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31.夜会のあとで
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マリーナさんに手伝ってもらって、夜会用のドレスを脱ぐ。
髪飾りを取って編み込んだ髪をほどいてもらうと、
ぴょこんと猫耳が戻った。
なんとなく苦しかったのが楽になる。
湯あみをしていつもの夜着に着替えて部屋に戻り、
本を読んでいたジルベール様の隣に座る。
マリーナさんからコップを受け取って、
レモン水を飲んだから身体の力が抜けていく。
今日はなんだかすごく疲れた気がする。
「ふふ。夜会は疲れますよね」
「うん、ほとんど会場にはいなかったのに、
すごく疲れちゃった」
「夜会は準備が一番疲れますから」
「あーそうかも」
それは本当にそう。じゃあ、疲れてても仕方ないんだ。
「シャル様」
「なぁに?」
「おそらくですけど、
そう遠くないうちに使用人が一人増える気がします」
「新しい使用人?」
「ジルベール様に売り込むとしたら家令でしょうね。
領地経営の仕事は誰かに任せたいでしょうから」
ん?決まったわけじゃなくて、予定?
それってもしかして……
「マリーナさん、それ、第二王子様じゃないよね?」
「残念ながらそのとおりです。
王族でも魔術師になってもいいと許可されたら、喜んで魔術師になるでしょう。
そうなれば所属先は自由ですから」
「魔術院の塔じゃなくて、ここ?」
「最初はおとなしく塔で研究するかもしれませんが、
そう長くはないと思います。
きっとセドはここに来たがるでしょう。
……シャル様に迷惑をかけなければいいんですけど……」
マリーナさんから話したってことは聞いてもいいのかな。
気にはなっていたんだよね。
「第二王子様って、マリーナさんが好きだから追いかけてくるの?」
「そのようです。もう何度求婚を断ったかわかりません。
私は魔術師になる時に公爵家の籍を抜けています。
高位貴族の令嬢は魔術師になってはいけないという慣例のせいです」
「マリーナさん、公爵令嬢だったんだ。
従妹のエレーナ様も侯爵家だし、高位貴族かもとは思ってたけど」
「貴族の籍を抜けてますから、元貴族の平民です。
それは気にしなくてかまわないのですけど、
エドとセドとは幼いころから交流していました。
エドは私の二つ上、セドは私の一つ下です」
「それって妃候補だったってこと?」
「ええ。エドには早いうちに魔術師になるからと告げ、
妃候補からは降ろしてもらったのですけど。
まさかセドのほうから求婚されるとは思っていませんでした。
結局は魔術師になるために求婚を断りました」
うーん。公爵令嬢は魔術師にはなれない。
だから、マリーナさんは公爵家の籍を抜けた。
元貴族の平民では第二王子妃にはなれない、ってことなんだろうけど。
「第二王子様も魔術師になるし、
高位貴族令嬢が魔術師になるのも認められるんだよね?
公爵家の籍に戻ることもできるだろうし、
求婚を断る理由なくなったりする?」
「……」
めずらしい。マリーナさんが黙った。
これは聞かないほうがいいのかな。
「新しい使用人が増えるのは楽しみ。
私とも仲良くしてくれるかな……?」
「ええ、それは大丈夫です。
セドもシャル様が大好きになると思います」
「ふふ。ありがとう」
飲んだコップを渡すと、マリーナさんは礼をして部屋から出ていく。
私がベッドに行こうと立ち上がったら、
読んでいた本を置いたジルベール様に抱きかかえられる。
「疲れているんだろう?」
「聞いていたんですね」
「聞こえてた」
本を読んでいたから聞いていないんだと思ってた。
じゃあ、第二王子の話も聞こえていたのかな。
「ジルベール様、第二王子様がここで働きたいって言ったら、
許可するんですか?」
「シャルとマリーナが嫌がらないなら問題ないだろう」
「じゃあ、大丈夫ですね」
マリーナさんは嫌がってなかった。
王家の許可がいつ出るのかわからないけど、
王族でも魔術師になることができたら。
楽しみだななんてのんきに思っていたら、
ジルベール様に押し倒されてキスをされる。
……あちこちに唇がふれて気持ちいいけれど、
いつもよりもジルベール様の唇が熱く感じる。
あれ、大事なことを聞くの忘れてた?
「んんっ……あのっ」
「……なんだ?」
「婚約じゃなくて婚姻したんですか?」
「ああ。もうシャルは正式に俺の妻になってる」
え?じゃあ、もしかして、今日が初夜……だったりする?
「ふ。すごい真っ赤だな。首元まで」
するりと首筋をなでられて、ぎゅっと目を閉じる。
もうどうしていいかわからないから、ジルベール様にお任せして……
「今日はまだしない」
「……え?」
「まだ学園に通ってるだろう。
そういうのは卒業してからだ」
「あ、はい」
なんだろう。すごくほっとしているけど、
覚悟を決めたのになって思う気持ちもあって。
「残念そうだな」
「え?いや、あの…」
「今日はこれで我慢しておけ」
我慢って。
いつものキスでってことかと思ったら、ぬるりと舌が入り込んでくる。
ジルベール様の熱が直で伝わってきて、
気持ちよさを受け止めきれないで声がもれる。
もう時間の感覚なんてなくなって、
完全に私の力が抜けたところで唇が離される。
「シャル、おやすみ」
もう言葉を返すこともできず、かすかにうなずく。
それを見たジルベール様がうれしそうに笑った。
「初夜までにはこれをなんとかしないとだな」
猫耳をつままれ、声がでないはずなのに悲鳴をあげる。
「みぃぃ!」
……本当に精霊なのかな。私じゃない誰かが悲鳴をあげた。
髪飾りを取って編み込んだ髪をほどいてもらうと、
ぴょこんと猫耳が戻った。
なんとなく苦しかったのが楽になる。
湯あみをしていつもの夜着に着替えて部屋に戻り、
本を読んでいたジルベール様の隣に座る。
マリーナさんからコップを受け取って、
レモン水を飲んだから身体の力が抜けていく。
今日はなんだかすごく疲れた気がする。
「ふふ。夜会は疲れますよね」
「うん、ほとんど会場にはいなかったのに、
すごく疲れちゃった」
「夜会は準備が一番疲れますから」
「あーそうかも」
それは本当にそう。じゃあ、疲れてても仕方ないんだ。
「シャル様」
「なぁに?」
「おそらくですけど、
そう遠くないうちに使用人が一人増える気がします」
「新しい使用人?」
「ジルベール様に売り込むとしたら家令でしょうね。
領地経営の仕事は誰かに任せたいでしょうから」
ん?決まったわけじゃなくて、予定?
