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絡み合う運命
10.噂話(カイン)
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「…わたくしが直接聞いたわけではありませんが、
王都に残っている貴族令嬢たちのお茶会でその話が出たそうです。
今期の聖女様は恋人と一緒にこの世界に転移してきたと。」
「は?」
「その聖女様は恋人がいらっしゃったけれど、それは心でつながっている純愛で、
将来を約束した恋人と共にこの世界に連れてこられ、引き裂かれてしまった。
だけど、聖女様の意思は強く、
聖女としての役割を終えた後は恋人と共に過ごしたいと願われた。」
これはユウリのことだよな。
恋人…って、確かにリツという男は恋人だと聞いていた。
だが、それは形だけの恋人で、リツはイチカと浮気していたと。
…誰が噂を流したんだ。リツの逃亡とつながっているのか?
「聖女様は浄化を終えたら恋人と結婚し、
もう一人の聖女様も友人として一緒に住む予定だと。
どちらも歴代の聖女様のように隊長を結婚相手に選ばれなかった。
そのため、キリル様は婚約していたゲルガ侯爵家リリアナ様と結婚し、
カイン様は婚約者選びの会を開き、相手を探す…と聞いたのです。」
「それは誰が言っていたのかわかるか?」
「リリアナ様ですわ。
キリル様と結婚されるとご自分でおっしゃるので、聖女様の話も信じたのです。
それに、お会いした聖女様はキリル様とほとんどお話しされていませんでした。
ずっと笑顔も無くつまらなそうな表情でしたので、
キリル様と仲がよろしくないのだと感じました。
ですから、異世界から一緒に来られた恋人の方がいるというのも本当なのだと。
カイン様ももう一人の聖女様に困っていらした様子でしたし…。」
ジーナ嬢のことでめんどくさいと思って対応してたことが、
もしかしたらミサトに対して面倒だと思っているように見えたのだろうか。
だとしたら、俺にできるのはここではっきりと伝えることだけだ。
「ジーナ嬢。俺は婚約者選びの会を開く気はない。」
「そんな…。」
「そもそも聖女以外と結婚する気が無かったから婚約者を決めなかったんだ。
隊長を一度降りた時も、婚約者は作らないとはっきり言ってある。」
「ですが…王族として残るのがハイドン様だけでは不安ですわ。
カイン様も王兄として残り、子を残されることが貴族たちの願いです。
母も…カイン様にわたくしが嫁ぐことができたらといつも言っておりました。
乳母としてカイン様のことが心残りだと…。
今は病気で伏している母も、
わたくしが婚約者になったとわかればうれしくて回復するかもしれません。
それほどまでにカイン様のことが…」
「ふざけるな…。」
「え?…カイン様?」
何が心残りだ。ルーナの見舞いに行く気は最初からなかった。
だが、本当のことを告げて帰られたら困ると思って黙っていた。
それも案内人を降りてもらうのなら遠慮はしない。
「ルーナは母上が亡くなった後、真っ先に俺を見捨てて逃げた。
母上が毒殺された後、俺に挨拶も無く乳母をやめて領地に逃げ帰ったんだ。
王宮に、俺のそばに残れば自分も殺されるかもしれないからと。
そんなやつの見舞いになど、行くわけないだろう?
母上の葬儀にすら出なかったんだぞ?」
「そんな!…嘘ですわ。いつも母はカイン様のことを…。」
「謝りの手紙は来たがな。恐ろしくて逃げてしまったと。
ルーナは一人残される俺の心配よりも、自分の命をとった。
その時点で俺からの信頼は失われている。
…案内人として数日一緒にいるくらいは我慢してやろうと思っていた。
もうお前たちは必要ない。これ以上ふざけたことを言う前に帰れ。」
「そ、そんな。申し訳ございません。
母のしたことはわたくしが謝ります!」
興奮したジーナ嬢が俺の腕にすがろうとして、後ろから隊員に羽交い絞めにされる。
もう二度とふれないと言ったにもかかわらず俺にふれようとした。
「俺にさわるなと言っただろう。屋敷まで連れていけ。」
「「「はっ」」」
「カイン様!そんな、離して!!」
ジーナ嬢が隊員たちによって引きずられながら連れて行かれる。
今後はこの拠点に立ち入ることはさせない。
ルーナのことを思い出して、つい感情的になってしまった。
母上を亡くして一番支えてほしかった時に裏切られたことを忘れるわけがない。
ゆっくりと息を吐いて落ち着きを取り戻す。きっと怖い顔になってしまっている。
こんな情けないところをミサトに見せるわけにはいかない。
何度か深呼吸を繰り返し、いつもの自分に戻ったと感じたらテントへと歩き出す。
早くミサトに会いたい。
もう心配しなくていいと抱きしめて、ふわふわで柔らかい髪を撫でたい。
それにしても…リリアナ嬢が噂をひろめているとは。
噂だけならまだしも…何か企んでいなければいいのだが。
キリルに注意をしておかなければならないな。
王都に残っている貴族令嬢たちのお茶会でその話が出たそうです。
今期の聖女様は恋人と一緒にこの世界に転移してきたと。」
「は?」
「その聖女様は恋人がいらっしゃったけれど、それは心でつながっている純愛で、
将来を約束した恋人と共にこの世界に連れてこられ、引き裂かれてしまった。
だけど、聖女様の意思は強く、
聖女としての役割を終えた後は恋人と共に過ごしたいと願われた。」
これはユウリのことだよな。
恋人…って、確かにリツという男は恋人だと聞いていた。
だが、それは形だけの恋人で、リツはイチカと浮気していたと。
…誰が噂を流したんだ。リツの逃亡とつながっているのか?
