3 / 167
3.朝ごはん
しおりを挟む
「おはようございます!朝ご飯は何ですか?」
身支度を整えたシーナが階段を降りてくる。
一階のフロアをお茶屋にするために、
調理場を真ん中に設置し、周りにテーブルセットを置いた。
そのため三人のご飯も自然とここで食べるようになっていた。
「今日の朝ご飯は、スコーンにクリームとベリージャム。
ほうれん草とジャガイモの入ったキッシュと南瓜のポタージュスープ。」
焼きたてのスコーンの香ばしい匂いに、思わずお腹が鳴りそうになる。
久しぶりに焼いたから、ちょっと心配してたけどいい匂い。
ちょうどスープも完成したし、後は盛り付けるだけ。
「わぁ。スコーンいい匂い!キッシュも大好きです!」
「俺も今食べる~。」
シオンが一階の奥から出てきた。シーナとの会話が聞こえて起きたらしい。
一目見て、寝起きだとわかる顔をしている。
意外と食い意地がはってるのか、ご飯の話をするとすぐに起きてくる。
「顔くらい洗ってくればいいのに。」
「いや、少しでも冷めるの嫌だから。そういうのは食べてからにする。
姫さんの料理、ホントうまい。」
「そう?ありがとう。
久しぶりで、ようやくカンが戻ってきた気がする。」
「王宮では料理できませんでしたからね~。
このポタージュも、とろっとろで最高です!」
侯爵家にいた頃も人前で料理することはできなかった。
魔術の練習だと言って森に来てはマジックハウスで料理し、
二人に味見をしてもらっていた。
学園時代は寮でこっそり朝食と夕食を自分で作っていた。
その時も二人が両親にばれないように誤魔化してくれていた。
侯爵家の令嬢が料理するのはよろしくない。
両親が認めないのも仕方ないことだと思っている。
だけど、私はこういう人間なのだから。
一度も分かり合えなかったな…とあきらめるしかなかった。
シーナとシオンは双子だ。茶色の髪に黒目。
双子だけど、全く似ていない。
小柄で守りたくなるシーナ。大きくて頼りがいのあるシオン。
似ているのは、ずっと変わらず私についてきてくれていることだけ。
こんな私で良いのか聞いたこともあるけど、本気で怒られた。
だから、もう聞かない。
私がどこに行っても、この二人はついてきてくれる。
この家に来て、三日が過ぎていた。
食材を買いに行ったり、開店準備をしたりで、それなりに忙しい。
それでも、まだ気持ちは痛いままだ。
ふと笑った後に、美味しいと思った後に、つらくなる。
どうしてこうなったんだろうと自分を責めたくなる。
何よりも、隣にレオがいないことを認めたくなかった。
こんなにも必要だと身体が軋むように求めている。
もう逃げてしまったのに。どうしようもないのに。
食後にハーブ茶を出しながら、二人に相談する。
「お店のメニューだけど、
あまり人が来ると思えないから、少なくていいと思うの。
飲み物は紅茶、ハーブ茶、キノコ茶。
食べ物はクッキーとサンドイッチとスコーンと具だくさんのトマトスープ。
こんな感じでいいかなぁ。」
「いいと思います。具だくさんのトマトスープも大好きです!」
「シーナの好物は聞いてない。…時間魔法かけるんだろ?
そのメニューでいいんじゃないか。」
「人がいつ来てくれるかわからないからね~。
時間魔法かけて、いつ来てもいいようにする予定よ。」
「いつからお店開けますか?」
「大した準備も必要ないし、スープは今日中に作るから、
明日から開けようかな。開店して何日で一人目のお客様くるかな~。」
シーナは掃除担当、シオンは買い出し担当に決まり、
次の日の開店に向けて準備を始めた。
魔女レベッカには招待状を出しておこう。
魔女仲間に紹介してくれたらいいな。
身支度を整えたシーナが階段を降りてくる。
一階のフロアをお茶屋にするために、
調理場を真ん中に設置し、周りにテーブルセットを置いた。
そのため三人のご飯も自然とここで食べるようになっていた。
「今日の朝ご飯は、スコーンにクリームとベリージャム。
ほうれん草とジャガイモの入ったキッシュと南瓜のポタージュスープ。」
焼きたてのスコーンの香ばしい匂いに、思わずお腹が鳴りそうになる。
久しぶりに焼いたから、ちょっと心配してたけどいい匂い。
ちょうどスープも完成したし、後は盛り付けるだけ。
「わぁ。スコーンいい匂い!キッシュも大好きです!」
「俺も今食べる~。」
シオンが一階の奥から出てきた。シーナとの会話が聞こえて起きたらしい。
一目見て、寝起きだとわかる顔をしている。
意外と食い意地がはってるのか、ご飯の話をするとすぐに起きてくる。
「顔くらい洗ってくればいいのに。」
「いや、少しでも冷めるの嫌だから。そういうのは食べてからにする。
姫さんの料理、ホントうまい。」
「そう?ありがとう。
久しぶりで、ようやくカンが戻ってきた気がする。」
「王宮では料理できませんでしたからね~。
このポタージュも、とろっとろで最高です!」
侯爵家にいた頃も人前で料理することはできなかった。
魔術の練習だと言って森に来てはマジックハウスで料理し、
二人に味見をしてもらっていた。
学園時代は寮でこっそり朝食と夕食を自分で作っていた。
その時も二人が両親にばれないように誤魔化してくれていた。
侯爵家の令嬢が料理するのはよろしくない。
両親が認めないのも仕方ないことだと思っている。
だけど、私はこういう人間なのだから。
一度も分かり合えなかったな…とあきらめるしかなかった。
シーナとシオンは双子だ。茶色の髪に黒目。
双子だけど、全く似ていない。
小柄で守りたくなるシーナ。大きくて頼りがいのあるシオン。
似ているのは、ずっと変わらず私についてきてくれていることだけ。
こんな私で良いのか聞いたこともあるけど、本気で怒られた。
だから、もう聞かない。
私がどこに行っても、この二人はついてきてくれる。
この家に来て、三日が過ぎていた。
食材を買いに行ったり、開店準備をしたりで、それなりに忙しい。
それでも、まだ気持ちは痛いままだ。
ふと笑った後に、美味しいと思った後に、つらくなる。
どうしてこうなったんだろうと自分を責めたくなる。
何よりも、隣にレオがいないことを認めたくなかった。
こんなにも必要だと身体が軋むように求めている。
もう逃げてしまったのに。どうしようもないのに。
食後にハーブ茶を出しながら、二人に相談する。
「お店のメニューだけど、
あまり人が来ると思えないから、少なくていいと思うの。
飲み物は紅茶、ハーブ茶、キノコ茶。
食べ物はクッキーとサンドイッチとスコーンと具だくさんのトマトスープ。
こんな感じでいいかなぁ。」
「いいと思います。具だくさんのトマトスープも大好きです!」
「シーナの好物は聞いてない。…時間魔法かけるんだろ?
そのメニューでいいんじゃないか。」
「人がいつ来てくれるかわからないからね~。
時間魔法かけて、いつ来てもいいようにする予定よ。」
「いつからお店開けますか?」
「大した準備も必要ないし、スープは今日中に作るから、
明日から開けようかな。開店して何日で一人目のお客様くるかな~。」
シーナは掃除担当、シオンは買い出し担当に決まり、
次の日の開店に向けて準備を始めた。
魔女レベッカには招待状を出しておこう。
魔女仲間に紹介してくれたらいいな。
126
お気に入りに追加
5,611
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる