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2章 次代へ

23.権力をつかう場

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「決めたのか?」

「はい、決めました。このまま公爵家に連れて帰ります。
 母上から聞いてるんですよね?」

「ああ、ミレーヌから侯爵家に帰せそうにないとは聞いた。
 侯爵家については調査するよう指示を出した。
 婚約は正式に申し込むが問題ないな?」

「…王命にしてくれませんか?
 邪魔が入る気がするんです。」

「侯爵家のものが邪魔すると思ってるんだな?」

「レミーア嬢、王宮に来るのを邪魔されて、無理やり来たらしい。
 婚約を申し込んでも、絶対に何か言って来ます。
 だから最初から王命で断れないようにしてください。

 …それに、そのほうが他の令嬢たちも黙らせられるでしょう?」


「わかった。あとは任せていい。
 早く公爵家に連れて帰って休ませてあげなさい。
 ミレーヌが先に帰って、部屋の準備をしていると思うよ。
 自分の着なくなったドレスとか渡すって、張り切ってたから…。」

「母上の判断力と行動力はさすがですね…。
 でも助かります。
 すぐにドレスを仕立てても、10日はかかるでしょうし。
 その間の着替えが必要ですからね…
 女性のものを俺が買いに行くのはまずいですし。」

「頼れるところは頼っていいんだ。
 俺はほっとしたよ。お前の顔を見て。
 ジークやロゼと違って、お前は自分を出さなすぎる。
 ようやく唯一を見つけたんだな…安心したよ。」

「父上…。」

もしかして、ずっと心配されていたんだろうか。
久しぶりに頭を撫でられ、ああこの人の息子で良かったなと思う。

帰ったら母上にもお礼を言おう。
これからレミーア嬢のことで頼りっぱなしになりそうだから。


王命が出たのは次の日だった。
正式な書簡を持って使者がバイアール家に着いた時、
レミーア嬢は行方不明扱いだったらしい。
義理の母親が婚約に反対したそうだが、王命だということで侯爵が承諾した。
婚約と同時に王太子妃教育がある、
そういう理由で公爵家に滞在する許可も下りた。
娘に会わせてほしいと言われたが、
生家と言えど王妃になれば簡単には会えないということを説明し、
義理の母とその息子を黙らせたそうだ。

侯爵家を夜会に呼ぶかどうかは、調査報告を待って決めることにした。
ただでさえ波乱がおきそうな夜会に、これ以上揉め事を抱えるのは無理だった。

こうして王命によって、
コンコード公爵家ジョルノと、
バイアール侯爵家レミーアの婚約は発表された。
夜会の2週間前の事だった。




「学園は慣れた?」

「はい、学べるのが嬉しくて、通うのが楽しいです。」

レミーアが公爵家に来てすぐ、学園への編入を申し込んだ。
編入試験を受けさせたところ、俺と同じ学年でも大丈夫だと言う回答だった。
それどころか3学年上でもついていけるだろうという評価に、
エリーゼのことが片付いたら、2人で飛び級して卒業するのも考えようと思った。

エリーゼと同じ学年にレミーアを通わせるのは少し不安でもあるが、
他の令嬢からの嫌がらせをうけないためにも、
俺と一緒にいるほうがいいだろうと判断した。

俺たちの婚約について抗議はいくつかの家から来たらしい。
侯爵家の中でも王都から遠いバイアール家の立場は低い。
そこをついて、他の令嬢をすすめるものが多かった。
令嬢から来た抗議については、俺がその場で跳ね返していった。
驚いたのが、あの伯爵令嬢セフィーヌ嬢からも抗議が来たことだった。
俺と婚約できると思っていたのか…。本当に呆れてしまう。

「何かあれば言うんだよ。」

「何かですか?」

「ああ。今は公爵令息の婚約者だが、夜会が終わったら王太子の婚約者だ。
 抗議される意味が違うだろう。
 何を言われても跳ね返す自信はあるけど、レミーアを困らせたくない。
 何かあったら、すぐに言うんだよ?」

「わかりました。」







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