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聖女の準備
6.同時期転移
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キリルが言い終わるとすぐにドアのノックの音がした。
入室の許可を出すと、背の高い男女が中に入ってくる。
キリルと同じ銀髪に紫目のまるで宝塚のようなきりっとした美人と、
金髪に緑目で華やかな感じの整った顔立ちの男性。
あまり似ていないけれど、こちらの男性がキリルのお兄さん?
あれ…緑目?
前にキリルがこの世界に緑目はキリルと私だけって言わなかった?
神の使いの印とかなんとか…どうしてキリルのお兄さんも?
「兄さん、ジェシカ、久しぶり。
ユウリ、こっちが妹のジェシカ。
それと、カイン。…兄さんだ。
二人とも、こちらが聖女ユウリだよ。」
「初めまして、ユウリ様。お会いできて光栄です。」
「ユウリ様、キリルの妹のジェシカと申します。
これからご一緒することが多いと思います。
何でもおっしゃってください。」
モデルのようなお二人に、優雅に礼をされて慌ててしまう。
えっと、貴族に対する礼とか知らないんだけど!
「あの!山川悠里です!悠里って呼んでください。
様とか言われても…困るので、その…。」
何を言えばいいのかわからなくて困っていたら、キリルが助けてくれる。
「兄さん、ジェシカ。
ユウリは貴族の生まれじゃないし、堅苦しいのは苦手らしい。
普通に話したほうがユウリはうれしいみたいだよ。」
「そうなのですか?」
本当に?という風にジェシカさんに言われて、こくこくと何度もうなずく。
おそらく妹だというジェシカさんも年上だと思うし、聖女として敬われても困る。
できる限り普通に…何だったら雑に扱ってもらったほうが助かる。
「わかったわ。ユウリ。
…これでいい?」
ウィンクしながら笑って承諾してくれたジェシカさんに、
かっこいいとときめきそうになる。
百合とは言わないまでも、
宝塚をかっこいいと思う人の気持ちがちょっとわかってしまう。
華があるというか、思わず見とれてしまう。
「あはは。わかったよ。ユウリ。
キリルの兄として、これからよろしくね。」
私の様子を見て、本当に普通に接していいとわかってくれたのか、
カインさんも笑って話してくれた。
あのまま話を続けていたら、ストレスで倒れそうだった。
大学生も一年目だったし、年上の人と話し慣れていない。
というか、人とすら話し慣れていないのに、神々しい二人に敬われるのは重い。
普通に接してくれるようになって心からほっとした。
「じゃあ、とりあえずお茶を淹れる。
それ飲んでから話そうか。」
いつものようにキリルがお茶を淹れに行くのを、
ジェシカさんもカインさんも何も言わずにソファに座った。
この三人でいる時もキリルがお茶を淹れる担当だったんだ。
出されたお茶は、私とキリルの前だけいつもと同じ甘いミルクティーで、
ジェシカさんとカインさんの前にはストレートティーが置かれた。
…そういえば周りは甘いお茶を好まないって、この二人のことだったんだ。
「…美味しい。本当にキリル兄様はお茶を淹れるの上手ですよね。
いつか聖女が来たらおいしいお茶を淹れてあげるんだって…。
ずっと練習していましたものね。」
「え?」
「ジェシカ!」
「あら?内緒にしたほうが良かったですか?ふふっ。」
…私のためにお茶を淹れる練習をしていた?
キリルを見ると顔を背けられてしまったけれど、耳が真っ赤だった。
最初にお茶を淹れてもらった時、本当に美味しくて、不安がやわらぐようだった。
私のために練習してくれてたんだ…。
「…兄さん、大事な用事があったから来たんだろう?
まぁ、その目を見たらわかるけど。」
「ああ。これを見てくれ。」
カインさんが右腕の袖をめくると、緑色の輪っかが見えた。
キリルの左腕にあるよりも線が細く、薄緑色に見えるけど…これは?
神官隊長の印以外にも、こんな風に輪っかができるものなの?
