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61.反省しない人

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「結局無事だったのだからいいじゃない!」

「リリアン、そうではない。
 無事だったのは運が良かっただけだ。
 お前には知らされていないだろうが、王宮薬師長がいなければ、
 王宮薬師長が処方する薬がなければ、1年もたたずに公爵は死ぬだろう。」

「え?」

「お前の父親を生かしているのは王宮薬師長だけしか作れない薬だ。
 そして、ユキ様の後を継げるのはルーラだけだ。
 お前のしたことは父親の命を縮める行為だった。」

「…本当に?
 だって、その女がいなくなったら、
 ハンスさんが次の王宮薬師長になるんでしょう?
 そしたら別にいなくなっても構わないじゃない。」

「誰がそんなことを言った?」

「…ハンスさんが、そう言って手伝ってくれるって。
 連れ出すときに使った薬はハンスさんからもらったものよ。」

「なるほどな…ハンスも関わっていたか。
 おい、衛兵。ハンスを捕まえて調べろ。」

入り口付近にいた衛兵たちが数人部屋の外に出ていった。


「…ハンスではあの薬は処方できない。
 ルーラでなければ無理だ。
 公爵よ、自分の娘の犯した罪だ。おとなしく受け入れろ。
 お前たちがしたことは、この国を、この国の王族を殺す行為だ。」

「…陛下、お許しください。どうか、どうか…。」

真っ白な顔をして崩れおちた公爵が、這いつくばるように懇願する。
それを支えようとしながら、リリアン様もお願いしますと繰り返す。

だけど、陛下とユキ様の処罰は変わらなかった。

「それと、ランゲル公爵家一族の王宮への出入りを禁じる。
 同時に公爵家主催の夜会とお茶会の開催を禁じる。」

王宮への出入りの禁止は王家主催の夜会やお茶会に参加できないということ。
それはリリアン様の結婚相手を探せないということになる。
しかも、公爵家での主催もできない。
この処罰が公表されれば、リリアン様を呼ぼうとする貴族は一人もいないだろう。
事実上の社交界からの追放だった。

「そんな!陛下、ひどいです!
 じゃあ、ノエル兄様との結婚は認めてください!」

「はぁ?」

「だって、社交界に出られないんじゃ結婚相手を探せない!
 だからノエル兄様との婚約を戻してください!」

「…ノエル、こう言ってるが?」

あ、陛下、うんざりしましたね?
あきらかに疲れた顔でノエルさんに全部投げてきた。
それにしてもリリアン様を反省させるのは無理なのかも。

「リリアン、俺はリリアンと結婚する気はないし、婚約を戻す気もない。」

「どうして!」

「俺はもうルーラと結婚しているし、ルーラ以外の女とどうこうする気になれない。」

「私と結婚するって言ってくれたのに!」

「…言ってないよ。一度も。
 リリアンが産まれた時点で決められた婚約だったからな。
 リリアンを女性として見たことは一度もない。
 妹のように思ってたから、それでいいと思ってた。」


「…そんな。そんなにその女がいいの?」

「俺はルーラを愛している。ルーラじゃないとダメなんだ。」

「…嘘よ…嘘だわ。」

そうつぶやくと力なく崩れ、そのまま気を失ってしまった。
よほどショックだったのだろうか。


「衛兵よ、二人を連れて行け。処罰はすぐさま貴族へ公表しろ。」

「はっ。」



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