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3人の思い出
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「この世にはもう、芹那という人間はいないの。でも、代わりにジェネと名付けられた猫になった。ルナ、あなたは、ジェネのことを昔から飼っていたつもりよね。でもね、本当は、私がジェネとしてこの家に住み始めたのは、つい最近、芹那が死んでからなの。」
「芹那さんが死んでしまったのは最近のことなんですか?」
「ええ、そうよ。じゃあ、続きを話すわね。私は、大学でちょっと人間関係に悩んでいて。それで、飛び降り自殺をしてしまったの。」
[…。」
何も、言えなかった。
「大学生活はめっちゃ大変だったのよ。」
どんよりとしてしまった空気を変えようと、芹那さんはわざと明るく付け加えた。
芹那さんは大学生なのか。1つ、謎が解けた。レミさんのあの参考書は、芹那さんのものということだろう。レミさんと芹那さんには、何かしらの関係があったのだろうか。気になったので芹那さんに聞いてみると、芹那さんは少し寂しそうに呟いた。
「私たちはとても仲がよかったわ。私は張野家の長女で、レミは拾われてきた子。だから血は繋がってないんだけど、まるで姉妹みたいだった。レミの方が姉っぽかったけど。」
ふふ、と笑った芹那さんは、私を見ているようで、何か別のものを見ていた。
「今、レミはどんな感じ?」
この質問には、ルナちゃんが答えた。
「一言で言うなら、引きこもりだね。無感情なの。何に対しても。」
芹那さんは驚いている様子だった。追い討ちをかけるように、ルナちゃんは続けた。
「もう私とも話してくれないんだよ。芹那さんのせいだよっ!あなたが自殺なんてするから。」
「ごめん。」
「もう取り返しはつかないんだよ。あなたの命はあなただけのものじゃないの。実の娘を失った由奈さんの気持ちがわからない?おねえちゃんだってっ!私だってっ!」
ルナちゃんが責めるように言った。でも、それは芹那さんを大事に思っているからこその言葉だった。
「レミは、もうゲームもしてないの?」
芹那さんが聞いた。『ゲーム』は、レミさんには全然似合わない。でも、やっていたのだろうか。その様子を思い浮かべ、やっぱり似合わないなあ、と思った。
「ゲームなんてしていたんですか?」
「そうよ。確か、最初にやりたいと言い出したのはルナだったよね。」
「うん。」
ルナちゃんは、過去を懐かしんでいるようだった。
「3人で、時にはお母さんも交えて。本当に楽しかった。レミは本当にゲームが下手でね。いつも最下位だった。私が手加減したら、すごく怒ってたっけ。」
うんうん、とるなちゃんが相槌を打った。
「でも、勉強はよくできていたわね。」
「そういえば…」
私はレミさんの参考書の話をした。
「今、中一なはずだよね?」
2人に同時に聞き返された。
「頭良すぎじゃない?」
そんなことを話していると、誰かが階段を降りてくる音がした。由奈さんだ。
「あら、2人で何を話してたの?」
芹那さんのことを話すべきか否か。
「んー。ただの世間話だよー。」
ルナちゃんがそう言ったので、私もそれに合わせる。
「そうなのね。それじゃ、そろそろ寝なさいな。」
「わかった。じゃあね、おやすみ。」
ルナちゃんが言ってしまったので、私も、
「おやすみなさい。」
と由奈さんに声をかけ、バレないようにジェネにも合図を送った。そして、自分の部屋に戻った。
って言うか、自殺して大学生が猫だなんて信じられないなぁ、話していたさっきよりも今の方が驚いている気がする。でも、やっぱり夢ではないよなぁ、と思いながら、私は眠りにつくのだった。
「芹那さんが死んでしまったのは最近のことなんですか?」
「ええ、そうよ。じゃあ、続きを話すわね。私は、大学でちょっと人間関係に悩んでいて。それで、飛び降り自殺をしてしまったの。」
[…。」
何も、言えなかった。
「大学生活はめっちゃ大変だったのよ。」
どんよりとしてしまった空気を変えようと、芹那さんはわざと明るく付け加えた。
芹那さんは大学生なのか。1つ、謎が解けた。レミさんのあの参考書は、芹那さんのものということだろう。レミさんと芹那さんには、何かしらの関係があったのだろうか。気になったので芹那さんに聞いてみると、芹那さんは少し寂しそうに呟いた。
「私たちはとても仲がよかったわ。私は張野家の長女で、レミは拾われてきた子。だから血は繋がってないんだけど、まるで姉妹みたいだった。レミの方が姉っぽかったけど。」
ふふ、と笑った芹那さんは、私を見ているようで、何か別のものを見ていた。
「今、レミはどんな感じ?」
この質問には、ルナちゃんが答えた。
「一言で言うなら、引きこもりだね。無感情なの。何に対しても。」
芹那さんは驚いている様子だった。追い討ちをかけるように、ルナちゃんは続けた。
「もう私とも話してくれないんだよ。芹那さんのせいだよっ!あなたが自殺なんてするから。」
「ごめん。」
「もう取り返しはつかないんだよ。あなたの命はあなただけのものじゃないの。実の娘を失った由奈さんの気持ちがわからない?おねえちゃんだってっ!私だってっ!」
ルナちゃんが責めるように言った。でも、それは芹那さんを大事に思っているからこその言葉だった。
「レミは、もうゲームもしてないの?」
芹那さんが聞いた。『ゲーム』は、レミさんには全然似合わない。でも、やっていたのだろうか。その様子を思い浮かべ、やっぱり似合わないなあ、と思った。
「ゲームなんてしていたんですか?」
「そうよ。確か、最初にやりたいと言い出したのはルナだったよね。」
「うん。」
ルナちゃんは、過去を懐かしんでいるようだった。
「3人で、時にはお母さんも交えて。本当に楽しかった。レミは本当にゲームが下手でね。いつも最下位だった。私が手加減したら、すごく怒ってたっけ。」
うんうん、とるなちゃんが相槌を打った。
「でも、勉強はよくできていたわね。」
「そういえば…」
私はレミさんの参考書の話をした。
「今、中一なはずだよね?」
2人に同時に聞き返された。
「頭良すぎじゃない?」
そんなことを話していると、誰かが階段を降りてくる音がした。由奈さんだ。
「あら、2人で何を話してたの?」
芹那さんのことを話すべきか否か。
「んー。ただの世間話だよー。」
ルナちゃんがそう言ったので、私もそれに合わせる。
「そうなのね。それじゃ、そろそろ寝なさいな。」
「わかった。じゃあね、おやすみ。」
ルナちゃんが言ってしまったので、私も、
「おやすみなさい。」
と由奈さんに声をかけ、バレないようにジェネにも合図を送った。そして、自分の部屋に戻った。
って言うか、自殺して大学生が猫だなんて信じられないなぁ、話していたさっきよりも今の方が驚いている気がする。でも、やっぱり夢ではないよなぁ、と思いながら、私は眠りにつくのだった。
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