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7章 新たな未来へ
19.そして二年後
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「まだいたのか。準備はもう終わったのか?」
「俺はもう何もすることは無いよ。
ミーシャはいろいろと準備することがあるらしいけど、
俺がすることはもう何も無さそう。」
「ふうん。まぁ、結婚式なんてそんなもんか。
女性はいろいろとありそうだしな…。」
あと少しだけ仕事をしてから帰ろうと王宮の王太子室に残っていたら、
今から仕事をするらしいレイモンドに会った。
俺が目を通しておいた書類をレイモンドが読んで決裁の印を押す。
手伝える分はするが、決裁は王太子であるレイモンドがしなければいけない。
今レイモンドの机の上に置いてある書類の山は、もう俺が目を通したものだ。
ここのところ忙しかったレイモンドだが、
こうして王太子室に仕事をしに来たのをみるとうまくいったのだろう。
「仕事する時間ができたってことはうまくいったんだな?」
「ああ。リオルのおかげだよ。ありがとう。
最後まで公爵にはいろいろと文句言われて…なかなか許可が下りなかったけど。」
「まぁ、可愛がっている孫娘らしいから…仕方ないよ。
でもうまくいって良かったな。
結婚式には婚約者として連れてくるつもりなんだろう?」
「うん、そのつもりで急がせたんだ。
婚約者にしてからじゃないと、
さすがに王族の結婚式に参列させるわけにもいかないからね。
間に合って良かったよ。」
レイモンドの想い人はニジェール公爵家の末娘リリアナ嬢だった。
5年ほど前にニジェール公爵家でお茶会が開かれた際に、
公爵邸にある迷宮庭で迷子になっていたレイモンドを助けてくれたらしい。
当時のレイモンドは10歳。リリアナ嬢は7歳だった。
その時に「頼りないお兄ちゃん。しょうがないからリリアナがお嫁に行ってあげる。」
と言われたことがきっかけで惚れたらしい…。
7歳の令嬢の言葉をそのまま受け取ったレイモンドに何か言ってやりたい気もしたが、
俺とミーシャが出会ったのも幼い頃だったと思い応援することにしたのだが…
ニジェール公爵としては末孫ではなく、その姉のジュリア嬢をと思っていたようだ。
リリアナ嬢がまだ12歳ということもあって婚約話は進まずにいたのだが、
俺とミーシャとの結婚式に参列したかったリリアナ嬢のおねだりが公爵に届いたらしい。
俺とミーシャの結婚式は身内以外は呼ばないことにしている。
異母兄であるレイモンドはもちろん身内だから呼べるが、
ニジェール公爵家は何のつながりもない。
参列するにはレイモンドの婚約者として正式に認められていなければならなかった。
と言っても、俺とミーシャが特別に許可を出せば良いだけの話なのだが、
これをきっかけに婚約できればいいとわざとそうしなかったのだ。
公爵の許可がおりたあと、議会の承認も必要だったため、
ここ半月くらいのレイモンドは忙しそうだった。
せめて王太子の承認を必要としない書類くらいはなんとかしておこうと、
時間がある時にはここに来て仕事を手伝っていた。
「結婚しても学生を続けるのか?」
「そのつもり。飛び級するのは簡単だけど、ミーシャやレイモンドがいるしね。
俺はあと一年で卒業だけど、それまでは学生でいるよ。」
「そうか。
リオル…卒業したら、正式に俺の側近になってくれないか?」
「いいよ。そのつもりだったから。
…なんだよ。意外そうな顔するなよ。
今だってお前の仕事を手伝ってるじゃないか。」
自分で言い出したくせに驚いた顔で止まっているレイモンドを軽く小突く。
「あ、ああ。ごめん。
断られるかもってちょっと思ってたから。
そんなにあっさり頷かれると思ってなくて。
でも良かった…リオルがいてくれると心強いよ…。」
「俺にはそのくらいしかできないからな。
