65 / 142
聖女としての働き
4.神剣
しおりを挟む
「おはよう、美里。」
「おはよう!今日から悠里もここなんだね!」
「うん。まだうまく制御できないんだけど、試しにって。
美里は神剣にできた?」
「それがね~うまくいかないんだよね。
神力はわかった気がするんだけど、剣に流れても定着してくれないっていうか。
やっぱり簡単にはいかないみたい。
ちょっと飽き始めてたから、悠里が来てくれてうれしい。
久しぶりにやる気出た。」
「そうなんだ。じゃあ、私もやる気だして頑張ろうかな。」
笑いながら頑張ろうと言っていると、本当にやる気が出てくる。
少し落ち込んでいた気持ちが浮上したのは、美里の力に引き上げられたのかもしれない。
聖女の力が相互に働くというのが、こういう時によくわかる。
美里がいつも作業している場所に一緒に行くと、
少し広い場所にテーブルが置かれていて、上には白い剣が山積みになっていた。
数えきれないほどの剣を見て、美里がうんざりするよね~とつぶやいた。
「え?これ全部に付加するの?」
「……いや、これ一部かな。」
「え?」
「この国でも各領地ごとに送るわけだし、
それだけじゃなく六か国で使うわけだから。
まぁ、作るのは急がないから、量は気にしないで。」
「わかった…見なかったことにする。」
美里とカインさんが剣を一本持って離れていくのを見て、
キリルが剣を持って違う方向へと行く。
手を引かれるままについていくと、
そこは訓練場の端のほうで周りに誰もいなかった。
ここなら静かで集中しやすそうだ。
「ここでいいかな。
剣に神力を付加する手順を説明するよ?
俺とユウリで柄と剣先を掲げるように持つ。
手のひらの上に乗せる感じ。」
「こう?」
キリルが手のひらを上に向けて、その上に剣を乗せているのを見て、
キリルの手のひらのすぐ隣に同じように手を添える。
ひやりとした剣にふれると、キーンと張りつめたような高音が聞こえた気がした。
「剣が反応している。
俺たちの神力に反応しているんだ。いけるかもしれない。
いつものように神力を身体に流して…。
そのまま身体と同じように剣にも流れるようにしてみて。」
「わかった。」
キリルから流れてくる魔力を神力へと変え、剣を中心に8の字に神力を流す。
いつもなら蛇に神力を吸われてしまうタイミングだと感じたその時、
左腕の蛇がしゅるりと動いた。
「え?」
「うわ?」
見たらキリルの腕の蛇も同じように動いている。
左右から交差するように白と青の蛇が剣にまとわりつく。
二重らせんを描いて端まで行き、また戻り、私の腕に蛇が戻った。
「どういうこと?」
「………神剣になっている。」
「え?本当!?」
見たら、真っ白い剣だったはずなのに、青白く光っている。
剣から私たちと同じ神力を感じた。これが付加したということ?
「…成功した。成功したよ!ユウリ、成功しているよ!」
「……ほんとう、に?」
まさかあれほど悩んでいたのに、蛇が神力を付加するとは思わなかった。
できあがった神剣に気が付いたのか、美里とカインさんが近くまで来ていた。
「キリル、できたのか!?」
「あぁ、兄さん、ちょっとこれ持ってて!」
放り投げるように神剣をカインさんに渡すキリルに、私と美里が悲鳴をあげそうになる。
カインさんは特に驚くことなく、剣を受け取ると上に掲げた。
「…これが神剣。」
キリルはそんなカインさんは見もせず、私を抱き上げ、くるくると回り出した。
「ちょ…ちょっと!」
「ユウリ、よかった。
…これでもう、悲しくない。」
その言葉に、キリルが喜んでいたのは神剣ができたからじゃなく、
私がこれでもう役立たずだと落ち込まなくなることだったとわかる。
「キリル…うん。
もう、大丈夫。
ずっと見守ってくれていてありがとう…。」
「そんなのは、いくらでも。」
ゆっくりと私を地面におろし、それでも抱きしめたままのキリルに、
私からも抱き着いて感謝を伝える。
やっと役に立てた。ここにいていいんだ。うれしさがこみあげてくる。
「……ねぇ~もう一回やってみてくれない?」
「おはよう!今日から悠里もここなんだね!」
