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11.ロジェロ侯爵家の家令
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よくわからないという顔をしたシャルをマリーナにまかせ、
馬車を下りてドアを閉めた。
すかさずドアの向こうから鍵を閉めた音がする。
マリーナだろう。
これでシャルは大丈夫だと安心したが、長い間離れているのは不安だ。
シャルの身体にいつ異常が起きるかわからない。
歩く練習をさせることもなく、抱き上げて連れて歩くのはそのせいだ。
身体のどこかにふれていれば、魔力の異常を感知できる。
屋敷の玄関に近づくと、何人かの使用人が出迎える。
本来なら侯爵家の紋章が入った馬車が敷地内に入った時点で、
当主が屋敷に戻ったことが知らされ、
すべての使用人が玄関前で出迎えなくてはいけないのだが。
ここにいるのはたまたま近くにいた使用人だろうな。
出迎えてほしいわけではないが、
たるんでいるのを見るのはいい気分じゃない。
厳しかったお祖父様なら叱りつけるところだ。
玄関に入ったところで、奥へ走っていく侍女の後ろ姿が見えた。
俺が来たことを知らせに行くのか。
早めに話を終わらせないと面倒なことになりそうだ。
「「「「「「ジルベール様、おかえりなさいませ」」」」」」
「ああ」
頭を下げる使用人たちの間を通り、家令のもとへと向かう。
この屋敷をずっと管理している家令は、
父上が生まれる前からここにいる。
高齢だが、自分から辞める気はないらしい。
以前はまともな家令だったと思うのに、
どこで変わってしまったんだろう。
家令執務室のドアをノックしないで入ると、誰だ!と声がした。
怒鳴るような声は家令のカールだ。
もう白髪になっているが、元は金髪だった。
ぎょろりとした青目が俺を認識すると、とたんに態度が変わる。
「これはこれはジルベール様。おかえりでしたか」
「ああ、お前に話があってきた」
「わたくしにですか?」
「ああ。この屋敷は王家に返上することになった」
「は?」
笑顔が消えたのを見て、にやけそうになるのをこらえる。
「王家から話が来て受け入れた。
他国の要人を接待するための施設に使うそうだ」
「な、何を」
「お前の大好きな、王家からの打診だ。
断れるわけがないのはわかっているだろう」
「ですが!急にそんなことを言われましても」
「何が困るんだ?この屋敷はもう一年も使われていないのに」
父上と母上は俺に爵位を押しつけた後、領地に戻ってしまった。
あちらに別邸を建てて、のんびり暮らしている。
「いえ、マリーズ様とシルヴィ様がいらっしゃいます!」
「それはおかしいな。俺は滞在許可を出していないぞ」
「滞在許可だなんて、マリーズ様はご実家なのですよ?」
「関係ないな。今の当主は俺で、叔母上は子爵夫人だ。
当主である俺の許可なく、この屋敷に滞在していいわけがない」
「ですが……」
「まさか、俺の代わりにお前が許可を出したというのか?」
「いえ!それはありません!」
さすがにそれはないか。
だが、叔母上がここに来た時に追い返さなかったのなら同じこと。
家令から俺に許可を求める手紙は来なかった。
屋敷に帰ってきてほしいという手紙なら月に一度は届くのに。
そのせいで、叔母上とシルヴィがこの屋敷に入り込んでいると、
気がついたのは二か月前のことだ。
叔母上がこの屋敷に来たのはもう半年も前のことだというのに。
「ここは来月には王家の物になる。
使用人はそのまま王家が雇ってくれるそうだ。
叔母上にとっても実家ではなくなる」
「……それでは、マリーズ様とシルヴィ様は、
ジルベール様の屋敷にお連れするのですか?」
「なぜ、そんなことを?」
「シルヴィ様と婚約するのでは?
