家族

葉月さん

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朝食にて

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朝食のため、私がリビングへ降りていくと、ルナちゃんが私を手招きしていった。
「ちょっと、私の部屋まで来て。」
うん、とうなずいてついていくと、黄色の扉が見えた。中に入ると、いかにも女の子らしい、可愛らしい部屋だとわかった。ベッドには大きなクマのぬいぐるみがある。

「わかっていると思うけど、ジェネ、つまり、芹那さんのことで話したくて。」
ルナちゃんが切り出した。
「うん。」
相槌を打って、先を促す。
「まず、由奈さんとお姉ちゃんには言わないで欲しい。」
「なぜ?だめなの?」
ルナちゃんは寂しそうだった。
「猫、だったんだよ。もしもまた芹那さんが消えてしまったら、2人とも、どうなるかわかんないもん。」
優しい声だった。
「私は芹那さんの代わりにはなれないもの。」
本当に、どこまでも優しい。自分よりもまず相手。

「ルナちゃんは?」
「え?」
「ルナちゃんだって、芹那さんのことを思っているでしょ?また消えてしまっても大丈夫なの?」
「え、ええと、、、だって、もう知ってしまったことだから仕方ないし、、、。」
ルナちゃんの言葉はそこで途切れた。扉をノックする音が聞こえたからだ。私はルナちゃんの歯切れの悪さに若干の違和感をおぼえながらも追求はしなかった。

「ルナ?もしかしてすみれちゃんもそこにいる?」
「はーい。」
ルナちゃんが、返事をして扉の方へ駆け寄った。私も後に続く。
「あ、やっぱりすみれちゃんもここに。部屋にもリビングにもいなかったから、どこにいったのかと。」
「あ、はい。ちょっと話してて。」
「もう仲良くなったのね。よかったわ。じゃあ、ご飯にしましょう。」
由奈さんが言って、3人でリビングへ向かった。朝ごはんは、とても豪華で美味しかった。やっぱり、レストランで働いていたからかな。
「ご飯は由奈さんが全部作っているんですか?」
「ううん。これはメイドさんが作ってくれたのよ。」
「メイド!?」
本物のメイドさん、会ってみたいな。
「1人だけだけどね。咲夜って言うの。大学生なんだけど、とても家事が上手なのよ。私よりもずっと。」
ちゃめっ気に溢れた笑顔でいう由奈さん。呼び捨てにしているところを見ると、だいぶ親密なのかもしれない。主人とメイドの関係なんて見たことないから一概には言えないけど。
「そうなんですか。」
メイドさんの話を聞いて、思いついた。
「私も働きたいです!」
やっぱり、タダで住むのはもうしわけない。
「それは遠慮しておくわ。でも、じゃあ、1つお願い。ルナと、レミと、ジェネとも、仲良くしてあげてね。」
「お安い御用です。」
「ありがとう。よろしくね。」
そんなこんなで、朝食を食べ終わる。
「それじゃ、またね。」
ルナちゃんが席を立った。私も、皿を片付けて、自分の部屋に戻った。
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