それってもしかして……
「マリーナさん、それ、第二王子様じゃないよね?」
「残念ながらそのとおりです。
王族でも魔術師になってもいいと許可されたら、喜んで魔術師になるでしょう。
そうなれば所属先は自由ですから」
「魔術院の塔じゃなくて、ここ?」
「最初はおとなしく塔で研究するかもしれませんが、
そう長くはないと思います。
きっとセドはここに来たがるでしょう。
……シャル様に迷惑をかけなければいいんですけど……」
マリーナさんから話したってことは聞いてもいいのかな。
気にはなっていたんだよね。
「第二王子様って、マリーナさんが好きだから追いかけてくるの?」
「そのようです。もう何度求婚を断ったかわかりません。
私は魔術師になる時に公爵家の籍を抜けています。
高位貴族の令嬢は魔術師になってはいけないという慣例のせいです」
「マリーナさん、公爵令嬢だったんだ。
従妹のエレーナ様も侯爵家だし、高位貴族かもとは思ってたけど」
「貴族の籍を抜けてますから、元貴族の平民です。
それは気にしなくてかまわないのですけど、
エドとセドとは幼いころから交流していました。
エドは私の二つ上、セドは私の一つ下です」
「それって妃候補だったってこと?」
「ええ。エドには早いうちに魔術師になるからと告げ、
妃候補からは降ろしてもらったのですけど。
まさかセドのほうから求婚されるとは思っていませんでした。
結局は魔術師になるために求婚を断りました」
うーん。公爵令嬢は魔術師にはなれない。
だから、マリーナさんは公爵家の籍を抜けた。
元貴族の平民では第二王子妃にはなれない、ってことなんだろうけど。
「第二王子様も魔術師になるし、
高位貴族令嬢が魔術師になるのも認められるんだよね?
公爵家の籍に戻ることもできるだろうし、
求婚を断る理由なくなったりする?」
「……」
めずらしい。マリーナさんが黙った。
これは聞かないほうがいいのかな。
「新しい使用人が増えるのは楽しみ。
私とも仲良くしてくれるかな……?」
「ええ、それは大丈夫です。
セドもシャル様が大好きになると思います」
「ふふ。ありがとう」
飲んだコップを渡すと、マリーナさんは礼をして部屋から出ていく。
私がベッドに行こうと立ち上がったら、
読んでいた本を置いたジルベール様に抱きかかえられる。
「疲れているんだろう?」
「聞いていたんですね」
「聞こえてた」
本を読んでいたから聞いていないんだと思ってた。
じゃあ、第二王子の話も聞こえていたのかな。
「ジルベール様、第二王子様がここで働きたいって言ったら、
許可するんですか?」
「シャルとマリーナが嫌がらないなら問題ないだろう」
「じゃあ、大丈夫ですね」
マリーナさんは嫌がってなかった。
王家の許可がいつ出るのかわからないけど、
王族でも魔術師になることができたら。
楽しみだななんてのんきに思っていたら、
ジルベール様に押し倒されてキスをされる。
……あちこちに唇がふれて気持ちいいけれど、
いつもよりもジルベール様の唇が熱く感じる。
あれ、大事なことを聞くの忘れてた?
「んんっ……あのっ」
「……なんだ?」
「婚約じゃなくて婚姻したんですか?」
「ああ。もうシャルは正式に俺の妻になってる」
え?じゃあ、もしかして、今日が初夜……だったりする?
「ふ。すごい真っ赤だな。首元まで」
するりと首筋をなでられて、ぎゅっと目を閉じる。
もうどうしていいかわからないから、ジルベール様にお任せして……
「今日はまだしない」
「……え?」
「まだ学園に通ってるだろう。
そういうのは卒業してからだ」
「あ、はい」
なんだろう。すごくほっとしているけど、
覚悟を決めたのになって思う気持ちもあって。
「残念そうだな」
「え?いや、あの…」
「今日はこれで我慢しておけ」
我慢って。
いつものキスでってことかと思ったら、ぬるりと舌が入り込んでくる。
ジルベール様の熱が直で伝わってきて、
気持ちよさを受け止めきれないで声がもれる。
もう時間の感覚なんてなくなって、
完全に私の力が抜けたところで唇が離される。
「シャル、おやすみ」
もう言葉を返すこともできず、かすかにうなずく。
それを見たジルベール様がうれしそうに笑った。
「初夜までにはこれをなんとかしないとだな」
猫耳をつままれ、声がでないはずなのに悲鳴をあげる。
「みぃぃ!」
……本当に精霊なのかな。私じゃない誰かが悲鳴をあげた。
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