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0.八年前の記憶
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急に、後ろから声をかけられた。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「え?」
振り返ったら、少し年上の令息がいた。
肩までの銀色の髪がさらさらして光ってる。
服装がドレスだったら令嬢に見えるくらい綺麗な顔をしている。
だけど、その表情は冷たく、
はっきりとした青い目はにらんでいるように見える。
「ここは王妃の庭だぞ。普通の貴族は入れないはずだ」
「あ、王妃様に招待されたからです」
そうだった。
ここは王妃様の庭と呼ばれる王宮でも限られた人しか入れない場所。
こんなところにいるのは三人いる王子の誰かに違いない。
「母上が招待だと?
今日はバルナベ公爵家の夫人と令嬢が二人来ると言っていたな。
お前はどっちだ?」
「……養女のほうです。クラリスと申します」
「そうか。それで、クラリスはどうしてここに?
向こうでお茶会をしているはずだが」
「……私は関係ないと言われて、
邪魔にならないようにここで待っています」
今日のお茶会は王子三人とお義姉様が顔を合わせるためのものだ。
この国の貴族令嬢は七歳になるまで外出しない。
お義姉様と王子たちは従兄弟でも会うのは初めてらしい。
そのついでに、養女になった私とも会ってみたいと王妃様が言われたため、
お母様とお義姉様と一緒に王宮に来たのだけど。
お茶会の会場について王妃様を待っていたら、
お母様に私だけどこかに行くように言われた。
「あなたは必要ないから、どこかに行っていなさい」
「で、でも」
「王妃様には帰る時に挨拶すればいいわ。
今日はジュディットが王子たちに会う大事な日なの。
あなたは関係ないのだから、邪魔しないようにここから離れていなさい。
あとで誰かに探しに行かせるわ。わかったわね」
「はい……」
こんな広い庭で一人になるのは怖かった。
だけど、お母様に厳しい口調で言われ、逆らえなかった。
とぼとぼと庭を歩いていたら、小さな小屋があるのを見つけた。
庭師が使う部屋なのかと思って、窓から中をのぞこうとした。
その後ろから声をかけられたのだった。
事情を説明すると、王子は面白くなさそうにふうんと言った。
もしかして、疑われている?
不安に思っていたら、優しく頭を撫でられた。
王子の顔はもう怖くなくなって、微笑みかけられる。
「そんな顔するな。怒っているわけじゃない。
どうしてここにいるのか不思議だったからだ。
誰かが探しに来るまではこの辺にいなきゃいけないんだろう?」
「はい」
「じゃあ、一緒に遊んで待つか」
「え?」
「嫌なのか?」
「いいえ、うれしいです」
一人でいたのが心細かったから、知らない王子が相手でもうれしかった。
手をつながれて、王子と一緒に庭の奥へと向かう。
誰かに手をつないでもらうのは初めてで、
右手が温かくてなんだか身体がぽかぽかする。
背が高い王子を見上げたら、笑いかけてくれた。
私と遊んでくれるのがうれしくて、私も王子に笑いかける。
それから王宮の使用人が迎えに来るまで遊んで、
一緒にお茶会の場へと向かう。
王子と遊ぶということがどういうことなのか、考えもしなかったから。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「え?」
振り返ったら、少し年上の令息がいた。
肩までの銀色の髪がさらさらして光ってる。
服装がドレスだったら令嬢に見えるくらい綺麗な顔をしている。
だけど、その表情は冷たく、
はっきりとした青い目はにらんでいるように見える。
「ここは王妃の庭だぞ。普通の貴族は入れないはずだ」
「あ、王妃様に招待されたからです」
そうだった。
ここは王妃様の庭と呼ばれる王宮でも限られた人しか入れない場所。
こんなところにいるのは三人いる王子の誰かに違いない。
「母上が招待だと?
今日はバルナベ公爵家の夫人と令嬢が二人来ると言っていたな。
お前はどっちだ?」
「……養女のほうです。クラリスと申します」
「そうか。それで、クラリスはどうしてここに?
向こうでお茶会をしているはずだが」
「……私は関係ないと言われて、
邪魔にならないようにここで待っています」
今日のお茶会は王子三人とお義姉様が顔を合わせるためのものだ。
この国の貴族令嬢は七歳になるまで外出しない。
お義姉様と王子たちは従兄弟でも会うのは初めてらしい。
そのついでに、養女になった私とも会ってみたいと王妃様が言われたため、
お母様とお義姉様と一緒に王宮に来たのだけど。
お茶会の会場について王妃様を待っていたら、
お母様に私だけどこかに行くように言われた。
「あなたは必要ないから、どこかに行っていなさい」
「で、でも」
「王妃様には帰る時に挨拶すればいいわ。
今日はジュディットが王子たちに会う大事な日なの。
あなたは関係ないのだから、邪魔しないようにここから離れていなさい。
あとで誰かに探しに行かせるわ。わかったわね」
「はい……」
こんな広い庭で一人になるのは怖かった。
だけど、お母様に厳しい口調で言われ、逆らえなかった。
とぼとぼと庭を歩いていたら、小さな小屋があるのを見つけた。
庭師が使う部屋なのかと思って、窓から中をのぞこうとした。
その後ろから声をかけられたのだった。
事情を説明すると、王子は面白くなさそうにふうんと言った。
もしかして、疑われている?
不安に思っていたら、優しく頭を撫でられた。
王子の顔はもう怖くなくなって、微笑みかけられる。
「そんな顔するな。怒っているわけじゃない。
どうしてここにいるのか不思議だったからだ。
誰かが探しに来るまではこの辺にいなきゃいけないんだろう?」
「はい」
「じゃあ、一緒に遊んで待つか」
「え?」
「嫌なのか?」
「いいえ、うれしいです」
一人でいたのが心細かったから、知らない王子が相手でもうれしかった。
手をつながれて、王子と一緒に庭の奥へと向かう。
誰かに手をつないでもらうのは初めてで、
右手が温かくてなんだか身体がぽかぽかする。
背が高い王子を見上げたら、笑いかけてくれた。
私と遊んでくれるのがうれしくて、私も王子に笑いかける。
それから王宮の使用人が迎えに来るまで遊んで、
一緒にお茶会の場へと向かう。
王子と遊ぶということがどういうことなのか、考えもしなかったから。
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