13 / 29
13.婚約破棄作戦、決行の日
しおりを挟む
ベッティル様とイザベラの後ろにいるのが異母妹のブランカだということがわかり、
こちらも手を打つ必要が出てきた。
少なくとも向こうが何をするのかわかっていたほうがいいと、
アロルドは三人の行動を監視し魔石で記録するようになっていた。
ベッティル様たちは婚約破棄に向けて私の評判を落としていき、
最終的に卒業式典で私を追い詰める作戦のようだ。
新年を迎える長期休みが終わった直後、
学園内でイザベラが階段から突き落とされたと騒いでいた。
その一か月後には公爵家の本宅の男性使用人が三人ほど、
敷地内に入れなくなったと報告があった。
あと少しで卒業式典を迎える時期になって、
ようやくアロルドの腕輪の石は藍色から黒に変わっていた。
もう数日あれば完全に黒になるだろう。
この石が黒になったら、アロルドの呪いが解ける。
……この生活も終わりになってしまうのかしら。
アロルドと一緒の生活はもう二か月にもなっていた。
姿を取り戻したとしても、
それまでと同じように離れて過ごせるとは思えなかった。
ベッティル様と婚約解消することができたら、
その時はもう一度アロルドと一緒にいられるかもしれない。
それだけを希望にこの生活が終わることを覚悟する。
「ねぇ、アロルド。もう少しで石が黒に変わるわ。
卒業式典が終わったら、精霊王に会いに行きましょうか」
「あぁ、そうだな。あいつらは卒業式典で決行するつもりらしいし、
それが終わったら呪いを解いてもらうか……」
ベッティル様と婚約を解消することに文句はない。
むしろこちらからお願いしたいくらいだ。
だけど、きっとその時にはイザベラとブランカはただでは済まない。
王子をそそのかして、公爵家の当主を陥れようとしているのだから。
それでも、このまま公爵家を好き勝手にさせるわけにはいかない。
異母妹を見捨てることになっても、仕方ないと思った。
そうして迎えた卒業式典の日。
これは学園の三年生の卒業を祝う式典で、私たち在校生も出席する。
夕方から卒業パーティーが行われるため、式典自体は短時間で終わる。
卒業生全員の名を呼ばれ、学園長と陛下が挨拶をするだけ。
在校生は出席するだけで、前に出ることも挨拶することもない。
それなのに式典が始まってすぐ、壇上にあがったのはベッティル様だった。
「みんな!この場を借りて、大事な話をしたい」
「……あいつ、馬鹿なのか?」
姿が見えないまま隣にいたアロルドが思わずと言った感じでつぶやいた。
つぶやきたくなる気持ちはわかる。さすがにこれはない。
式典が終わった後で呼び出されるか、
陛下を交えて別室で話すとかするのだと思っていたのに。
「エルヴィラ。エルヴィラ・アーンフェ。今すぐ前に出てこい」
壇上から大声で呼ばれ、仕方なく前に出て行く。
整列していた学生たちが気の毒そうな顔して左右に避けてくれる。
前に行くとベッティル様と目があった。楽しそうにニヤリと笑う。
……もう自分たちが勝ったと思っているんだろうな。
「エルヴィラ、お前は幼いころに俺の婚約者として選ばれた。
だが、それはこの場で破棄しよう。
お前のような心が醜いものと結婚することはできない!
お前は王子の婚約者であることを鼻にかけて傲慢になっている。
俺の大事な恋人イザベラに嫉妬して嫌がらせを続けて来たな?」
「婚約を解消することには異存ありませんが、
イザベラに嫌がらせをしたことはありません」
「なんだと?解消を認める?殊勝なふりして誤魔化そうとしているのか?
まぁ、そうやって否定しても証拠がある。イザベラ、出てきてくれ」
いつのまにか壇上にあがったイザベラがベッティル様の隣に立つ。
少し高いところから私を見下ろしているが、その目は楽しげだ。
悲しそうな顔をしても本性を隠せていない。
「エルヴィラ様、私がベッティルの隣にいるのが気に入らないのはわかります。
ですが、嫌がらせはひどくなる一方。
にらまれたり、嫌味を言われるだけならともかく、
階段の上から突き落としたり、公爵家の使用人を使って私を攫おうとするなんて!!
そんな人はベッティルの婚約者としてふさわしくありません!」
「私がそんなことをしたことはありません」
言われることはあらかじめわかっていた。
なので、大した動揺もせずに否定する。
顔色一つ変えない私が面白くないのか、ベッティル様が舌打ちする。
壇上の端にいた陛下のもとに宰相が慌てて駆け付けたのが見えた。
陛下と宰相にとっては困った事態だろう。
無理やり婚約させた私にこんな難癖をつけているのだから。
「他にも証言するものはいる。
出てきてくれ、ブランカ」
「はい!」
一学年の場所から、ブランカが前に出てくるのが見える。
前に出てきたと思ったら、私に向かってまくし立てた。
「お姉様!もうこんなことはおやめください!
公爵家の使用人を使って、イザベラ様を攫おうとしたことはわかっています!」
「ブランカ、よく考えたの?
こんな場で嘘を言うと後で大変なことになるのよ?」
「嘘なんかじゃありません!
いつもお姉様はそうやって、私やお父様とお母様をいじめて!