マリーズ様はシルヴィ様と一緒に輿入れされるおつもりです」
あぁ、それもあってシルヴィと俺を結婚させたかったのか。
娘と一緒に侯爵家に戻るつもりで。
「俺はシルヴィと婚約するつもりはないし、
婚約するなんて約束もしていない」
「え?そ、それでは、マリーズ様は」
「子爵家に帰ればいいだろう。二人とも」
「子爵家に戻すだなんて……。
ジルベール様、マリーズ様がお可哀そうだと思わないのですか?」
「かわいそう?何がだ?」
「王女の娘だというのに子爵家などに嫁がせるなんて。
先代もどうしてそのようなことをなされたのか……」
同情させようとしてそんなことを言うのだろうけど、無意味だ。
「お祖父様が叔母上を子爵家に嫁がせた理由は、
お前もよく知っているだろう」
「え?」
「本当は、王女の娘ではないからだ」
「っ!!」
「王女の娘ではないから後々のことを考えて子爵家に嫁がせた、
お祖父様の判断は正しかったと思う。
今もこうやって、身分不相応なことをしているのだからな。
侯爵家や伯爵家に嫁がせていたら王家に失礼なことをしていただろう」
父上と叔母上の母親は違う。戸籍では同じだとされているが、
王女から産まれた父上と叔母上は血筋が違う。
叔母上の本当の母親は伯爵令嬢だ。
同じように扱って、後に困ることがないように区別をしたのだ。
「知っていたのですか……」
「当主になったのだから、当然だろう」
とはいえ、俺も当主になるまでは知らなかった。
叔母上が子爵家に嫁いだのは何か問題を起こしたからだと思っていた。
問題を起こしそうな性格の叔母上だったからだが。
「それでも……王女から生まれたとされていることに変わりはありません」
「そうかな」
「……何を?」
「いつまでも本当のことを隠し続けることはできない。
だから、お祖父様は子爵家に嫁がせたのだ。
騙したまま高位貴族へ嫁がせたら問題になってしまうからな」
「それは……そうですが」
もし叔母上を王女の娘だと偽って侯爵家や伯爵家に嫁がせたとしたら、
真実を知った後、嫁ぎ先の家から詐欺だと訴えらる。
そんな不名誉なことは避けたかったのだろう。
相手が子爵家ならどうにでもできるから。
「お前にできることは、使用人を集めて説明をすることだけだ。
明日から王家の者がここに話し合いにくる。
辞めたい使用人は王家の者に申し出るように」
「あ、お待ちください!ジルベール様!?」
これ以上、カールと話をしていても無駄だ。
追いすがろうとするカールを置いて、執務室のドアを閉めた。
もうこの屋敷は返上することが決定している。
使用人の今後についても王家に任せたのだから、
俺が話を聞く必要なんてない。
すぐに馬車に戻ろうと思ったところで、香水の匂いがした。
会わないまま出ていくつもりだったが、そうはいかないようだ。
玄関に向かう途中で叔母上と従妹のシルヴィが待ち構えていた。
二人とも金髪に青目。それなりに整った顔立ち。
容姿だけは高位貴族に見える。
「ジルベール、おかえりなさい。
ようやく屋敷に戻ってきてくれたのね」
馬車を下りてドアを閉めた。
すかさずドアの向こうから鍵を閉めた音がする。
マリーナだろう。
これでシャルは大丈夫だと安心したが、長い間離れているのは不安だ。
シャルの身体にいつ異常が起きるかわからない。
歩く練習をさせることもなく、抱き上げて連れて歩くのはそのせいだ。
身体のどこかにふれていれば、魔力の異常を感知できる。
屋敷の玄関に近づくと、何人かの使用人が出迎える。
本来なら侯爵家の紋章が入った馬車が敷地内に入った時点で、
当主が屋敷に戻ったことが知らされ、
すべての使用人が玄関前で出迎えなくてはいけないのだが。
ここにいるのはたまたま近くにいた使用人だろうな。
出迎えてほしいわけではないが、
たるんでいるのを見るのはいい気分じゃない。
厳しかったお祖父様なら叱りつけるところだ。
玄関に入ったところで、奥へ走っていく侍女の後ろ姿が見えた。
俺が来たことを知らせに行くのか。
早めに話を終わらせないと面倒なことになりそうだ。
「「「「「「ジルベール様、おかえりなさいませ」」」」」」
「ああ」
頭を下げる使用人たちの間を通り、家令のもとへと向かう。
この屋敷をずっと管理している家令は、
父上が生まれる前からここにいる。
高齢だが、自分から辞める気はないらしい。
以前はまともな家令だったと思うのに、
どこで変わってしまったんだろう。
家令執務室のドアをノックしないで入ると、誰だ!と声がした。
怒鳴るような声は家令のカールだ。
もう白髪になっているが、元は金髪だった。
ぎょろりとした青目が俺を認識すると、とたんに態度が変わる。
「これはこれはジルベール様。おかえりでしたか」
「ああ、お前に話があってきた」
「わたくしにですか?」
「ああ。この屋敷は王家に返上することになった」
「は?」