レイモンドが国王としてやっていけるように、少しくらいは力になるよ。」
「ありがとう…頑張るよ。」
「俺はもう何もすることは無いよ。
ミーシャはいろいろと準備することがあるらしいけど、
俺がすることはもう何も無さそう。」
「ふうん。まぁ、結婚式なんてそんなもんか。
女性はいろいろとありそうだしな…。」
あと少しだけ仕事をしてから帰ろうと王宮の王太子室に残っていたら、
今から仕事をするらしいレイモンドに会った。
俺が目を通しておいた書類をレイモンドが読んで決裁の印を押す。
手伝える分はするが、決裁は王太子であるレイモンドがしなければいけない。
今レイモンドの机の上に置いてある書類の山は、もう俺が目を通したものだ。
ここのところ忙しかったレイモンドだが、
こうして王太子室に仕事をしに来たのをみるとうまくいったのだろう。
「仕事する時間ができたってことはうまくいったんだな?」
「ああ。リオルのおかげだよ。ありがとう。
最後まで公爵にはいろいろと文句言われて…なかなか許可が下りなかったけど。」
「まぁ、可愛がっている孫娘らしいから…仕方ないよ。
でもうまくいって良かったな。
結婚式には婚約者として連れてくるつもりなんだろう?」
「うん、そのつもりで急がせたんだ。
婚約者にしてからじゃないと、
さすがに王族の結婚式に参列させるわけにもいかないからね。
間に合って良かったよ。」
レイモンドの想い人はニジェール公爵家の末娘リリアナ嬢だった。
5年ほど前にニジェール公爵家でお茶会が開かれた際に、
公爵邸にある迷宮庭で迷子になっていたレイモンドを助けてくれたらしい。
当時のレイモンドは10歳。リリアナ嬢は7歳だった。
その時に「頼りないお兄ちゃん。しょうがないからリリアナがお嫁に行ってあげる。」
と言われたことがきっかけで惚れたらしい…。
7歳の令嬢の言葉をそのまま受け取ったレイモンドに何か言ってやりたい気もしたが、
俺とミーシャが出会ったのも幼い頃だったと思い応援することにしたのだが…
ニジェール公爵としては末孫ではなく、その姉のジュリア嬢をと思っていたようだ。
リリアナ嬢がまだ12歳ということもあって婚約話は進まずにいたのだが、
俺とミーシャとの結婚式に参列したかったリリアナ嬢のおねだりが公爵に届いたらしい。
俺とミーシャの結婚式は身内以外は呼ばないことにしている。
異母兄であるレイモンドはもちろん身内だから呼べるが、
ニジェール公爵家は何のつながりもない。
参列するにはレイモンドの婚約者として正式に認められていなければならなかった。
と言っても、俺とミーシャが特別に許可を出せば良いだけの話なのだが、
これをきっかけに婚約できればいいとわざとそうしなかったのだ。
公爵の許可がおりたあと、議会の承認も必要だったため、
ここ半月くらいのレイモンドは忙しそうだった。
せめて王太子の承認を必要としない書類くらいはなんとかしておこうと、
時間がある時にはここに来て仕事を手伝っていた。
「結婚しても学生を続けるのか?」
「そのつもり。飛び級するのは簡単だけど、ミーシャやレイモンドがいるしね。
俺はあと一年で卒業だけど、それまでは学生でいるよ。」
「そうか。
リオル…卒業したら、正式に俺の側近になってくれないか?」
「いいよ。そのつもりだったから。
…なんだよ。意外そうな顔するなよ。
今だってお前の仕事を手伝ってるじゃないか。」
自分で言い出したくせに驚いた顔で止まっているレイモンドを軽く小突く。
「あ、ああ。ごめん。
断られるかもってちょっと思ってたから。
そんなにあっさり頷かれると思ってなくて。
でも良かった…リオルがいてくれると心強いよ…。」
「俺にはそのくらいしかできないからな。
レイモンドが国王としてやっていけるように、少しくらいは力になるよ。」
「ありがとう…頑張るよ。」
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