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2章 次代へ

24.王太子妃の生家

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バイアール侯爵家についての調査結果が出たのは、婚約から10日後だった。
思ったよりも時間がかかったなと思ったら、
予想外なことを知らされることになった。



謁見室に呼ばれた俺とレミーアが会わせられたのは、
赤い髪に黒目の大柄な男性だった。
レガール国の三大公爵家のジョージア・バンガル公爵だ。

「ああ、レミーア、会ったことは無いが、俺のことは知ってるな?
 ジュリアの兄だ。」

「お母様の?」

「ああ、ジュリアがバンガル家の長女だと聞いていないのか?」

「大きくなったら話すと言われていたので、
 詳しいことは何も聞かされていないのです。」

「そうだったのか。
 ジュリアは魔術師学校時代に、
 留学で来ていたバイアール侯爵と結婚したいと言い出して。
 駆け落ちのような状態でルールニー王国に嫁いだんだ。
 その後、俺とは手紙でやり取りしていたんだがな…。
 俺たちの両親はなかなか認められなかったようで、
 最後まで会うことは無かったよ。」


「だから大きくなったら話す、だったのですね。
 ですが、お母様は2年前亡くなってしまいました。
 その後、すぐにお姉様もお嫁に行ってしまって…
 お義母様と義弟が家に入ったのです。
 そんな状況では、お母様の生家の話を聞くことはできませんでした。」

「ジュリアは美しかった。俺とは違って、金髪の緑目で小柄で。
 レミーアはジュリアに似たんだな。
 気が付かなくて悪かった。すぐに助けられなくて。
 ジュリアが亡くなった後から、ずっと虐げられていたのだろう?」

「お父様が…お母様が亡くなったことを認められなくて、
 私を見ると思い出すからと遠ざけられるようになって。
 お義母様からの仕打ちを言う機会すらありませんでした…。
 おそらくお父様は知らないと思います。」

「ああ、知らなかったようだ。」

公爵とレミーアの話に割って入ったのは父上だった。

「今回詳しく調査した結果、ジョージア殿の姪だと知ってね。
 ジョージア殿にも連絡したんだ。
 その上で侯爵も呼んで話を聞いたのだが…
 まったく気が付いていなかったそうだよ。
 再婚した妻にすべて任せて、家にはほとんど帰っていなかったそうだな。
 後妻も侯爵が家に帰ってこない辛さを、義娘にぶつけていたそうだ。
 それで、その結果をすべてジョージア殿にも報告したら…。」

「侯爵を許すわけにはいかない。
 駆け落ち同然で連れ去った妹との、大事な娘をこんな目に合わせるとは。
 もう侯爵家に籍を置いておく必要はない。
 レミーア、お前はこれからはバンガルを名乗りなさい。」

「え?」

「レミーア嬢はバンガル家の養女にするそうだ。」

「ええ?」

「ああ、だから今日ここにバンガル公爵がいらっしゃったわけですね。
 いろいろと納得できました。
 レミーア、これからのことを考えると断らない方が良いと思う。」

「これからのことですか?」

「うん、君は王妃になるだろう?
 だけど、王妃の生家に、そんな義母や義弟がいるのはまずい。
 そこをついてくるものも多いだろう。
 だけど、バンガル家の養女になるなら、身分のことを言えるものはいなくなる。
 レガール国の三大公爵家っていうのは、
 ルールニー王国で言うコンコード公爵家のようなものだ。
 王家に次ぐ立場の者なんだよ。
 しかもただの養女じゃない。当主の姪なら血筋的にも問題が無い。
 これで、レミーアを王太子妃にすることを抗議できる家は無くなる。

 …もしかして、それも考えて養女にと言ってくれたのでしょうか?」

「大事な姪だからな。憂いなく王妃になってもらいたい。
 想い合って、大事にされているそうだしな。
 ちゃんと幸せになってほしいんだよ。」

「…ありがとうございます、伯父様。」

「ああ。これからはお父様と呼んでくれると嬉しいかな。
 うちは息子だけでね。娘がいなくてさみしかったんだ。
 こんなに可愛らしい娘が出来て嬉しいよ。」

「はい。お父様。ありがとうございます。」

もうすでに書類は作ってあったようで、
養女になる手続きは署名するだけで終わった。
生家の問題も、バンガル家が後ろ盾になってくれることで問題が無くなった。
無くなるどころか、これ以上ない状態で結婚することができる。
バンガル公爵に連絡をしてくれた父上の思惑通りなのだろう。
本当に父上にはかなわない。
俺はいつか父上をこえるような人になれるだろうか。











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