家族を虐げて楽しんでいる性悪なお姉様に、
公爵家を継ぐ資格なんてありません!」
「ほら、妹も証言している。
いいかげん、認めたらどうなんだ?」
こちらも手を打つ必要が出てきた。
少なくとも向こうが何をするのかわかっていたほうがいいと、
アロルドは三人の行動を監視し魔石で記録するようになっていた。
ベッティル様たちは婚約破棄に向けて私の評判を落としていき、
最終的に卒業式典で私を追い詰める作戦のようだ。
新年を迎える長期休みが終わった直後、
学園内でイザベラが階段から突き落とされたと騒いでいた。
その一か月後には公爵家の本宅の男性使用人が三人ほど、
敷地内に入れなくなったと報告があった。
あと少しで卒業式典を迎える時期になって、
ようやくアロルドの腕輪の石は藍色から黒に変わっていた。
もう数日あれば完全に黒になるだろう。
この石が黒になったら、アロルドの呪いが解ける。
……この生活も終わりになってしまうのかしら。
アロルドと一緒の生活はもう二か月にもなっていた。
姿を取り戻したとしても、
それまでと同じように離れて過ごせるとは思えなかった。
ベッティル様と婚約解消することができたら、
その時はもう一度アロルドと一緒にいられるかもしれない。
それだけを希望にこの生活が終わることを覚悟する。
「ねぇ、アロルド。もう少しで石が黒に変わるわ。
卒業式典が終わったら、精霊王に会いに行きましょうか」
「あぁ、そうだな。あいつらは卒業式典で決行するつもりらしいし、
それが終わったら呪いを解いてもらうか……」
ベッティル様と婚約を解消することに文句はない。
むしろこちらからお願いしたいくらいだ。
だけど、きっとその時にはイザベラとブランカはただでは済まない。
王子をそそのかして、公爵家の当主を陥れようとしているのだから。
それでも、このまま公爵家を好き勝手にさせるわけにはいかない。
異母妹を見捨てることになっても、仕方ないと思った。
そうして迎えた卒業式典の日。
これは学園の三年生の卒業を祝う式典で、私たち在校生も出席する。
夕方から卒業パーティーが行われるため、式典自体は短時間で終わる。
卒業生全員の名を呼ばれ、学園長と陛下が挨拶をするだけ。
在校生は出席するだけで、前に出ることも挨拶することもない。
それなのに式典が始まってすぐ、壇上にあがったのはベッティル様だった。
「みんな!この場を借りて、大事な話をしたい」
「……あいつ、馬鹿なのか?」
姿が見えないまま隣にいたアロルドが思わずと言った感じでつぶやいた。
つぶやきたくなる気持ちはわかる。さすがにこれはない。
式典が終わった後で呼び出されるか、
陛下を交えて別室で話すとかするのだと思っていたのに。
「エルヴィラ。エルヴィラ・アーンフェ。今すぐ前に出てこい」
壇上から大声で呼ばれ、仕方なく前に出て行く。
整列していた学生たちが気の毒そうな顔して左右に避けてくれる。
前に行くとベッティル様と目があった。楽しそうにニヤリと笑う。
……もう自分たちが勝ったと思っているんだろうな。
「エルヴィラ、お前は幼いころに俺の婚約者として選ばれた。
だが、それはこの場で破棄しよう。
お前のような心が醜いものと結婚することはできない!
お前は王子の婚約者であることを鼻にかけて傲慢になっている。
俺の大事な恋人イザベラに嫉妬して嫌がらせを続けて来たな?」
「婚約を解消することには異存ありませんが、
イザベラに嫌がらせをしたことはありません」
「なんだと?解消を認める?殊勝なふりして誤魔化そうとしているのか?
まぁ、そうやって否定しても証拠がある。イザベラ、出てきてくれ」
いつのまにか壇上にあがったイザベラがベッティル様の隣に立つ。
少し高いところから私を見下ろしているが、その目は楽しげだ。
悲しそうな顔をしても本性を隠せていない。
「エルヴィラ様、私がベッティルの隣にいるのが気に入らないのはわかります。
ですが、嫌がらせはひどくなる一方。
にらまれたり、嫌味を言われるだけならともかく、
階段の上から突き落としたり、公爵家の使用人を使って私を攫おうとするなんて!!
そんな人はベッティルの婚約者としてふさわしくありません!」
「私がそんなことをしたことはありません」
言われることはあらかじめわかっていた。
なので、大した動揺もせずに否定する。
顔色一つ変えない私が面白くないのか、ベッティル様が舌打ちする。
壇上の端にいた陛下のもとに宰相が慌てて駆け付けたのが見えた。
陛下と宰相にとっては困った事態だろう。
無理やり婚約させた私にこんな難癖をつけているのだから。
「他にも証言するものはいる。
出てきてくれ、ブランカ」
「はい!」
一学年の場所から、ブランカが前に出てくるのが見える。
前に出てきたと思ったら、私に向かってまくし立てた。
「お姉様!もうこんなことはおやめください!
公爵家の使用人を使って、イザベラ様を攫おうとしたことはわかっています!」
「ブランカ、よく考えたの?
こんな場で嘘を言うと後で大変なことになるのよ?」
「嘘なんかじゃありません!
いつもお姉様はそうやって、私やお父様とお母様をいじめて!
家族を虐げて楽しんでいる性悪なお姉様に、
公爵家を継ぐ資格なんてありません!」
「ほら、妹も証言している。
いいかげん、認めたらどうなんだ?」
120
お気に入りに追加
1,795
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる