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3.新しい自分へ

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「それにしても律と一花が浮気ね…信じられないな。」

「だよね…。でも、本当なんだよね。
 そうしたいなら、言ってくれたら祝福したのに。」

「…ずいぶんとあっさり。その辺はあいかわらずだね。
 悠里が律とつきあうとは思ってなかったんだけど、
 どうして律とつきあうことになったの?」

「…律にものすごい真剣に告白されて、
 一花も付き合ったほうがいいって言うから…。
 なんか、押し切られちゃって…。」

「あぁ、すごく理解した。」

卒業式の夜に、つきあってほしいと告白してきた律の隣には一花がいた。
律とつきあうことになれば、今まで通り三人でいるのは難しいだろうと思い、
友人でいようと断ろうとした。
それをつきあったとしても今まで通りでいればいいじゃないと言って、
二人はつきあったほうがいいと一花に説得されたのだ。

実際、付き合った次の日からも三人一緒の生活は変わらず、
朝の登校から帰りまで、ずっと三人一緒だった。
さすがに大学の授業選択までは一緒にならなかったが、
これも本当は一緒にしたいと言われていた。
それをかたくなに断り、選択授業を提出するまで教えなかったことで、
ようやく一人で行動する時間ができたくらいだった。

「律のこと好きだけど、幼馴染としての好きだったし、
 いつまでも三人一緒にいるわけにもいかないでしょ。

 だからいつかは律とも一花とも離れるんだと思ってた。
 告白されて…断り切れなくてこうなっていたけれど、
 関係は何一つ変わっていなかったんだし…。
 だから一花とつきあうなら、そう言ってくれたらよかったのに。」

「怒ってないの?」

「ええ~?もちろん怒ってるよ?
 一応は私の彼氏なのに一花とそういう関係になった律にも、
 親友だって言いながら私の彼氏と裏でそういうことしている一花にも。
 正直言って…気持ち悪い。トラウマになりそう…。」

「あぁ、キスもしたことないのに、初めて見るそういう場面が、
 自分の彼氏と親友の浮気だとはね…そりゃトラウマになるわ。」

あらためて言われるとダメージが…。
もう二度と誰かとつきあったりできないかもしれない。
もしそうなったとしても、あの場面が目に浮かびそうで…気持ち悪くなりそう。

「やっぱり美里と一緒に女子大に行くべきだったな…。」

「事情は知っているけど、もう少し頑張ればよかったね。
 先生に頼んで内緒で願書出すとかさ。」

「はぁ…ホントだよ。」

律と一花がずっと隣にいる生活に違和感を感じ始めたのはいつだったか。
あまりにも二人がそれを当然としていることに疑問を感じたのはいつからか。

三人でいることに、三人以外がいないことに、何度も離れようとした。
その度に律に怒られ、一花に泣かれ、うやむやになってしまう。
大学を選ぶときも、もういい加減離れようと隣の県の女子大を受けようと思った。
美里が受ける女子大の国文科が面白そうだと思ったのもあるが、
県外で一人暮らしをすると聞いてうらやましかったからだ。

女子大なら律は一緒に受けられない。
県外で一人暮らしをするなら、三人お隣さんというあの環境から離れられる。
こっそり願書を取り寄せ、二人には内緒で受けようとしていた。
それを…お母さんが一花に話してしまい、律に願書を捨てられてしまった。
…怒る律と泣く一花を相手にしながら受験勉強することに疲れ、
結局は家から通える大学に三人一緒に進学することになった。

あの時あきらめないで頑張っていたら…。
少なくともこんなことにはならなかったのに。

「でも、これでようやく悠里は独り立ちできるんじゃない?」

「…そうね。これでようやく一人でいられる。
 さすがにこの後も平気で顔合わせたりはできないよ。
 …他大学への編入試験でも探してみようかな。
 まだ半年だから、やめて他の大学を受けなおしてもいいんだけど…。」

「まぁ、ゆっくり考えたら?
 焦って考えるとろくなことにはならないよ。
 とりあえず、この土日はうちでゆっくりしていようよ。」

「うん、ありがとう。」






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