「うん。まだうまく制御できないんだけど、試しにって。
美里は神剣にできた?」
「それがね~うまくいかないんだよね。
神力はわかった気がするんだけど、剣に流れても定着してくれないっていうか。
やっぱり簡単にはいかないみたい。
ちょっと飽き始めてたから、悠里が来てくれてうれしい。
久しぶりにやる気出た。」
「そうなんだ。じゃあ、私もやる気だして頑張ろうかな。」
笑いながら頑張ろうと言っていると、本当にやる気が出てくる。
少し落ち込んでいた気持ちが浮上したのは、美里の力に引き上げられたのかもしれない。
聖女の力が相互に働くというのが、こういう時によくわかる。
美里がいつも作業している場所に一緒に行くと、
少し広い場所にテーブルが置かれていて、上には白い剣が山積みになっていた。
数えきれないほどの剣を見て、美里がうんざりするよね~とつぶやいた。
「え?これ全部に付加するの?」
「……いや、これ一部かな。」
「え?」
「この国でも各領地ごとに送るわけだし、
それだけじゃなく六か国で使うわけだから。
まぁ、作るのは急がないから、量は気にしないで。」
「わかった…見なかったことにする。」
美里とカインさんが剣を一本持って離れていくのを見て、
キリルが剣を持って違う方向へと行く。
手を引かれるままについていくと、
そこは訓練場の端のほうで周りに誰もいなかった。
ここなら静かで集中しやすそうだ。
「ここでいいかな。
剣に神力を付加する手順を説明するよ?
俺とユウリで柄と剣先を掲げるように持つ。
手のひらの上に乗せる感じ。」
「こう?」
キリルが手のひらを上に向けて、その上に剣を乗せているのを見て、
キリルの手のひらのすぐ隣に同じように手を添える。
ひやりとした剣にふれると、キーンと張りつめたような高音が聞こえた気がした。
「剣が反応している。
俺たちの神力に反応しているんだ。いけるかもしれない。
いつものように神力を身体に流して…。
そのまま身体と同じように剣にも流れるようにしてみて。」
「わかった。」
キリルから流れてくる魔力を神力へと変え、剣を中心に8の字に神力を流す。
いつもなら蛇に神力を吸われてしまうタイミングだと感じたその時、
左腕の蛇がしゅるりと動いた。
「え?」
「うわ?」
見たらキリルの腕の蛇も同じように動いている。
左右から交差するように白と青の蛇が剣にまとわりつく。
二重らせんを描いて端まで行き、また戻り、私の腕に蛇が戻った。
「どういうこと?」
「………神剣になっている。」
「え?本当!?」
見たら、真っ白い剣だったはずなのに、青白く光っている。
剣から私たちと同じ神力を感じた。これが付加したということ?
「…成功した。成功したよ!ユウリ、成功しているよ!」
「……ほんとう、に?」
まさかあれほど悩んでいたのに、蛇が神力を付加するとは思わなかった。
できあがった神剣に気が付いたのか、美里とカインさんが近くまで来ていた。
「キリル、できたのか!?」
「あぁ、兄さん、ちょっとこれ持ってて!」
放り投げるように神剣をカインさんに渡すキリルに、私と美里が悲鳴をあげそうになる。
カインさんは特に驚くことなく、剣を受け取ると上に掲げた。
「…これが神剣。」
キリルはそんなカインさんは見もせず、私を抱き上げ、くるくると回り出した。
「ちょ…ちょっと!」
「ユウリ、よかった。
…これでもう、悲しくない。」
その言葉に、キリルが喜んでいたのは神剣ができたからじゃなく、
私がこれでもう役立たずだと落ち込まなくなることだったとわかる。
「キリル…うん。
もう、大丈夫。
ずっと見守ってくれていてありがとう…。」
「そんなのは、いくらでも。」
ゆっくりと私を地面におろし、それでも抱きしめたままのキリルに、
私からも抱き着いて感謝を伝える。
やっと役に立てた。ここにいていいんだ。うれしさがこみあげてくる。
「……ねぇ~もう一回やってみてくれない?」
55
お気に入りに追加
2,682
あなたにおすすめの小説
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる