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3章 将軍っていらないよね

5.会いたくない人

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丁寧に地図に書き込みをして渡してくれた軍人はショーンという名だった。
長く軍人をしているようで、将軍は昔はああじゃなかったんですと呟いた。

「ああじゃなかった、とは?」

「奥様がいた頃は仕事熱心だったのですが、遠征中に亡くなりまして。
 息子さんに責められたそうです。将軍のせいで短命だったと。
 そのせいか、息子さんの子どもたち、孫娘ですね。
 その二人の我儘は何でも聞いてしまうんです。
 …それでも、こんなにひどいことはなかったんですが、
 1月前から人が変わってしまったようです。」

1月前、俺たちが王宮から出てすぐということだな。
ロードンナ国の公爵と手を組んだこともそうだが、
孫娘2人を側妃に、か。
何を考えてそうなったのかはわからないが…間違いなく処刑されるだろうな。

「間違った方向に行きかけた時に誰かが止められたら、なんて思うなよ?
 誰でも間違うことはあるかもしれないが、間違ってはいけないこともある。
 王都の治安が悪化しているのなら、そのせいで被害を受けたものも多い。
 このまま放置していれば内乱がおきただろう。」

「そうでしたか…私の知っている将軍は、もういないんですね。
 王都は治安の悪さで人は減っていますが、破落戸は増えています。
 お気をつけて…。」

「あぁ、ありがとう。行って来るよ。」

快く許可してくれたショーンに変化して王都に転移する。
1月前とは全く違う雰囲気に、足を止める。
街にいるのは店の関係者か、数人の護衛を連れている貴族だけだった。
大通りから少しはずれた場所には破落戸が酒飲みをしている。
まだ昼間だというのに、場末のような状態になっていた。
そんな状態だからか、昼間だというのに薄暗い雰囲気を感じさせている。

「こんな状態で、よく令嬢が外出する気になったな…。」

よく行く場所を見ると、お菓子の店、紅茶の店、宝石店…。
令嬢本人が行かなくても良さそうなものだが…。
一番最初に書いてあった、チーズタルトの店に行って見る。
ここは2か月前にできた店で、店内でお茶をするのが流行っていると。
中に入ると店員が声をかけてきて、中に案内される。
男一人で入店して怪しまれるかと思ったが、
この状況下ではお客が少なくて困っているのだろう。
若い男の店員が笑顔で席に案内してくれた。
店員が男っていうのも、この状況下で営業を続けていられる要因だろうか。
少ない客はほとんどが令嬢で護衛付きだった。
護衛付きでもこの店に来たいと思わせる何かがあるのかもしれない。

とりあえず座って紅茶を頼む。
おすすめのチーズパイを一切れ注文すると、店員は頷いて去っていく。
運んできてくれた時にでも令嬢の話を聞いてみようと思っていると、
騒がしい団体が店の中に入ってきた。


…嫌な令嬢が来たな。
リリーの妹のアンジェリーナだった。
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