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34.任命
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正式な騎士服で謁見室に来いと言われて、何事かと思っていたが…。
目の前にはため息をつきながら、じぃーっとこっちを見ている陛下。
何か用があって呼んだのなら、早く言ってほしい…。
「陛下、いいかげんにして話を始めてください。」
しびれを切らした女官長が陛下に進言する。
うわ。笑顔の女官長…怖い。
陛下もそう感じたのだろう。姿勢を正して、話し始めた。
「あ、ああ。すまんな。考え事をしていて。
呼んだのは、もう一度青の騎士に任命するためだ。」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
青の騎士、それは俺が4年前に返還したものだ。
魔剣を扱えないものは魔剣騎士を名乗れない。
ましてや色付きの騎士を名乗るようなことは出来ない。
そう思って、与えられていた魔剣を陛下に返したのだった。
それを、また任命?
「ユキ姉様から話は聞いた。魔剣を扱えるようになったのだろう?」
「はい、それはそうですが…。」
「よい、心配しているのは、騎士団に戻りたくないからであろう?
ルーラ付きの魔剣騎士として任命する。」
は?王宮薬師付きの魔剣騎士なんて聞いたことないぞ?
それも、まだ見習いのルーラ付きで?
「驚くのも無理はない。
だが、お前に話をしたうえで、任命は受けてもらう。」
「話、ですか?」
「ああ。ルーラは王宮薬師になるのと同時に、次期王宮薬師長に指名される。」
「同時にですか?」
「ユキ姉様が言うには、もうどの王宮薬師と比べても、
ルーラのほうが圧倒的に優れているらしい。
あのユキ姉様が完璧だと言ったんだぞ。驚くしかない。
それに、ユキ姉様がいくら長命だと言っても、終わりが来ないわけではない。
そろそろ次の指導者を育てたいと言っている。
ルーラは王宮薬師として教えることは無いそうだ。
だから、王宮薬師長としての教育をする。終わるまで数年かかるだろう。」
ユキ様の後継として指名する…まだ16歳のルーラが。
どれだけ反発がくるか、予想できない。
「魔剣騎士が守らないといけないほど、危険だということですか?」
「そうだ。それに、ルーラの母方のハンナニ国があきらめたとは言い切れない。
油断していたらさらわれてしまう可能性もある。
それに…あの容姿では、普通の令嬢だとしても危険だ。」
…普通の令嬢として、ドレス着て、夜会になんて出席したら。
今まで貴族としてのつきあいもない、守ってくれる両親もない。
成長したとはいえ、小柄なルーラが狙われるのは予想できる。
「…わかりました。青の騎士、任命を受けさせてください。」
「それでいい。新しく魔剣を用意させた。前回とは魔力が違うのだろう?
もう一度契約し直さなければいけないからな。」
差し出された魔剣は、まだ誰にも契約されていない、真っ白な剣だった。
左手首を噛み切って、魔剣に血をたらす。
流れて行くように剣に血が吸い込まれて行く。
剣と血がつながるように共鳴し、左腕の中に剣が収まった。
身体の中にある魔剣を感じ、魔力を流す。
浮かび上がるように身体の前にあらわれた剣を右手でつかんだ。
青白い光で包まれた魔剣を見て、前よりも剣に力が込められているのを感じた。
これが、新しい俺の魔剣。いや、俺とルーラの力でできた魔剣だ。
「見事な魔剣だ。ここまで力を持つ魔剣騎士は騎士団にもいないだろう。
だがな、ルーラを守ることは、この国を、この国の王家を守ることにもなる。
その辺の話は、いずれユキ姉様がノエルとルーラに話すだろう。
…ルーラを守れ。頼んだぞ。」
「はい。」
言われるまでもない。俺の力はルーラのものだ。
また青の騎士に戻れるとは思わなかったが、だけど、前とは違う。
ルーラのためだけの騎士だ。
名誉だというなら、ルーラを守れることが名誉だと思う。
それが認められたことはうれしい。その感謝の気持ちで礼をし、謁見室から出た。
「言われるまでもない、って顔してたぞ。」
「でしょうね。自分の奥さん守るんですから。」
「いいよな~ルーラが奥さんって。ずるいだろう。」
「陛下?それ、他で言ったら…またしっかりお話しすることになりますわよ?」
「…言わない。」
これ以上何か言ったら、本当に女官長の説教が始まりそうだ…。
はぁぁぁ。仕事するか~。
目の前にはため息をつきながら、じぃーっとこっちを見ている陛下。
何か用があって呼んだのなら、早く言ってほしい…。
「陛下、いいかげんにして話を始めてください。」
しびれを切らした女官長が陛下に進言する。
うわ。笑顔の女官長…怖い。
陛下もそう感じたのだろう。姿勢を正して、話し始めた。
「あ、ああ。すまんな。考え事をしていて。
呼んだのは、もう一度青の騎士に任命するためだ。」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
青の騎士、それは俺が4年前に返還したものだ。
魔剣を扱えないものは魔剣騎士を名乗れない。
ましてや色付きの騎士を名乗るようなことは出来ない。
そう思って、与えられていた魔剣を陛下に返したのだった。
それを、また任命?