「同時期転移の可能性か…。」
「同時期転移ってなに?カインさんの腕にあるのは何?」
入室の許可を出すと、背の高い男女が中に入ってくる。
キリルと同じ銀髪に紫目のまるで宝塚のようなきりっとした美人と、
金髪に緑目で華やかな感じの整った顔立ちの男性。
あまり似ていないけれど、こちらの男性がキリルのお兄さん?
あれ…緑目?
前にキリルがこの世界に緑目はキリルと私だけって言わなかった?
神の使いの印とかなんとか…どうしてキリルのお兄さんも?
「兄さん、ジェシカ、久しぶり。
ユウリ、こっちが妹のジェシカ。
それと、カイン。…兄さんだ。
二人とも、こちらが聖女ユウリだよ。」
「初めまして、ユウリ様。お会いできて光栄です。」
「ユウリ様、キリルの妹のジェシカと申します。
これからご一緒することが多いと思います。
何でもおっしゃってください。」
モデルのようなお二人に、優雅に礼をされて慌ててしまう。
えっと、貴族に対する礼とか知らないんだけど!
「あの!山川悠里です!悠里って呼んでください。
様とか言われても…困るので、その…。」
何を言えばいいのかわからなくて困っていたら、キリルが助けてくれる。
「兄さん、ジェシカ。
ユウリは貴族の生まれじゃないし、堅苦しいのは苦手らしい。
普通に話したほうがユウリはうれしいみたいだよ。」
「そうなのですか?」
本当に?という風にジェシカさんに言われて、こくこくと何度もうなずく。
おそらく妹だというジェシカさんも年上だと思うし、聖女として敬われても困る。
できる限り普通に…何だったら雑に扱ってもらったほうが助かる。
「わかったわ。ユウリ。
…これでいい?」
ウィンクしながら笑って承諾してくれたジェシカさんに、
かっこいいとときめきそうになる。
百合とは言わないまでも、
宝塚をかっこいいと思う人の気持ちがちょっとわかってしまう。
華があるというか、思わず見とれてしまう。
「あはは。わかったよ。ユウリ。
キリルの兄として、これからよろしくね。」
私の様子を見て、本当に普通に接していいとわかってくれたのか、
カインさんも笑って話してくれた。
あのまま話を続けていたら、ストレスで倒れそうだった。
大学生も一年目だったし、年上の人と話し慣れていない。
というか、人とすら話し慣れていないのに、神々しい二人に敬われるのは重い。
普通に接してくれるようになって心からほっとした。
「じゃあ、とりあえずお茶を淹れる。
それ飲んでから話そうか。」
いつものようにキリルがお茶を淹れに行くのを、
ジェシカさんもカインさんも何も言わずにソファに座った。
この三人でいる時もキリルがお茶を淹れる担当だったんだ。
出されたお茶は、私とキリルの前だけいつもと同じ甘いミルクティーで、
ジェシカさんとカインさんの前にはストレートティーが置かれた。
…そういえば周りは甘いお茶を好まないって、この二人のことだったんだ。
「…美味しい。本当にキリル兄様はお茶を淹れるの上手ですよね。
いつか聖女が来たらおいしいお茶を淹れてあげるんだって…。
ずっと練習していましたものね。」
「え?」
「ジェシカ!」
「あら?内緒にしたほうが良かったですか?ふふっ。」
…私のためにお茶を淹れる練習をしていた?
キリルを見ると顔を背けられてしまったけれど、耳が真っ赤だった。
最初にお茶を淹れてもらった時、本当に美味しくて、不安がやわらぐようだった。
私のために練習してくれてたんだ…。
「…兄さん、大事な用事があったから来たんだろう?
まぁ、その目を見たらわかるけど。」
「ああ。これを見てくれ。」
カインさんが右腕の袖をめくると、緑色の輪っかが見えた。
キリルの左腕にあるよりも線が細く、薄緑色に見えるけど…これは?
神官隊長の印以外にも、こんな風に輪っかができるものなの?
「同時期転移の可能性か…。」
「同時期転移ってなに?カインさんの腕にあるのは何?」
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