「聖女様は浄化を終えたら恋人と結婚し、
もう一人の聖女様も友人として一緒に住む予定だと。
どちらも歴代の聖女様のように隊長を結婚相手に選ばれなかった。
そのため、キリル様は婚約していたゲルガ侯爵家リリアナ様と結婚し、
カイン様は婚約者選びの会を開き、相手を探す…と聞いたのです。」
「それは誰が言っていたのかわかるか?」
「リリアナ様ですわ。
キリル様と結婚されるとご自分でおっしゃるので、聖女様の話も信じたのです。
それに、お会いした聖女様はキリル様とほとんどお話しされていませんでした。
ずっと笑顔も無くつまらなそうな表情でしたので、
キリル様と仲がよろしくないのだと感じました。
ですから、異世界から一緒に来られた恋人の方がいるというのも本当なのだと。
カイン様ももう一人の聖女様に困っていらした様子でしたし…。」
ジーナ嬢のことでめんどくさいと思って対応してたことが、
もしかしたらミサトに対して面倒だと思っているように見えたのだろうか。
だとしたら、俺にできるのはここではっきりと伝えることだけだ。
「ジーナ嬢。俺は婚約者選びの会を開く気はない。」
「そんな…。」
「そもそも聖女以外と結婚する気が無かったから婚約者を決めなかったんだ。
隊長を一度降りた時も、婚約者は作らないとはっきり言ってある。」
「ですが…王族として残るのがハイドン様だけでは不安ですわ。
カイン様も王兄として残り、子を残されることが貴族たちの願いです。
母も…カイン様にわたくしが嫁ぐことができたらといつも言っておりました。
乳母としてカイン様のことが心残りだと…。
今は病気で伏している母も、
わたくしが婚約者になったとわかればうれしくて回復するかもしれません。
それほどまでにカイン様のことが…」
「ふざけるな…。」
「え?…カイン様?」
何が心残りだ。ルーナの見舞いに行く気は最初からなかった。
だが、本当のことを告げて帰られたら困ると思って黙っていた。
それも案内人を降りてもらうのなら遠慮はしない。
「ルーナは母上が亡くなった後、真っ先に俺を見捨てて逃げた。
母上が毒殺された後、俺に挨拶も無く乳母をやめて領地に逃げ帰ったんだ。
王宮に、俺のそばに残れば自分も殺されるかもしれないからと。
そんなやつの見舞いになど、行くわけないだろう?
母上の葬儀にすら出なかったんだぞ?」
「そんな!…嘘ですわ。いつも母はカイン様のことを…。」
「謝りの手紙は来たがな。恐ろしくて逃げてしまったと。
ルーナは一人残される俺の心配よりも、自分の命をとった。
その時点で俺からの信頼は失われている。
…案内人として数日一緒にいるくらいは我慢してやろうと思っていた。
もうお前たちは必要ない。これ以上ふざけたことを言う前に帰れ。」
「そ、そんな。申し訳ございません。
母のしたことはわたくしが謝ります!」
興奮したジーナ嬢が俺の腕にすがろうとして、後ろから隊員に羽交い絞めにされる。
もう二度とふれないと言ったにもかかわらず俺にふれようとした。
「俺にさわるなと言っただろう。屋敷まで連れていけ。」
「「「はっ」」」
「カイン様!そんな、離して!!」
ジーナ嬢が隊員たちによって引きずられながら連れて行かれる。
今後はこの拠点に立ち入ることはさせない。
ルーナのことを思い出して、つい感情的になってしまった。
母上を亡くして一番支えてほしかった時に裏切られたことを忘れるわけがない。
ゆっくりと息を吐いて落ち着きを取り戻す。きっと怖い顔になってしまっている。
こんな情けないところをミサトに見せるわけにはいかない。
何度か深呼吸を繰り返し、いつもの自分に戻ったと感じたらテントへと歩き出す。
早くミサトに会いたい。
もう心配しなくていいと抱きしめて、ふわふわで柔らかい髪を撫でたい。
それにしても…リリアナ嬢が噂をひろめているとは。
噂だけならまだしも…何か企んでいなければいいのだが。
キリルに注意をしておかなければならないな。
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