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35.避妊薬
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ノエルさんが謁見室の呼ばれたからと、
ユキ様との修行中は代わりにミラさんがそばについてくれていた。
「寵妃は納得してくれたかい?」
「はい。私のことを新しい側妃だと勘違いされて困りましたけど、
ミラさんがちゃんと説明してくれて。
ミラさんについてもらっていて良かったです。」
「そうか。ミラは陛下の妃への教育係でもあったからな。
ミラの説明なら寵妃も話を聞くだろう。」
「教育係ですか?」
「ああ。陛下の乳兄弟なのは知ってるな?
小さい頃から陛下のそばにいるから、好みだとか色々と妃に教えるんだよ。
婚姻する前に一月位かけて。
だから妃たちは陛下のことで困ると、ミラに相談するんだ。」
「そうだったんですか。だからミラさんがついてきてくれたんですね。」
「他に何か困ったことは言われなかったか?」
「薬を処方してほしいって言われましたけど、今はまだ無理なのでお断りしました。
王宮薬師になって、仕事としてなら全力で務めますと答えました。」
「ああ、それでいい。妃が王宮薬師個人に処方を求めるのは禁止されている。
食事や薬はすべて後宮のほうで管理されているからな。
薬も後宮からの要望で処方することになっているから気を付けるんだ。
で、何の薬を欲しがったんだ?」
「…避妊薬です。
でも、私は避妊薬の処方って知らないんですけど、あるんですか?
母から教わった処方には無かったと思うんですけど。」
「避妊薬だと?」
それまで穏やかに私の処方を見守りながら話していたユキ様の声色が変わった。
低い声に驚いてユキ様を見ると、何か考え込んでいるようだ。
「…王宮薬師の処方に避妊薬は無い。
だいたい、妃が避妊してどうするんだ。子を産むのが仕事だろうに。
ミラ、本当に寵妃はそんなことを言ったのか?」
「そうですね、たしかに言ってました。
王宮薬師個人に処方を頼むのも禁止されていますし、
寵妃さまもそれは知っているかと。
なので、あり得ない話だと思って聞いておりました。
ただ、寵妃さまですからね…どこまで本気だったのか。」
ん?そういえば寵妃さまって変わってる人だって言ってた?
避妊薬ないのに処方してほしいって言ったのか。
本当に欲しいから?それとも子どもを産んでないことで自虐的な何か?
笑顔で話してたし、そんなわけは無いか。
「避妊薬ね…わかった。少し気にしておこう。
寵妃が避妊薬を欲しがるとか、ありえないからな。」
今日の確認する処方も終わり、ここまで何も問題ないと言ってもらえた。
お母様から教わった処方も、もう残りわずか。
それが終わったら新しい処方を教えてもらえるんだろうか。
処方し終わった薬は使えないので、事故防止のために焼いて処分する。
ひとまとめに片付けていると、帰ろうとしていたユキ様から声をかけられた。
「あぁ、そうだ。
次の夜会が再来週にあるが、ルーラも出席するように。」
「へ?」
「夜会。フォンディ家当主だろう。一度は顔出しておかないとまずい。
それに、王宮薬師としての任命もする。
ノエルも次の夜会は出ることになるはずだ。一緒に出席しなさい。」
「王宮薬師に任命してもらえるんですか!」
「ああ。来週あたり他の王宮薬師にも会わせておこう。
夜会の準備はミラに頼むといい。」
「ルーラ、ドレスとかはわたくしたちと相談しましょうね。
大丈夫よ、夜会と言っても出席するだけでいいから。
貴族になったものは一度顔見せしなきゃいけないルールがあるのよ。
それさえ終われば夜会に出なくても大丈夫だから。ね?」
「わかりました。」
夜会か…貴族はまだ苦手だな。
でもノエルさんも一緒なら、なんとかなるかな。
ユキ様との修行中は代わりにミラさんがそばについてくれていた。
「寵妃は納得してくれたかい?」
「はい。私のことを新しい側妃だと勘違いされて困りましたけど、
ミラさんがちゃんと説明してくれて。
ミラさんについてもらっていて良かったです。」
「そうか。ミラは陛下の妃への教育係でもあったからな。
ミラの説明なら寵妃も話を聞くだろう。」
「教育係ですか?」
「ああ。陛下の乳兄弟なのは知ってるな?
小さい頃から陛下のそばにいるから、好みだとか色々と妃に教えるんだよ。
婚姻する前に一月位かけて。
だから妃たちは陛下のことで困ると、ミラに相談するんだ。」
「そうだったんですか。だからミラさんがついてきてくれたんですね。」
「他に何か困ったことは言われなかったか?」
「薬を処方してほしいって言われましたけど、今はまだ無理なのでお断りしました。
王宮薬師になって、仕事としてなら全力で務めますと答えました。」
「ああ、それでいい。妃が王宮薬師個人に処方を求めるのは禁止されている。
食事や薬はすべて後宮のほうで管理されているからな。
薬も後宮からの要望で処方することになっているから気を付けるんだ。
で、何の薬を欲しがったんだ?」
「…避妊薬です。
でも、私は避妊薬の処方って知らないんですけど、あるんですか?
母から教わった処方には無かったと思うんですけど。」
「避妊薬だと?」
それまで穏やかに私の処方を見守りながら話していたユキ様の声色が変わった。
低い声に驚いてユキ様を見ると、何か考え込んでいるようだ。
「…王宮薬師の処方に避妊薬は無い。
だいたい、妃が避妊してどうするんだ。子を産むのが仕事だろうに。
ミラ、本当に寵妃はそんなことを言ったのか?」
「そうですね、たしかに言ってました。
王宮薬師個人に処方を頼むのも禁止されていますし、
寵妃さまもそれは知っているかと。
なので、あり得ない話だと思って聞いておりました。
ただ、寵妃さまですからね…どこまで本気だったのか。」
ん?そういえば寵妃さまって変わってる人だって言ってた?
避妊薬ないのに処方してほしいって言ったのか。
本当に欲しいから?それとも子どもを産んでないことで自虐的な何か?
笑顔で話してたし、そんなわけは無いか。
「避妊薬ね…わかった。少し気にしておこう。
寵妃が避妊薬を欲しがるとか、ありえないからな。」
今日の確認する処方も終わり、ここまで何も問題ないと言ってもらえた。
お母様から教わった処方も、もう残りわずか。
それが終わったら新しい処方を教えてもらえるんだろうか。
処方し終わった薬は使えないので、事故防止のために焼いて処分する。
ひとまとめに片付けていると、帰ろうとしていたユキ様から声をかけられた。
「あぁ、そうだ。
次の夜会が再来週にあるが、ルーラも出席するように。」
「へ?」
「夜会。フォンディ家当主だろう。一度は顔出しておかないとまずい。
それに、王宮薬師としての任命もする。
ノエルも次の夜会は出ることになるはずだ。一緒に出席しなさい。」
「王宮薬師に任命してもらえるんですか!」
「ああ。来週あたり他の王宮薬師にも会わせておこう。
夜会の準備はミラに頼むといい。」
「ルーラ、ドレスとかはわたくしたちと相談しましょうね。
大丈夫よ、夜会と言っても出席するだけでいいから。
貴族になったものは一度顔見せしなきゃいけないルールがあるのよ。
それさえ終われば夜会に出なくても大丈夫だから。ね?」
「わかりました。」
夜会か…貴族はまだ苦手だな。
でもノエルさんも一緒なら、なんとかなるかな。
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