよ。」
「...。」
何も、返せなかった。自分が自分のことは話せなかったことに、驚いていた。そして何よりも、私はレミさんを傷つけてしまっていた、その事実を飲み込むことができなかった。私は結局、彼女のプライベートゾーンにいたずらに首を突っ込んでいただけだった。レミさんの気持ちを考えられていなかった。大事な人を無くす辛さは、私だってよくわかっているはずだったのに。辺りが突然、暗闇に包まれたように感じる。光が、見えない。
「もう、今日のところは帰って。」
私はレミさんに促され、それに従うしかできなかった。
私は早速ルナちゃんにゲームを借り、レミさんの部屋へ向かっていった。
レミさんの部屋の扉をノックすると、相変わらずなレミさんが出てきた。
「何のよう?」
「ゲームしない?好きなんだよね?」
「誰に聞いたの?」
本当は、芹那さんだけど。いうわけにはいかないので私は適当に誤魔化す。
「ルナちゃん。」
「そう。」
そこで沈黙が訪れた。会話が続かない。
「やろうよ。」
「嫌よ。」
「いいじゃない。」
「暇じゃないの。」
埒が開かない。仕方がない、と思った私はあの人の名前を口にする。
「芹那さんと、よくやっていたんでしょう。」
レミさんの目つきが変わった。やはり。芹那さんの名前を出すと、レミさんの反応は変わる。
「あなたは、芹那を知らないでしょう?軽々しく名前を出さないで。」
怒っていた。でも、それではいけない。
「あったこと、あるよ。」
猫だけどね。それを知らないレミさんは本気で驚く。
「なんで。」
「いい加減、乗り越えて。」
強く、訴えかける。芹那さんが望んでいることだ。芹那さんの代わりに、私が叶えなくちゃ。
「あなたは、部外者でしょう?放って置いて。」
「私はもう、部外者じゃないよ。家族なの。たとえ、血が繋がっていなくてもね。放って置けると思う?」
レミさんは叫ぶ。
「放っておいて。大体、あなたはここにきたばかりじゃない。」
「それでも、だよ。それでも。それにね、私だけじゃない。由奈さんも、ルナちゃんも、乗り越えてほしいって願ってる。由奈さんに頼まれたの。レミをお願い、ってね。」
そう。私は託されたのだ。
「五月蝿い!私の気持ちも知らないくせに!」
「そうだね。わかるわけないよ。」
「それなら...!」
関わらないで、と言いたいのだろう。でも、そう言うわけにはいかない。芹那さんの想いを無視するわけにはいかないのだ。だから。
「私が言いたいのはね、教えて欲しいってことなの。レミさんは、私が何も知らないことを責めた。無知は罪。そうね。でも、あなたは私に伝えようとはしなかった。私は、あなたのことが知りたいの...!だって、私はあなたの家族なんだから。」
レミさんは、何も言わなかった。しばらくの間、私たちの間には沈黙が流れた。
「ねえ。」
最初に沈黙を破ったのはレミさんの方だった。
「私も、あなたのことが知りたい。私のことが知りたいのなら、先にはなして。どうしてあなたは、この家にきたの?」
意外な質問だった。レミさんが私に興味を持ってくれた。嬉しくて、意気揚々と口を開いた。
「私、は...。」
話始めようとした。でも、何故かうまく先が続けられない。どうして。言葉が詰まる。喉に引っかかったまま出てこない。辛いんだ、話すのが。そう気付くには少し時間を要した。
「すみれさん。」
レミさんが私の名を呼んだ。
「私は、あなたの事情を知っている。由奈さんから、全て聞いている。辛い思いをしていることも。ねえ、話すのは辛いでしょう?あなたが私に求めたことは、そういうことなんだよ。」
「...。」
何も、返せなかった。自分が自分のことは話せなかったことに、驚いていた。そして何よりも、私はレミさんを傷つけてしまっていた、その事実を飲み込むことができなかった。私は結局、彼女のプライベートゾーンにいたずらに首を突っ込んでいただけだった。レミさんの気持ちを考えられていなかった。大事な人を無くす辛さは、私だってよくわかっているはずだったのに。辺りが突然、暗闇に包まれたように感じる。光が、見えない。
「もう、今日のところは帰って。」
私はレミさんに促され、それに従うしかできなかった。
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