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51.迎えに来た人

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「新しい茶葉に変えてくるわ。ちょっと待ってて?」

そう言ってサージャさんが席を立った時に、
サージャさんに渡そうと思っていた物を思い出して奥の部屋に入った。
まだ魔力は安定していなかったけど、薬師室で処方した際にユキ様から、
もうかなり落ち着いてきたから少しなら処方してもいいと許可が出た。
最初は女官三人にお礼として手荒れの薬を渡したくて、
昨日のうちにこっそり作っておいたものだ。
三人がそろっている時に渡したかったけど、
さっき見たサージャさんの手が荒れていて痛そうだったから早く渡したかった。

小さな瓶に詰めた塗薬が三つ並んでいるうちの一つを取り出して、
お茶を飲んでいた元の部屋に戻る。
もうすでにサージャさんは戻って来ているだろうと思ってたのに、誰もいなかった。

「あれ?まだ戻って来てない。何かあったのかな。」

そうつぶやいた時に部屋をノックされた。
ノック?
誰が来たんだろう。

「どうぞ?」

「失礼いたします。」

中に入ってきたのは、文官と女官だった。
どちらも見たことは無いが、王宮の制服を着ている。
誰にもついていない文官と女官なのだろう。

「どうしました?」

「実はユキ様から緊急で呼んできてほしいと言われまして、迎えに来ました。
 ルーラ様の薬店が荒らされ、隣人の方がケガをしたそうです。
 それでルーラ様にも立ち会ってほしいとのことです。
 一緒についてきてください。」

「えっ。」

隣人がケガ?もしかして隣のおばさん?
急いでいかなきゃ。でも、サージャさんがいない。

「急ぎますか?私についているサージャさんがいないので、
 話してからじゃないと動けないので戻るまで待ってください。」

「ああ、サージャさんの代わりに私が来たので大丈夫です。サリーと申します。」

「でも、この部屋から出てはいけないと言われています。
 せめてサージャさんが戻ってくるまで待ってください。」


ユキ様が何か指示を出すならノエルさんをよこすはずだ。
そうじゃなかったとしても、一人で判断すべきことじゃない。
サージャさんが戻ってくれば、どうしたらいいか相談に乗ってくれるはずだ。
そう思って、動かないことに決めた。


「…ちっ。めんどうだな。よし、連れて行くか。」

「その方が早いですね。」

目の前にいたはずの女官が後ろにまわったと思ったら、口に何かをあててきた。
ツンとする匂いで、意識を奪う薬だと気が付き、息を止める。
そのまま意識が無くなったふりをして床に崩れ落ちると、文官に担がれた。

え?また担がれてる。
二人に抵抗しても無駄だと思って意識を失うふりをしたものの、
このままどこかに連れて行かれたらどうしよう。

ルーラを連れた二人は王宮の馬車乗り場の端に止めてあった、
貴族の紋がついた馬車に乗り込んだ。
貴族の紋が付いた馬車?私をさらおうとしているのは貴族?

馬車の中に乱暴に乗せられ文官と女官も乗り込んできた後、馬車は走り出した。
いったいどこに行くのだろう。閉じていた目を薄く開けた。
私と文官と女官の他に、人が乗っているのに気が付いた。
…ドレスの裾が見える。女性?


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