笑顔が消えたのを見て、にやけそうになるのをこらえる。
「王家から話が来て受け入れた。
他国の要人を接待するための施設に使うそうだ」
「な、何を」
「お前の大好きな、王家からの打診だ。
断れるわけがないのはわかっているだろう」
「ですが!急にそんなことを言われましても」
「何が困るんだ?この屋敷はもう一年も使われていないのに」
父上と母上は俺に爵位を押しつけた後、領地に戻ってしまった。
あちらに別邸を建てて、のんびり暮らしている。
「いえ、マリーズ様とシルヴィ様がいらっしゃいます!」
「それはおかしいな。俺は滞在許可を出していないぞ」
「滞在許可だなんて、マリーズ様はご実家なのですよ?」
「関係ないな。今の当主は俺で、叔母上は子爵夫人だ。
当主である俺の許可なく、この屋敷に滞在していいわけがない」
「ですが……」
「まさか、俺の代わりにお前が許可を出したというのか?」
「いえ!それはありません!」
さすがにそれはないか。
だが、叔母上がここに来た時に追い返さなかったのなら同じこと。
家令から俺に許可を求める手紙は来なかった。
屋敷に帰ってきてほしいという手紙なら月に一度は届くのに。
そのせいで、叔母上とシルヴィがこの屋敷に入り込んでいると、
気がついたのは二か月前のことだ。
叔母上がこの屋敷に来たのはもう半年も前のことだというのに。
「ここは来月には王家の物になる。
使用人はそのまま王家が雇ってくれるそうだ。
叔母上にとっても実家ではなくなる」
「……それでは、マリーズ様とシルヴィ様は、
ジルベール様の屋敷にお連れするのですか?」
「なぜ、そんなことを?」
「シルヴィ様と婚約するのでは?
マリーズ様はシルヴィ様と一緒に輿入れされるおつもりです」
あぁ、それもあってシルヴィと俺を結婚させたかったのか。
娘と一緒に侯爵家に戻るつもりで。
「俺はシルヴィと婚約するつもりはないし、
婚約するなんて約束もしていない」
「え?そ、それでは、マリーズ様は」
「子爵家に帰ればいいだろう。二人とも」
「子爵家に戻すだなんて……。
ジルベール様、マリーズ様がお可哀そうだと思わないのですか?」
「かわいそう?何がだ?」
「王女の娘だというのに子爵家などに嫁がせるなんて。
先代もどうしてそのようなことをなされたのか……」
同情させようとしてそんなことを言うのだろうけど、無意味だ。
「お祖父様が叔母上を子爵家に嫁がせた理由は、
お前もよく知っているだろう」
「え?」
「本当は、王女の娘ではないからだ」
「っ!!」
「王女の娘ではないから後々のことを考えて子爵家に嫁がせた、
お祖父様の判断は正しかったと思う。
今もこうやって、身分不相応なことをしているのだからな。
侯爵家や伯爵家に嫁がせていたら王家に失礼なことをしていただろう」
父上と叔母上の母親は違う。戸籍では同じだとされているが、
王女から産まれた父上と叔母上は血筋が違う。
叔母上の本当の母親は伯爵令嬢だ。
同じように扱って、後に困ることがないように区別をしたのだ。
「知っていたのですか……」
「当主になったのだから、当然だろう」
とはいえ、俺も当主になるまでは知らなかった。
叔母上が子爵家に嫁いだのは何か問題を起こしたからだと思っていた。
問題を起こしそうな性格の叔母上だったからだが。
「それでも……王女から生まれたとされていることに変わりはありません」
「そうかな」
「……何を?」
「いつまでも本当のことを隠し続けることはできない。
だから、お祖父様は子爵家に嫁がせたのだ。
騙したまま高位貴族へ嫁がせたら問題になってしまうからな」
「それは……そうですが」
もし叔母上を王女の娘だと偽って侯爵家や伯爵家に嫁がせたとしたら、
真実を知った後、嫁ぎ先の家から詐欺だと訴えらる。
そんな不名誉なことは避けたかったのだろう。
相手が子爵家ならどうにでもできるから。
「お前にできることは、使用人を集めて説明をすることだけだ。
明日から王家の者がここに話し合いにくる。
辞めたい使用人は王家の者に申し出るように」
「あ、お待ちください!ジルベール様!?」
これ以上、カールと話をしていても無駄だ。
追いすがろうとするカールを置いて、執務室のドアを閉めた。
もうこの屋敷は返上することが決定している。
使用人の今後についても王家に任せたのだから、
俺が話を聞く必要なんてない。
すぐに馬車に戻ろうと思ったところで、香水の匂いがした。
会わないまま出ていくつもりだったが、そうはいかないようだ。
玄関に向かう途中で叔母上と従妹のシルヴィが待ち構えていた。
二人とも金髪に青目。それなりに整った顔立ち。
容姿だけは高位貴族に見える。
「ジルベール、おかえりなさい。
ようやく屋敷に戻ってきてくれたのね」
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