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34.ロードンナ国

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「わ。ちょっとリリー怒らないで…。
 わかったよ、話すけど、気分のいい話じゃないから黙ってたかったんだよ。」

「私の話なの?」

「リリーの話でもある。
 あの夜、出かけてたって言っただろう?
 ジョエルと会ってたんだ。
 向こうから非公式の話がしたいと呼び出されて。」

「ジョエルが?来ていたの?
 それがどうして言えない話?」

レオが大きくため息をついた。そんなに嫌な話なのかな。
思わず、姿勢を直して、気持ちを引き締める。

「あの魅了の話、うちの国ではなかったことになってるだろう?
 だけど、ロードンナ国ではきちんと記録されているんだ。
 ジョエルが報告していたらしい。
 うちの国の話ではあるが、魅了については他の国への影響も大きい。
 王太子のジョエルが報告しないわけにはいかない、それは仕方ない。
 ただ、魅了を封じたのがリリーだってことも知られてしまっているんだ。」

「でもその話は4年も前の話よね。どうして今になって関係するの?」

「4年過ぎたからだよ。
 ロードンナ国の議会は、
 ずっとリリーをロードンナ国の王太子妃として狙っていた。
 だから、4年も子どもが生まれないことで離縁されるのを期待したんだ。
 俺は王弟だろう?妻は一人しか娶れない。
 子どもが生まれなければ離縁するだろうと議会がそう判断したらしい。
 ロードンナ国では、身分も大事だが、それ以上に魔術師は大事にされる。
 侯爵家令嬢で魔術師、その上魅了を封じる力まで持っている。
 おまけにここ2年は王妃の仕事まで立派にこなしていた。
 ジョエルの正妃として迎えてはどうかと、議会が決めたらしい。」

子どもが生まれないから、離縁…。
そうよね、普通なら4年も生まれなかったら、できないと思われても仕方ない。
妻を一人しか娶れない王弟なら、離縁させられるわよね。
どうして気が付かなかったんだろう…。

「リリー?リリー!落ち着いて、大丈夫だから。
 もし一生子供が出来なくても、俺にはリリーだけだから!」

考え込んで自分の世界に入り込んでしまった私を、
焦ったレオが必死で戻そうとする。
頬を両手で包みこまれて、真剣な目で見つめられる。
ゆっくり息を整えて、レオの言葉をかみしめた。

「うん、わかった。もう大丈夫だから、話して?」


「ああ、それでジョエルだって、そんなことを本気で思ってるわけじゃない。
 だけど王太子としては議会の決定を無視するわけにはいかない。
 だから俺にこっそり会いに来たんだ。議会からの手紙を持って。
 俺たちに離縁する意思が無いってわかれば、
 同盟国だしそれ以上のことは考えないだろうからと、
 俺に議会への返事を書くように頼まれたんだよ。

 でも、こんな話したら、リリーだって嫌だろう?
 俺はすごく嫌だった。
 ジョエルにその気がないってわかってたけど、それでも嫌だった。
 リリーが誰かの横にたつなんて、想像するだけでも嫌なんだ。
 リリーがそれを想像するだろうと思って、話をするのも嫌だった。
 こんな我がままで内緒にして動いたせいで、こんなことになったんだ。
 本当にごめん。」
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