王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi

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2章 旅の始まり

6.獣の調査

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「おかしい?」

「ああ、3日前に侯爵領に着いて調べているんだが、
 そもそもこの事件はロードンナ国の領地でも起きていた。
 だからと言って、僕が出てくるような事件じゃない。
 それなのに、僕が行くことになっていた。どうやら議会の力が動いている。

 事件は、レイジャール侯爵領と隣り合っているレガンナ伯爵領で、
 大きな獣が現れて街の人を襲い始めたという報告だった。
 それでレガンナ伯爵領で調査しようと思ったら、
 僕たちが着いた途端、獣はレイジャール侯爵領にだけ現れるようになった。
 これでは、僕らがレガンナ伯爵領の獣を、
 レイジャール侯爵領に追い出したように見えてしまう。
 まずいと思って、こちら側に調査に来たんだ。
 もちろん、こちら側に来るときに王宮には連絡をしてあるよ。」

「そうだったのか。ジョエルも大きな獣を調査しに来ていたのか。
 この3日間で、何かわかったことはあったか?」

「まず、人の住んでいない地域には出ない。」

「普通、逆だろう?」

「ああ、そして怪我はさせるが、死人は出ていない。
 それに、ある程度暴れると、消えてしまうらしい。」

「消える?」

「かなり大きな獣だという話だが、何の獣かわからないんだ。
 それに、消えてしまうから、目撃談だけだと、まったくわからない。」

「…人が関わっている?」

「おそらくは魔術師、もしくは魔女だね。」

「消える獣か…だが、麦が荒らされているってことは、実体はあるんだろう?」

「そうなんだよね。調査すればするほどわけがわからない。
 どこに出るかわからないから、待ち伏せするのも難しいし、罠もはれない。」

「どうしようか…。」

バンッと大きな音がして、男性が飛び込んできた。

「ジョエル様!やっと見つけました!」



お付きの者だろうか、ジョエルに向かって説教を始めたのを見て、
こっそりリリーに聞く。

「なんであいつは入ってこれているんだ?」

「…魔術師なんじゃないの?
 ほら、お茶屋にするつもりだったから、魔術師なら誰でも入ってこれるの。」

「それ、まずくないか?」

「そうね…あの人帰ったら、設定変えておくわ。
 なんだか、関わっちゃいけないような気がするの。」

「俺もだ。多分、さっき言ってたしつこい奴って、あれだろう。」

こそこそ話をしていたのが聞こえたのか、男性がこちらに気が付いた。
同時に目を輝かせて、近づいてくる。

「あなたは!もしかしてリリーアンヌ様では!?
 そういうことでしたか。ジョエル様との逢瀬だったのですね!」

「は?」

「いやいや、やはり素晴らしい。
 このマジックハウスもリリーアンヌ様が所有されているのですな。
 やはりロードンナ国の正妃にはリリーアンヌ様がなるべきです。」




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