「ユキ姉様から話は聞いた。魔剣を扱えるようになったのだろう?」
「はい、それはそうですが…。」
「よい、心配しているのは、騎士団に戻りたくないからであろう?
ルーラ付きの魔剣騎士として任命する。」
は?王宮薬師付きの魔剣騎士なんて聞いたことないぞ?
それも、まだ見習いのルーラ付きで?
「驚くのも無理はない。
だが、お前に話をしたうえで、任命は受けてもらう。」
「話、ですか?」
「ああ。ルーラは王宮薬師になるのと同時に、次期王宮薬師長に指名される。」
「同時にですか?」
「ユキ姉様が言うには、もうどの王宮薬師と比べても、
ルーラのほうが圧倒的に優れているらしい。
あのユキ姉様が完璧だと言ったんだぞ。驚くしかない。
それに、ユキ姉様がいくら長命だと言っても、終わりが来ないわけではない。
そろそろ次の指導者を育てたいと言っている。
ルーラは王宮薬師として教えることは無いそうだ。
だから、王宮薬師長としての教育をする。終わるまで数年かかるだろう。」
ユキ様の後継として指名する…まだ16歳のルーラが。
どれだけ反発がくるか、予想できない。
「魔剣騎士が守らないといけないほど、危険だということですか?」
「そうだ。それに、ルーラの母方のハンナニ国があきらめたとは言い切れない。
油断していたらさらわれてしまう可能性もある。
それに…あの容姿では、普通の令嬢だとしても危険だ。」
…普通の令嬢として、ドレス着て、夜会になんて出席したら。
今まで貴族としてのつきあいもない、守ってくれる両親もない。
成長したとはいえ、小柄なルーラが狙われるのは予想できる。
「…わかりました。青の騎士、任命を受けさせてください。」
「それでいい。新しく魔剣を用意させた。前回とは魔力が違うのだろう?
もう一度契約し直さなければいけないからな。」
差し出された魔剣は、まだ誰にも契約されていない、真っ白な剣だった。
左手首を噛み切って、魔剣に血をたらす。
流れて行くように剣に血が吸い込まれて行く。
剣と血がつながるように共鳴し、左腕の中に剣が収まった。
身体の中にある魔剣を感じ、魔力を流す。
浮かび上がるように身体の前にあらわれた剣を右手でつかんだ。
青白い光で包まれた魔剣を見て、前よりも剣に力が込められているのを感じた。
これが、新しい俺の魔剣。いや、俺とルーラの力でできた魔剣だ。
「見事な魔剣だ。ここまで力を持つ魔剣騎士は騎士団にもいないだろう。
だがな、ルーラを守ることは、この国を、この国の王家を守ることにもなる。
その辺の話は、いずれユキ姉様がノエルとルーラに話すだろう。
…ルーラを守れ。頼んだぞ。」
「はい。」
言われるまでもない。俺の力はルーラのものだ。
また青の騎士に戻れるとは思わなかったが、だけど、前とは違う。
ルーラのためだけの騎士だ。
名誉だというなら、ルーラを守れることが名誉だと思う。
それが認められたことはうれしい。その感謝の気持ちで礼をし、謁見室から出た。
「言われるまでもない、って顔してたぞ。」
「でしょうね。自分の奥さん守るんですから。」
「いいよな~ルーラが奥さんって。ずるいだろう。」
「陛下?それ、他で言ったら…またしっかりお話しすることになりますわよ?」
「…言わない。」
これ以上何か言ったら、本当に女官長の説教が始まりそうだ…。
はぁぁぁ。仕事するか~。
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